元パソナ社長の新たな決断と挑戦。グローバル市場の現状と日本企業が成功するための鍵とは

HRプロ編集部取材×注目人事トレンド

2018年9月1日、日本に進出する外国企業に事業運営支援サービスを提供するトライコー株式会社の新CEOに、元パソナ社長の佐藤スコット氏が就任した。若くしてパソナの代表取締役社長に就任し大きな成長を実現した佐藤氏が、その先の可能性を感じ、パソナ社長辞任を選択したその決断は何だったのだろうか。そこで今回は同氏を訪ね、社長就任の経緯から、グローバルビジネスの現状や日本企業が成功する必要条件、今後のビジョンまで語っていただいた。

パソナ社長を辞任してアジアのビジネスの可能性に賭けた

寺澤 まずはトライコー・グループおよび御社の事業内容についてお聞かせください。
佐藤 アジアを中心に世界20カ国・39拠点を擁するトライコー・グループは、クライアントである外国企業や投資家がコア業務に専念できるよう、管理業務、コンプライアンス機能、ビジネスサポート機能などのBPOサービスを総合的に提供しているグローバル企業です。そうした中、トライコー・ジャパン・グループは、日本に進出する外資系企業の支援を中心に、現在約550社(大半が北米か欧州の企業)の顧客に向けてサービスを提供しています。例えば、コーポレートサービスとしては、法人設立登記、ノミニーサービス、企業法務、ビザ・在留資格申請、許認可取得のサポートなど、ビジネスサービスとしては、記帳代行、決算業務、給与計算、社会保険手続き、銀行口座開設、資金管理、税務コンプライアンス、ITのサポートなどが挙げられます。

寺澤 昨年9月1日に代表取締役CEOに就任された佐藤様ですが、それまでは人材派遣サービス大手のパソナで社長を務めていらっしゃいました。そもそもなぜパソナの社長を辞任されたのでしょうか。
佐藤 私はニューヨーク州出身で、1993年にアメリカの大学を卒業後、会計事務所にて国際コンサルタントとして従事したのち、2000年に株式会社パソナグループの米国法人であるパソナインターナショナルインクに入社し、2004年に同社社長に就任しました。その後、2008年に来日し、海外事業を管掌する株式会社パソナグループ常務執行役員の職を経て2011年に株式会社パソナの社長に就任しました。辞任の理由ですが、2018年まで7年ものあいだ長期にわたって務めたこともあり、後は若い人たちに任せ、新しいことに挑戦したくなったというのが理由の一つです。アメリカで10年、日本でも10年働き、2つの国の長所や短所など、いろいろと勉強できたので、次は中国中心のアジアに軸足を置いたビジネスをやりたいと思いました。さらにもう一つの理由は、個人的にファンドの考え方や方法について勉強したいと思ったからです。50歳を目前に控え、今やっておかないと、今後きちんと学ぶ機会がないのではないかと感じ、決断しました。

寺澤 そこからどのような経緯を経て、現在のポジションに就かれたのでしょうか?
佐藤 私の知人がイギリスの投資会社ペルミラのアジア代表と繋がりを持っていたため、ご紹介いただき、その方にファンドの現状などをご教授いただいたのがきっかけでした。実はペルミラはトライコー・グループの支配株主であり、当時偶然にもトライコーの日本法人がCEOの後任を探していた時期で、私に打診があったのです。私のアメリカ時代の仕事にも近い分野だったので、これも何かの縁と思い、話を受けました。アジアを中心にビジネスを展開している点や、パソナのような大企業ではないですが、その分、いろいろとチャレンジできそうな点などが最終的な決め手となりましたね。
寺澤 パソナでは海外事業の立ち上げ支援にも深く関わられたそうですが、そうした経験も大いに活かすことができますよね。
佐藤 おっしゃる通りです。パソナ時代にはインド、タイ、マレーシア、インドネシアなどさまざまな国で子会社を立ち上げてきました。そして実際に現地に足を運び、会計事務所や弁護士事務所を探し、ここでどうやって会社を作ったらいいのか、どうやってローカルな文化を理解したらいいのか、毎回毎回苦労したものです。そこで培った経験や視点は、現事業に必ず活かすことができるだろうと思いました。
実際入ってみて面白いなと思ったのは、当社のサービスをご利用いただいているお客様は、日本で成功したい、アジアを強化したいなど、いずれも攻めの姿勢をお持ちなので、ポジティブな方やエネルギッシュな方が多いところです。お客様からは一緒に仕事をさせていただきながら、たくさんの刺激やエネルギーをいただいております。

改めて見直される日本市場 欧米企業の再進出でチャンス拡大

寺澤 欧米の企業がアジアの拠点を日本からシンガポールや香港に移すなど、近年ジャパンパッシングのような動きも見られましたが、実情はいかがでしょうか?
佐藤 その点に関しては、新たなサイクルがやってきたなと実感しています。例えばアメリカの企業では、これまで中国やインドなどに展開していた工場を、近年アメリカ国内に戻すようになってきました。理由は現地の製造コストや人件費が年々上昇し、アメリカで作ったほうがむしろ安くなるからです。これとまったく同じことが日本でも起きています。質やコスト、さらに住みやすさなどを考えれば、日本のほうが絶対にいい。近年そういう見方が増えてきており、欧米の企業などでもアジアの拠点をシンガポールや香港から日本に戻そうという議論が起こりつつあるようです。私は再び日本に大きなチャンスが巡ってくると信じています。

