第72回 就活ルール見直しについて

大学の就職支援室からみた新卒採用

現時点でまだ2021年以降の動向が決まっていませんが、今回の経団連の指針廃止について思うことを少し述べさせていただきます。

1. 一定のルールは必要では?

完全自由化みたいな報道が出ていますが、もし本当にそれをやると、日本の若者の雇用と大学教育が崩壊すると考えております。一括採用についていろいろ問題もあるとは思いますが、若者の雇用の安定に極めて有効であることは疑いがなく、かつ、それを一定のスケジュールで動かすことで学業に対しても影響を少なくできていた部分があるのは事実だと思います。私たちの世代の大学は行かなくても卒業できる時代でしたが、今はそんな大学は少なくなっております。現在、大学教育にアクティブラーニングの導入が進んでいますが、そうすると、授業を休むと単位が取得できないようになります。実際に私が担当している科目だと、一つの課題について3コマを使ってチームで議論してまとめるような内容で授業を行っているのですが、その中で1コマ休んでしまうと3コマ分の授業に参加できなくなってしまいます。立場が変われば発言が変わってしまう部分があることは自覚していますが、大学で授業を担当する人間の立場で発言すると、10月1日の内定式に呼ぶ出すこともできれば辞めてほしいくらいです。

2. 人材の国際獲得競争に負けるのは協定のせい?

経団連に加盟してない外資に青田買いで優秀な人材を持っていかれるから指針は廃止すべきという論調がありますが、これについては、「NO」でしょう。人材の国際獲得競争に負けるのは、経団連企業の初任給が一律横並びで設定されており、年収ベースだと外資の半分から2/3くらいの金額しか払っていないからでしょう。グローバル展開している外資では本当に優秀な学生に対してであれば、いきなり年俸1,000万円くらいの条件が出ると聞いております。若手人材に対する値付けに圧倒的な差がある今の初任給の仕組みを変更しないと勝てないでしょう。ただ、そのためには賃金制度などの大幅な見直しが必要になるのですが、今度は組合との交渉が必要になります。ところが、この交渉が春闘などでは業界横並びで行われますので、これでは国際競争に対抗できるような条件など出せるはずがありません。しかし、本当に人材の国際獲得競争に対抗するには、この部分を本気で変える議論をしなければならないのではと思っています。何も一律に大幅に給与を底上げするべきだとは思いません。本当に優秀な人材に対して、国際競争力のある賃金を提示できる仕組みを作ればよいだけの話です。そもそもこうした国際獲得競争になるレベルの学生は、大目に見ても新卒就職予定者のうちでも恐らくTOPの1%以下でしょう。こうした人材を迎え入れるための施策や仕組みを、現状の人事制度にアドオンすればよいだけの話だと思っています。

3. 実情に沿った議論を

1でも書きましたが、今の大学生は以前に比べるとかなり勉強するようになっています。授業に出ないと卒業できないようになってきているのですが、企業の採用イベントは相変わらず平日の日中に行われているものがほとんどです。採用でこうした学業を阻害するようなことを平然とやっていながら、一方で大学の教育の質云々に産業界から注文をつけるのはいかがなものでしょうか?インターンシップもいつの間にか大半が採用イベント化してしまっており、平日に学校をさぼって参加しなければなりません。本学のような地方大学だと、首都圏企業のインターンに参加するためにはさらに移動時間とお金もかかります。今回、政府主導でルールについての話合が行われるように聞いていますが、現状のこうした弊害を踏まえた議論を行ってほしいなあと思います。しかし、こうした会議に参加するメンバーもいわゆる有識者といわれる方がほとんどなので、大学関係者だと学長クラスの方々になります。こうした方々が現場の事情に精通しているとはあまり思えなく、ピントのずれた議論で物事が決まってしまうことを懸念しております。
また、学生は大学にずっと籠って勉強するようになっているので学習量は上がっているのですが、一方で社会との接点が少なくなっているようにも感じております(特に本学のキャンパスは山の中なのでかもしれません(笑))。働くことに対するイメージ、仕事へのリアリティ、働く上で求められる学びなどについての情報量が不足している学生が増えているように感じております。そういう意味では、採用イベントでないインターンシップを産官学連携でもっと増やすべきではと思いますが、いかがでしょうか? 具体的には、大学2年の夏休みくらいから産官学共同のプログラムを開発し、全国で受け入れるようにしては良いのではと考えております(これについては本学で試行してみようと考えていますが、、、)。
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著者プロフィール

金沢大学 就職支援室長 山本 均

1962年生、金沢大学法学部卒業後、株式会社ナナオに入社、採用教育に従事、その後株式会社アイオーデータ機器、沖電気工業株式会社にて人事採用業務に従事。2007年10月に帰省し、故郷金沢で人材紹介事業を中心とした人事コンサルティング会社、株式会社北陸人材ネットを設立、代表取締役に就任。2009年4月より金沢大学就職支援室長に就任(兼務)。学生の就職支援業務に従事する傍ら、大学の就業力向上プロジェクトに従事中。

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