コーチングのスキルとトレーニング方法ー部下の効果的なコーチングのためにー

人材育成コラム-プロが教えるコツとポイント-

前回のコラムでは、コーチングの定義(コーチが質問や傾聴を通じて、クライアントから“答え”を導き出すことで成長を促す、いわば「クライアントの自律をサポートするコミュニケーション技術」)や基礎知識についてお伝えしました。
本コラムでは、コーチングを行う上で重要なマインドやスキル、トレーニング方法をお伝えします。

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マインドはコーチングの根幹

今回は具体的なテクニックをたくさんお伝えしていきます。本コラムを読みながら「これは使えそうだな」「明日早速クライアントに試してしてみようかな」こんな風に思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、テクニックだけのコーチングでは、クライアントの目標達成の支援において十分とは言えません。

スポーツや武道の世界では、選手が目標達成やハイパフォーマンスを発揮するために兼ね備えるべきものとして、よく「心技体」と表現されます。コーチングの世界においても、コーチングテクニックとしての「技」や、そもそも目の前のクライアントを理解したい、サポートしたいと思う考え方としての「体」は必要ですが、それ以上にコーチが備えるべき「心」、マインドが重要です。そのため、まずはコーチが備えるべき「3つのマインド」についてご紹介していきます。

コーチングの根幹となる3か条

コーチングにおけるマインドとは、「クライアントとの関わり方」のことです。本コラムでは、クライアントとの関わり方について、双方向、継続性、個別対応の3つのマインドを「コーチングの根幹となる3か条」と呼びます。では、なぜコーチングの根幹となる3か条がテクニックよりも優先されるのでしょうか?

昨今、コーチング研修は多くの企業で導入されています。しかし、コーチング研修に参加した受講生の声は様々です。学んだテクニックだけをクライアントに使って効果が出ずに、「コーチングは使えないもの」と勘違いしてしまう受講生がいるのも実情です。もちろんテクニックなしでは、コーチングは成立しません。しかし、テクニック優先では、コーチングが上手くいかなかった際に小手先で何とか解決しようとしてしまい、結局似たような事象でつまずいてしまう可能性が高いです。こうした失敗を根本から解決するためには、常に原点に立ち返ることが重要です。その原点が、双方向、継続性、個別対応からなる3か条です。ここからは、コーチングの根幹となる3か条の各要素の詳細についてお伝えしていきます。

1.双方向
双方向とは、コーチとクライアントの双方が対等の立場でコミュニケーションを取らなければならないということです。言い換えると、クライアントが自分の意見を自然に言える状況を作ることが大切です。「私の言うことを聞け」というような一方通行のコミュニケーションではなく、「私はこう感じているが、あなたは?」のような双方向のコミュニケーションが大切となります。

また、コーチは、クライアントにさまざまな視点で話をしてもらえるよう適切な質問や問いかけをします。もちろん、やみくもにではなく、クライアントの目標達成に向けた長期的成長という意図をもって行います。クライアントがコーチからの問いかけへの回答を言語化する中で、有効な解決策に自ら「気づく」ように誘導することがコーチの役割です。

2.継続性
継続性とは、一度面談したきりで終わるのではなく、一定期間継続してコミュニケーションを取り続ける必要があるということです。最初の面談でコーチがクライアントに対して自発的に行動を起こすことができたとしても、そのモチベーションは一度の面談で永続するとは限りません。継続してコーチングを行うことで、相手のモチベーションを維持することが重要です。

また、クライアントを目標に集中させるという意味合いでも継続性はとても大切です。目標を常に達成する人、常に成果を上げ続ける人の特徴があるとしたら、それは何でしょうか? 本田技研工業の創業者である本田宗一郎氏は「私の最大の光栄は、一度も失敗しないことではなく、倒れるごとに起きるところにある」と語っていたといいます。他にも「継続は力なり」という格言がある通り、諦めずに継続して行動しつづけることは、成功のための重要な要素ではないでしょうか。しかし、言葉では簡単ですが、実際に継続しつづけることは難しいのが実情です。自分が目標に対してどの程度達成できているのか、自分がやっていることが合っているのかを判断しにくいことも、継続的な行動を阻害する要因の1つです。したがって、コーチは、クライアントと継続的な関わりを持ち、クライアントの行動について適切なフィードバックを行いつづけることで、目標に向かって行動するための継続性を高めることができるのです。

3.個別対応
個別対応とは、相手の価値観や考え方などに合わせて対応方法を変える必要があるということです。そのため、コーチングを行う場合は複数名を相手に行うのではなく、基本的には1対1で行います。1対1の面談を繰り返す中で、相手の価値観や考え方を知り、相手に受け入れられる伝え方や方法を選択します。オリンピックメダリストを育成した名コーチである、マラソンの小出義雄監督は、選手の性格に合わせた個別対応の育成スタイルで有名です。歴代のメダリストである有森裕子さんや高橋尚子さんも小出監督から個別対応を受け花を咲かせました。個別対応を図る上では「クライアントをどれだけよく知っているか」が重要です。クライアント一人ひとりをよく観察し、その人に合わせた対応を心がけてください。

ここまでお伝えしてきた3か条は、どれか1つが満たされていれば安心というものではありません。どんなクライアントに対しても、3つ全て満たされていることが重要です。「双方向」の対話を「継続的に」実行し、それを一人ひとりの特性に合わせて「個別対応」していく。コーチングが上手くいかない時はテクニックそのものの振り返りを行うのではなく、まずは、この3か条に対して振り返りを行って下さい。

著者プロフィール

株式会社ラーニングエージェンシー 編集部

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