寺澤 海外の企業が日本に進出する際、日本ならではの難しさや特殊性に戸惑うケースもあるのでしょうか?
佐藤 それは世界中どこの国でも一緒です。フランスにはフランスの、ドイツにはドイツの難しさがある。東南アジアだって簡単ではない。その国ならではのやり方や特徴があり、その背景とニュアンスをしっかり理解しなければ、ビジネスはうまくいかないと考えるべきです。そういう中で、あえて日本ならではの特殊性を挙げるなら、会社設立の手続きや銀行口座の作成などに難しさがあるように感じます。
寺澤 これまで御社は日本に進出する外国企業へのサービスが中心だったそうですが、最近では海外に進出する日本企業からの引き合いが多くなりつつあるとお聞きしました。
佐藤 はい。そのニーズは増えていると感じます。アメリカの企業と日本の企業を比較すると、人事業務において大きな違いがあります。アメリカの企業では給与計算などを全社で統括管理するグローバル人事が定着してきていますが、日本企業の場合、海外の子会社などは現地に任せきりで、どんな社員がいるのか、誰に給与をいくら払っているのかなどを把握していないケースが少なくありません。だからこそ、今後グローバル化が加速する中、グローバル人事という観点はより強くなっていくでしょう。

日本企業におけるグローバル化の現状と成功への必要条件とは

寺澤 逆に海外に進出しようとしている日本企業の課題についてもお聞かせください。日本企業のグローバル化の現状については、どのように捉えておられますか?
佐藤 10年前に来日して、最初の2〜3年間は、日本企業は永遠に変わらないと半ば諦めていました。しかしその後は、日本全体が大きく変わってきたように感じますね。例えば、日本に外国人が来ることに対する抵抗感が減ったり、英語を勉強しないといけないと思う人が増えたり、そしてその変化の中心にいるのは若い人たちです。今後世代交代が進む中で、日本企業のグローバル化は間違いなく加速していくでしょう。加えて、この数年で変わってきたなと感じるのは、日本人と外国人の間に生まれた人たちが増えてきたこと。彼らは生まれてきた時点からグローバルの影響を受けていますから、そういう人たちがビジネスの世界に入ってくることで、自動的にグローバル化が進んでいくと思います。
寺澤 日本企業がこれからグローバル化の中で真に成功していくためには、どういった変化が求められるのでしょうか?
佐藤 グローバル化を成功させるためには、変化への対応力とスピードが必要不可欠です。そしてそのためには、アウトソーシングの活用が何よりも有効になります。アメリカでは、アウトソーシングを使うか使わないかという議論はほとんどありません。議論されるのは、どこをアウトソーシングして、どこをアウトソーシングしないかという話だけ。一方、日本ではまだまだアウトソーシングに消極的な企業や、うまく活用できていない企業が目立ちます。例えば給与計算を社内でやることに、どんな意味があるのか。周辺業務を外に出すことで本業に経営資源を集中できるのではないか。そういう根本的な考え方の変化が求められるでしょう。当社には海外展開に必要なノウハウや情報、人材等が揃っていますので、ぜひうまくご活用いただければと思います。

寺澤 御社ならではの特徴や強みとは何でしょうか?
佐藤 通常のアウトソーシング会社では、専門的サービスを外注委託するケースも少なくありません。トライコー・ジャパン・グループでは、グループ内に税理士、公認会計士、行政書士など公的資格を保有する各種プロフェッショナルを抱えているため、すべてのサービスをワンストップで提供できるところが強みの一つと言えるでしょう。また、当ジャパン・グループは現在約200名のスタッフがおりますが、そのうちの7割がバイリンガルです。外国企業の商習慣や文化を理解した、さまざまな言語のバイリンガルスタッフがお客様の要望に柔軟に対応する――その点もまた、私たちの大きな強みだと思います。

寺澤 では最後に御社の今後のビジョンについてお聞かせください。
佐藤 まずは今の事業を広げていくこと――それが私に課せられたミッションです。また、トライコー・グループ全体としては、拠点同士の結びつきを強めて、より組織的な取り組みができるようにしていきたいと思っています。そのためには、今まで以上にチームワークやコミュニケーション、社員ひとり一人のスキルの向上が求められるでしょう。私たちはアジア太平洋地域のビジネスソリューションにおけるリーディングカンパニーであると自負しておりますが、その地位を維持・向上させて、真の意味でアジアのナンバーワン企業になることを目指していきます。今後ともご期待ください。

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著者プロフィール

トライコー株式会社 代表取締役CEO 佐藤 スコット 氏

1997年にEY(アーンスト・アンド・ヤング)で国際コンサルタントとして活躍。

2000年にPasona NA(米国パソナ)に入社し、2004年に代表取締役社長に就任。2008年に株式会社パソナグループの常務執行役員国際業務室長として来日。2011年には株式会社パソナの代表取締役社長兼最高運営責任者(COO)に就任。

2018年9月にアジア最大のビジネス・プロセス・アウトソーシングおよび投資家向けサービスを提供するトライコー・グループの日本代表として、1000社以上の外資系企業の日本進出を支援。2019年からは本格的に日本企業のアジア進出支援に乗り出す。

米国公認会計士。

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