二極化する人事部門の未来。HRテクノロジー活用の先駆者となれるかそれとも傍観者で終わるか

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019講演録

テクノロジーの急速な発展により、経営者はデジタル化に大きく舵を切ろうとしています。人事領域でもHRテクノロジーの活用が進んでいますが、積極的に活用する「先駆者」と、消極的な「傍観者」に二極化しているようです。今、人事部門は何を考え、どう変わっていくべきでしょうか。KPMGコンサルティングで20年以上にわたって人事領域に携わる大池一弥氏に、1,200人のグローバルに活躍するHRリーダーへの調査結果からの示唆と、人事部の未来についてお話しいただきました。

講師

  • 大池一弥

    大池一弥氏

    KPMGコンサルティング株式会社 パートナー

    ・組織・人材マネジメント領域で 22年以上の経験を有する。組織・人材マネジメント領域で22年以上の経験を有する。 複数の外資系コンサルティングファームを経て現在に至る。
    ・人事戦略策定、人事制度設計、グローバルタレントマネジメント、人材開発・人材育成、人事システム導入支援、働き方改革支援の領域で 数多くのプロジェクトを推進。

デジタル時代、二極化する人事部門

世の中の大きな移り変わりにより、人事部にも変化が訪れています。2018年に、KPMGでは人事部門の未来に関するグローバルレポート「Future of HR」を発表しました。

最初に、デジタル時代のインパクトについてお話しします。今、IoTやAI、ビッグデータといった最新技術トレンドに触発され、デジタルビジネスの推進を重要テーマに掲げるトップマネジメントが増えています。KPMGグローバルCEO調査2017でも、「今後3年間で、技術イノベーションにより自社の業界に大きな破壊が起きると予想しますか?」という質問に対して、87%のCEOが「Yes」と回答しています。しかし、同じ調査で「自社が最新テクノロジーに追随できていないと思いますか?」という質問に対しては、79%のCEOが「Yes」と回答しました。これはつまり、テクノロジーの発展や重要性については理解しているものの、具体策を取る段階には至っていない、自社が遅れを取っていると感じているということです。

こうした急速なデジタル経済へのシフトに伴い、人事部門の現状と未来への展望を明らかにすることを目的に、世界64カ国、1,200社のHRリーダーに調査を行ったものが「Future of HR」です。この中で、グローバル全体で約3分の2のリーダーが、「人事部門がデジタル化への転換期を迎えている」ことを認識しています。しかし一方、「デジタル化の計画がある」との回答は、グローバル・日本共に半数以下に留まる結果となりました。特に興味深いと感じたのは、デジタル化に対して積極的に取り組む「先駆者」と、成り行きを傍観する「傍観者」の二極化が見られたことでした。

具体的に、「先駆者」と「傍観者」の対比を整理してみましょう。

・「先駆者」は人材の採用や配置など、予測分析に基づく洞察・実施を活用していますが、「傍観者」は活用していません。
・「先駆者」はデジタル化の目的と手段を明確にし、計画を立案・実行していますが、「傍観者」はデジタルで何をしたいのか目的が不明確で計画もありません。
・「先駆者」はAIの活用により、要員配置の在り方を再形成しています。まずは導入することでトライアンドエラーを試み、最適な活用方法を模索しています。しかし「傍観者」は、そもそもAIの活用に消極的です。
・「先駆者」は、従業員体験(Employee Experience)の必要性を認識し、強化しています。しかし「傍観者」は、そもそも従業員体験の向上に関心を持っていません。

人事の新しい役割、6つのポイント

こうした傾向を踏まえ、次に人事の新しい役割についてお話ししていきます。
当たり前のことですが、人が離れる会社は、従業員が求めている期待に会社が応えられていません。逆に、人が集まる会社は、従業員が求めている期待に会社が応えられています。これをもっと論理的に考えて、打ち手をどんどん出していくことが人事には求められています。それが、従業員に対してはモチベーション向上に、社外に対しては会社の魅力をアピールすることにつながります。それを、「EVP(Employee Value Proposition)」と言います。

当社はEVPを6つの領域で捉えています。

(1)従業員に対して、OJT・OFF JTでどのような機会を提供できるかという「ラーニング&ディベロップメント」
(2)この会社でどのようなキャリアを描けるのかという「キャリアパス」
(3)個人に対する細かなケア、メンタリングやコーチングといった「リーダーシップ」
(4)パフォーマンスマネジメントも含めた「報酬&表彰」
(5)バリューや行動様式、ダイバーシティ、ミッションやビジョンの共感といった「組織風土 & 価値観」。こちらは昨今非常に重視されています。
(6)入社時のフォローや、採用マーケットに対するメッセージの出し方などの「タレントブランド」

これら6つの軸で、自社の強みと弱みを把握し、従業員のロイヤリティとモチベーションを高めるにはどうすればいいのか。これも今までになかった人事に期待される役割の一つです。

ちなみに、優れたEVPとは「従業員」と「企業」との関係性が、win-winになっていることです。以前は、会社が従業員を雇ってあげているのだから従うのが当たり前、という考えがありましたが、今は互いのバリューをどう高め合えるのか、という関係性が重要となっています。そうしたバランスの取れている企業は、人材が育ち、非常にモチベーションが高いという特徴があります。
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著者プロフィール

HRサミット2019/HRテクノロジーサミット2019 講演録

2019/9/18-9/20開催

テーマ別特集「HRテクノロジー」

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