急増中の介護離職を防ぐには、介護に関する「情報発信」と「環境づくり」がポイント

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019講演録

日本では、2025年には5人に1人が後期高齢者になると予測されている。そんな、超高齢化が進んでいる昨今、親や家族の介護のために現役世代がやむを得ず離職する「介護離職」が問題となっている。介護離職を防ぐために、企業にはどういった取り組みが求められているのだろうか。本講演では、株式会社インターネットインフィニティーで介護コンシェルジュとして活躍しながら、現役のケアマネジャーとしても働く吉井しのぶ氏が、ある大手金融企業が実施した成果を上げた、従業員の仕事と介護の両立支援を事例に、介護離職対策のポイントを紹介した。

講師

  • 吉井しのぶ

    吉井 しのぶ氏

    株式会社インターネットインフィニティー

    慶應義塾大学を卒業後に介護福祉士、介護支援専門員の資格取得。現役のケアマネジャーとして働きつつ、仕事と介護の両立を支援するため、大手企業の従業員様向け介護セミナーにて講師を務める。また、介護コンシェルジュとしても活躍。従業員様の介護に関する悩みに対し、自身の現場経験を活かした個別相談も担当。

データで見る高齢化にともなう介護問題について

高齢化が進む日本では、2025年には65歳以上の高齢者の割合が総人口の3割程度(30.3%)で約3,658万人、75歳以上は18.1%の約2,179万人になると予測されています。つまり、およそ5人に1人が後期高齢者になるということです。

現在、65歳以上74歳以下の高齢者で介護認定(要支援、要介護合わせて)を受けているのは4.3%です。しかし、75歳を超えると、その割合は32.3%と急増します。75歳は介護のターニングポイントだと言えます。

2025年頃までに、団塊の世代が後期高齢者、つまり75歳以上となります。おそらく、介護が必要な方が急増するでしょう。この問題を介護の世界では2025年問題と呼び、介護や医療など社会保障費の急増が懸念されています。また、親が75歳となると子どもは40代〜50代のいわゆる働き盛りの世代です。働きながら親の介護をする従業員が増えることで、企業にとっては介護離職のリスクも高まってくるでしょう。

介護はどれくらいの期間必要なのでしょうか。それは、平均寿命と健康寿命を比較するとある程度予想がつきます。日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87.1歳です。これに対して、介護を必要とせずに生きられる期間を健康寿命と呼び、その年齢は男性72.1歳、女性74.8歳というデータがあります。この健康寿命を平均寿命から差し引くと、男性は約9年間、女性は約12年間の介護期間が発生しているといえます。

では、なぜ介護が必要になるのでしょうか。そこにはさまざまな原因があります。厚労省の調査によると、1番多いのは認知症(18%)です。2番目は脳梗塞や脳内出血、クモ膜下出血といった脳血管疾患(17%)です。これらの疾患は、少し前までは命の危険に直結する疾患でしたが、医療の発達もあり、最近では予後もよくなっています。ただ、体にまひが残ったり言葉が出てこなかったりといった後遺症により、退院後も介護が必要になる方も多いです。3番目は高齢による衰弱(13%)、その次に骨折・転倒(12%)となっています。若い年代であれば骨折しても2〜3ヶ月で回復しますが、高齢になると回復には時間がかかります。さらに、大腿骨などを骨折してしまうとそのまま寝たきりになるケースが非常に多いです。

脳血管疾患や骨折・転倒で怖いのは、突然起こるということです。また、最近では高齢者が配偶者の介護をしているような老々介護も多いですが、もし突然介護している方がアクシデントに見舞われた場合、両方の介護が必要になってくる、ということも当然起こりえます。

先ほど健康寿命と平均寿命から介護期間を予測しましたが、介護は長期戦になりやすく見通しが立ちにくいという特徴があります。実際、介護をしている方に「どれくらい介護をしているか」というアンケート(生命保険文化センター調査)によると、3年以上が約60%、10年以上という方が14.5%いました。

介護による離職者が毎年10万人、仕事しながら介護する人は346万人も

こうした負担感から、毎年10万人前後の人が介護を理由に離職・転職をしています。これだけの人材が失われるということは企業だけでなく社会にとっても大きな損失です。

ところが、厚労省が介護を理由に離職・転職した方に実施したアンケート結果をとってみると、離職したあとでより負担が増えたと回答した方が多いといった結果でした。収入がなくなったり大幅にダウンしたりしたことにより、74.9%の方が経済面での負担が増えたと感じ、64.9%の人は精神的負担が増したと答えています。理由としては、大切な家族のそばにできるだけいたいという思いから離職・転職したにもかかわらず、いざ一人で一日中介護をしているとストレスが溜まってしまうというもの。それからトイレやお風呂の介助をすることが増え、肉体面での負担が増えたと感じている方も56.6%にのぼりました。この結果を見ても、介護を理由に離職・転職をするということは、決して得策であるとはいえません。
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著者プロフィール

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019 講演録

2019/9/18-9/20開催

テーマ別特集「HRテクノロジー」

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