「マンガ×認知科学」によるリーダーシップ変革の実現 日本生命の組織的な取り組み

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019講演録

「マンガを使ったリーダーシップ研修」と聞くと懸念する人も多いかもしれない。しかし、マンガという演習ツールには文章の演習からは得られにくい様々な利点があり、成果を出している企業もある。本講演では、認知科学をベースとしてマンガツールの開発を手掛ける東京工業大学の吉川氏からその概要説明、実際にツールを活用してリーダーシップ研修を実施している日本生命保険相互会社の今井氏からは事例紹介がなされた。その様子をレポートする。

講師

  • 吉川 厚

    吉川 厚氏

    国立大学法人 東京工業大学 情報理工学院 情報工学系 知能情報コース 特定教授 工学博士

    東京工業大学情報理工学院特定教授、株式会社EduLab主席研究員、一般財団法人日本生涯学習総合研究所客員研究員。小学校から社会人までの幅広い人の成長データを分析し、対象者のトレーニングからトレーナー教育にいたる教育コンテンツを作成。ビジネスゲームやマンガコンテンツなど教育手段も多様。


  • 今井 孝之

    今井 孝之氏

    日本生命保険相互会社 人材開発部 部長

    1997年、日本生命保険相互会社入社。調査部で業界団体や金融庁の窓口を務め、サービス企画部で支払問題に端を発する「お客様サービス革新プロジェクト」「新統合計画」に取り組む。2018年より人材開発部に着任し、採用・人材育成を担当。2019年4月から現職。部長としての今年度のスローガンは「発信力を高める」。働き方改革により生産性を高め、創出した余剰時間を自己研鑽や社外人脈の構築に活かすワークスタイルを、自ら実践中。

認知科学とマンガツールのコンセプト

国立大学法人 東京工業大学 情報理工学院 情報工学系 知能情報コース 特定教授 工学博士 吉川 厚氏

私たちは、認知科学を活用して企業研修プログラムを作っています。「認知科学」とは、簡単にいうと、「人はどんなことをする装置なのか」「人はどういう認識をし、どんな反応をするのか」を考える学問です。

たとえば、人は色々な作業をする時に「省力化」をします。たとえば新しい作業を覚える時、最初は考えながら一つひとつ行いますが、慣れると、いちいち考えずに当たり前のように作業するようになります。これを「思考の経済性(economy of thinking)」と言います。これにより次のステップに進めるようになるのです。省力化というのはある意味手を抜くことですから「間違い」が起こります。その一方で、作業プロセスを省く中で何らかの工夫を行いますから、「創造性」が発揮されます。つまり省力化において、「間違い」と「創造性」は表裏一体の関係です。このような、人が省力化を行うという特性を学びに活かしていくことが、研修に対する認知科学的なアプローチだと考えています。

では、ビジネスの研修と、学校教育はどう違うのでしょうか。学校教育は、体系立った知識を分析的に教えていきます。それに対してビジネスでは全体的に「Holistic(全体論的)」に教育を行います。しかし、両者がまったく違うかというと、そうではありません。Holisticでありながら、分析的に行う側面が見逃されがちになっています。私たちは、それをマンガの中に埋め込んだのです。

事例を用いた研修を行う際、いくつかの教材と教育手法があります。まず「ケーススタディ」は事例研究で、読むことによって事例から知を得ます。「ケースメソッド」は、意思決定場面や教育主題を強調して作成され、議論によって意思決定を訓練します。それらに対して、私たちの「ビジュアルメソッド」は、マンガによって場面に没入し、議論し気付くことで、視点を変えたり、視野を広げたり、視座を上げたりということができます。

もう少し分かりやすくお話しすると、同じ会議のシーンを描くにしても、マンガはその一場面を描くだけで、多くの情報をそのまま伝えることができます。たとえば、座席の座り方で役職の序列が、服装や世代から会社の雰囲気が、会議の人数から会社の規模が見て取れます。
一方、「ケーススタディ」や「ケースメソッド」では文章でそのシーンを説明してあるわけです。言葉で書くと必ず解釈が入ります。おそらく、同じ文章を読んでも、隣の人とはまったく異なる状況を思い浮かべるでしょう。特に、外国で実施すると、一人ひとり大きく解釈が異なります。解釈というのは主観、つまりバイアスが掛かります。マンガの場合は、そういうことが起こりにくいのです。

もう一つ面白い点は、実はマンガで描く時、部屋の規模や会議室の内装によって、その会議の重要性が表現されます。これが意外と、「見えているが気付かれていない(Seen but Unnoticed)」という、社会学者のH.ガーフィンケルの言葉のような状態になります。私たちが仕事の中でどういうところに注意を向けなければいけないのかを、学んでいくことができます。
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著者プロフィール

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019 講演録

2019/9/18-9/20開催

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