エントリーシート書類選考へのAI導入には賛否が半々

近年増加傾向にある、エントリーシート(ES)の書類選考にAIを導入する動きについて聞いてみました[図表8]。文系・理系ともに「どちらともいえない」とする学生が5割を超え、「賛成である」とする学生は、文系で25%、理系で21%。対して「反対である」とする学生は、文系で21%、理系で29%ときっ抗しています。
第95回 2020年新卒学生の就職意識調査~文系人気トップは不動の「商社」、AI導入には賛否も
これまでの調査では、AI導入に対して、文系よりも理系学生のほうが比較的容認する傾向が見られたものですが、今回の調査では逆に理系学生のほうに反対派が多くなっています。
それぞれの理由も聞きましたので紹介しておきましょう。

【賛成である】
・採用担当者個人の好みが反映されにくくなると思う(立教大学、文系)
・エントリーシート選考に合格/不合格する基準が今よりは分かりやすくなる(早稲田大学、文系)
・人がやるべきところは人がやり、代替できるところはAIがすればいいと思うから(同志社大学、文系)
・年を重ねることに学習して選考が感情に左右されなくなると思うから(名古屋工業大学、理系)
・人気企業の場合は、人がすべてのエントリーシートを見ることは難しい。AIを導入することで、見る側の負担が減少することに加えて、一つの尺度上で判断することが可能になると考えるから(山形大学、理系)

【反対である】
・傾向で判断するのではなく、人柄で判断してほしい(東京外国語大学、文系)
・機械に否定されたら人権を失う気分になるから(大阪大学、文系)
・一緒に仕事をするかもしれない人間に判断してほしい(静岡大学、理系)
・人と人のつながりに人工知能が入る余地はないと考えている(鹿児島大学、理系)
・人でしか判断できないパーソナルなところまではAIでは見ることができないと思う(明治大学、理系)
・結局変数を指定するのは人間だから(東北大学大学院、理系)

エントリーシートよりも抵抗感が強いAI面接

最後に、面接の判定支援にAIを導入することについても賛否を聞いてみました[図表9]。こちらも「どちらともいえない」とする学生が文系・理系ともに4割以上で最多です。
第95回 2020年新卒学生の就職意識調査~文系人気トップは不動の「商社」、AI導入には賛否も
ただ、賛否となるとはっきりしています。「賛成である」とする学生は、文系で19%、理系で21%と2割程度にとどまるのに対して、「反対である」とする学生は、文系で33%、理系では36%にも及びます。明らかに反対派のほうが多くなっています。エントリーシート同様、文系よりも理系のほうに反対派が多くなっています。
こちらもそれぞれの理由を紹介しましょう。

【賛成である】
・就活にかかる費用を抑えることができるし、表情やしぐさなども問題なく伝わるように思う(岡山大学、文系)
・採用担当者個人の好みが反映されにくくなると思う。また、会社が掲げている採用方針に完全に沿った面接評価方法になると思うので、対策がしやすくなる(立教大学、文系)
・時代の流れ的に新しい方式に挑戦してもいいと思う(名古屋学芸大学、文系)
・遠方の学生などの、距離的なデメリットを最大限抑えることができる。また企業側としても、AIによる合理的な判定を参考にすることができ、採用にも一貫性が出ると思われる(京都大学、理系)
・大ざっぱな性格などはAIもわかると思う(千葉大学、理系)
・参考にする程度であるなら、人の気づかなかった点をAIに指摘してもらえるのは採用側からするといいと思う(立命館大学、理系)

【反対である】
・面接は人の雰囲気も考慮するためAIでは判断しきれない部分があると思う(お茶の水女子大学、文系)
・面接は人と人の対面の場なので、面接官の受けた印象の方が重視されるべきであると思う(早稲田大学、文系)
・対面でしか伝わらない要素が面接には多い(慶應義塾大学、文系)
・自分が人事だとして、一緒に働きたい人をAIの判定で決めるなど理解ができない(北海道大学、理系)
・態度や雰囲気は画像認識で取得するのは難しいと思う。そのようなことを考えている企業ほどこちらとしても人材を大切にしていないと考える(電気通信大学大学院、理系)

エントリーシートは、AIが合否の判定を出すのに対して、面接は合否の判定までを出すのではなく、あくまでも判定材料としてのデータを示し、最終判定は「人」が行うというサービスが多くなっています。ただ、イメージとしてはAIに合否判定までされてしまうと捉えている学生は少なくありません。もしかしたら、人事担当者の中にも誤った認識を持たれている方が少なくないのかもしれませんね。

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