法定雇用率の達成から、働きがいのある職場提供まで。 障がい者雇用の様々な課題を、“農園”で解決する。

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

2018年4月に障がい者の法定雇用率が引き上げられて1年。企業が努力を続ける中、募集から定着まで、障がい者雇用には今なおいくつもの課題が横たわっている。それらを包括的に解決する一つの糸口として、“農園”を通じた雇用サポートが広がりを見せている。農業とは縁のなかった企業に続々と導入されているこのサポート事業だが、果たして、どのような取り組みなのだろうか。

障がい者の雇用にまつわる、様々な課題

2018年4月に施行された「改正障害者雇用促進法」により、民間企業の障がい者雇用の法定雇用率が、2.0%から2.2%に引き上げられた。また、2020年度末までには2.3%への引き上げが控えており、その後も段階的に引き上げが予想される。各企業が努力を続ける中だが、達成している企業は“大多数”とは言えない。エン・ジャパン株式会社が従業員数50名以上の企業を対象に行った調査(*)では、法定雇用率2.2%を満たしている企業は39%に留まるという結果も出ている。
こうした中、2018年8月には中央省庁による障がい者雇用の水増し問題も発覚。SDGs(持続的な開発目標)で掲げられている「誰も置き去りにしない」「ディーセント・ワーク」といったキーワードとは程遠い実態が明るみになった。
(※エン・ジャパン『障がい者雇用実態調査2018』)

仮設資材レンタル大手 日建リース工業が、農業を通じた障がい者雇用サポートを展開

そうした日本の社会問題を解決するために、日建リース工業株式会社は2018年4月より、農業を通じて障がい者の就職をサポートする「はーとふる農園」を埼玉県飯能市にオープンした。同社は、建設業界向け仮設資材、オフィス備品、物流機器、介護用品などのレンタル事業を展開する、総合レンタル企業だ。特に、建設仮設資材分野においては業界屈指の存在である。「はーとふる農園」は、この仮設資材を活用した新規事業として誕生した。

サービスモデルとしては、障がい者の職業訓練、企業への紹介、そして職場の提供までをワンストップで行うものだ。まず、就労支援施設「はーとふるネクスト」で、就労を希望する障がい者を募集し、「はーとふる農園」にて農業訓練を行う。そして、農業の技術を身に付けたのちに利用企業に紹介。企業での雇用が決まった障がい者はそのまま「はーとふる農園」で就労し、雇用継続アドバイザーなどの農園スタッフと雇用企業の担当者が連携して、成長と定着をサポートするという流れだ。
メリットは大きく3点ある。
(1)就労を希望する障がい者の募集は日建リース工業が行うため、企業が求人広告などを出す必要がない。
(2)雇用後も就労は農園内で継続するため、企業が業務の切り出しを行う必要がない。
(3)農園内は障がい者の方々が働きやすい環境が整えられており、また周囲に同じ境遇の仲間がいるため、定着率が高い。

企業の法定雇用率達成に寄与するだけでなく、社会的な貢献度も高い事業だが、日建リース工業はなぜ同事業に乗り出し、今後はどのような展開を考えているのだろうか。そして、実際に働く障がい者の方々は、どんな環境で働き、農園での仕事をどう感じているのだろうか。実際に農園を訪れ、取材を行った。

障がい者が、本当の意味で自立できる事業を作りたい

まずは、日建リース工業株式会社 代表取締役社長 関山正勝氏に、「はーとふる農園」立ち上げの背景と、同サービス導入のメリット、そして今後の展開・ビジョンについて伺った。

大量の「足場」が、障がい者の働きやすい農園に役立つ

――まずは、「はーとふる農園」立ち上げの背景から伺っていきたいと思います。各種資材レンタル事業を展開していらっしゃる貴社において、この事業は少し異色だと感じますが、立ち上げの背景を聞かせてください。


関山正勝氏(以下 関山):きっかけは、大量の足場が不稼働品になったことでした。当社は建築構造物をつくる際に必要な“足場”のレンタルを主力事業として展開しています。この足場の形状は従来「門型」が主流でしたが、近年は安全性の高い「先行手すり型」という形状の足場に入れ替わりつつあり、従来の「門型足場」の需要が少なくなってきました。これを単に処分するのではなく、活用する方法はないかと考えていたある日、たまたま住宅用の足場を活用して農作業をしている写真が目に留まったのです。これなら、在庫の足場を活かして障がい者の方が働く場を創れるのではないかと考えました。
早速、門型足場を活用して腰の高さの農作業台を作りました。これは足腰の負担を軽減でき、車いすの方でも農作業ができます。また、汚れにくい砂栽培を採用して農作業に慣れていない方でも始められるようにし、さらに、頑丈なビニールハウスで天候に左右されにくい環境を整備しました。

障がい者の雇用と定着を阻む要因を、解消できる事業モデル

――稼働を終えた足場というリソースが農作業の身体的な負担を軽減させる作業台に変わり、障がい者の方々が働きやすい環境を創っているということですね。「はーとふる農園」は、障がい者雇用にまつわる様々な課題をどのような形で解決されているのでしょうか。

関山:企業が抱える大きな悩みは、障がい者雇用率を達成しようと募集しても人が集まらず、やっと採用できたと思ってもすぐに退職してしまうこと。それは何故でしょうか。
我々は、障がい者の方を雇用するとき、健常者がする仕事のなかから「障がい者でもできそうな仕事」を切り出すことで障がい者の「業務」を創っていないでしょうか? もちろん良かれと思ってしていることですが、重要度が低く成長を感じられない仕事に、やりがいを持つことは難しいです。その上、企業は健常者が働くことを前提としたルールで動いており、障がい者の方は孤独を感じてしまいがちです。これでは定着しないわけです。

障がい者雇用が定着しないのは、そもそも企業が「健常者が働くことを前提としている」からである、という構造的な問題を指摘した関山氏。
このあと、企業の利益、働く人々のやりがいなど、労使両方の立場から、CSRにとどまらない障がい者雇用の在り方について伺います。また、実際の農園の様子についてのレポートや、そこで働く方々へのインタビューも!続きはぜひダウンロードしてご覧ください。


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著者プロフィール

日建リース工業株式会社 代表取締役社長 関山 正勝 氏

1967年 東京生まれ、獨協大学経済学部経営学科卒業。1983年 (株)富士銀行(現みずほ銀行)入行。目黒支店外国為替科を経て本店融資企画部事業調査室で大口及びベンチャー融資先詳細調査・業界調査を担当。1997年 日建リース工業(株)入社。取締役工場本部長時代にトヨタ自動車生産性本部より直にTPS方式の指導を受ける。経営学修士、中小企業診断士、社会保険労務士、日商簿記、販売士、ロジステック管理などの資格取得を通じて経営の基礎を学ぶ。2012年 代表取締役社長に就任。経営学に疑問を感じ学び直しのため事業構想修士を修了。軽仮設リース業協会理事、事業構想研究所客員教授。

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