持続可能な社会を考える「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」が開幕。人材にもサステナビリティへの意識を求める時代へ
続いて紹介するのは味の素株式会社 取締役社長 最高経営責任者 西井孝明氏の話だ。同社では世界を取り巻くさまざまな課題から、同社が取り組むべき課題を「地球持続性」「食資源の確保」「健康な生活」の三つとしている。これに対して、同社の技術や知見を中心として課題解決を図り、社会価値を実現することで新たな経済価値を創出し、事業の成長加速を目指しているという。この取り組みを「ASV」(Ajinomoto Group Shared Value)と称して、社員一同で推進している。つまり、サステナビリティ活動と企業の経営方針がリンクしているのだ。

その内容は、ベトナムでの栄養課題の解決に向けた学校求職プロジェクト、アスリートに向けた食事指導や栄養価を考慮した「勝ち飯」の提供、昨今問題の成人病予防に向けたうまみを活用した減塩食の開発、ゴミを出さない生産体制の構築、プラスチックを極力使わない包装など多岐にわたっている。

ASVの取り組みは、従業員の心と体の健康やダイバーシティな組織の実現、人材の育成などにも及ぶ。これらを測る尺度として、働きがいを中心としたエンゲージメント向上をマネジメントの指標に採り入れているそうだ。西井氏は「働きがいと生き甲斐を強く感じて、モチベーション高く、能動的に働いてもらうことが個人のキャリア形成と会社の成長につながると考えている」と話す。具体的には世界中の従業員にエンゲージメントサーベイを行い、PDCAサイクルを回しているという。また、「日本が、ダイバーシティを推進の受け皿となるべく、働き方改革に積極的に取り組んでいる」とし、日本が世界の関連会社を牽引する存在になっていると語った。
持続可能な社会を考える「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」が開幕。人材にもサステナビリティへの意識を求める時代へ
最後に紹介するのがフィリップ モリス ジャパン合同会社 職務執行役副社長 井上哲氏の講演だ。同社は、たばこ会社であるにも関わらず、煙のない社会を目指しているそうで「20年近くにわたり、喫煙と健康の問題に真摯に取り組んできた」と語る。これは「たばこを完全になくす」という意味ではなく、体に害を与える可能性が大きい紙巻たばこから、害を与える影響が少ない加熱式たばこへの切り替えを指す。

「体への影響を完全に抑えるなら、吸わないことがベスト」としながらも、嗜好性から将来も吸い続けるひとが世界中に一定数いるそうだ。彼らに対して、代替製品として加熱式たばこを勧める活動を続けているという。これは、喫煙問題に悩む企業の働き方の変革にもつながるもので、「煙のない社会に、サステナビリティで取り組んで行く」と強い意気込みを述べ、話しを締めくくった。

「サステナビリティ」に対する機運は、グローバル市場を牽引するステークホルダーから巻き起こり、それ以外の企業や団体にも拡がりつつある。あなたの職場でも、すでに行っている取り組みはあるだろう。そこから、どんな成果につなげ、優良な人材を獲得し、さらなる成長に続けられるか、振り返ってみてはいかがだろうか。
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