Ⅲ 働き方改革は生活改革と表裏一体

視点9:「平日のゆとり」で生活改革を

ダイバーシティ経営・働き方改革で重要なのに見落とされがちな10の視点
 なぜ平日のゆとりが大事なのでしょうか。結婚をしている人の場合、定時に帰宅をすれば、子どもと一緒にご飯を食べることができる。独身の場合は定時に帰宅をすれば、ビジネススクールに勉強に行ける。そのためにはやはり、平日の生活改革が必要です。社員一人ひとりにとって、働き方改革で生み出された時間が、自分の生活を豊かにするためのものだと思うようになるかどうかなのです。
 ですから、働き方改革の次の課題は、自分の生活を豊かにすることにつながるのが働き方改革だと社員が思えるかどうかなんですね。

視点10:「子育てはカップルで」を前提とする支援を

 もう一つは子育てですね。男性社員の育休取得を推奨している会社もあると思います。それでは何のために男性の育休取得を促進するのか。「くるみん」マークを取るためではありません。男性社員に育休を取ってもらう目的は、長い子育てに男性が参画するようにするためです。カップルでの子育てにつながるきっかけとして育休を取ってもらうわけです。そうでなければ男性が育休を取得しても意味がありません。
 例えば、育休を取る男性社員が出ました。ところが取った時期が「妻が産院にいる時」では困ります。例えば、妻が産院から戻ってきて、産後休業の期間、仕事をしてはいけない強制休業の時期に育休を取るべきです。男性社員に「育休を取れ」と言うだけではなく、育休をいつ取得し、何をするのか、男性の子育て参画に貢献することを理解して、会社が男性の育休取得を推奨しているのかどうかが大事なのです。男性の育休取得を促進する目的は、カップルでの子育てを促進し、女性の活躍の土台を整備することなのです。
 働いている女性からすると、育休取得よりも、夫が週2日、定期的に保育園に迎えに行ってくれるかどうかが大事です。朝、夫が保育園に子どもを送ることは当たり前になりました。しかし、送ることは誰でもできます。迎えに行けなければダメなのです。保育園に送るのは夫、迎えは妻という現状では、女性は一切残業できません。これではやはり女性が活躍することは難しいです。もちろん女性に残業しろという意味ではなく、妻が「自分はこの仕事で明日は残業をしたい」と言った時、夫が「それなら、この日は自分が保育園に迎えに行き、夕食をつくって待っているよ」というような関係ができない限り、女性が活躍できる社会の実現は難しいと思います。ぜひカップルでの子育てを前提にしながら、男性の子育て参画促進に取り組んでいただきたいと思います。

 いろいろとお話しをしましたけれども、働き方改革の目的は、女性だけではなく、多様な人材が活躍できるように働き方を変えるということなのです。そして働き方だけではありません。広い意味では人事管理、キャリア管理も変えるということも大事です。従来の「いつでも残業できる」「いつでも転勤できる、異動できる」という、男性社員を想定した働き方だけでなく、人事制度を変えることができなければ、女性が活躍できる組織を実現できません。

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