周りを巻き込むために(2)_相手のメリットを訴える

他部門を巻き込んで成果を上げている優秀なマネジャーを1人思い浮かべてもらい、各項目がどの程度当てはまるかを5段階で回答してもらいました。その回答結果が、図表3の赤紫色の棒グラフ(上側)です。この棒グラフが長い順に並び替えています。
なぜ部門間の協力が進まないのか
上位に挙がっている項目が巻き込み力のあるマネジャーの特徴だと考えるのは、少し早合点です。普通のマネジャーも頻繁にとっている行動かもしれないからです。
そこで、この棒グラフの下に別の棒グラフ(青色)を重ねます。これは、自部門の力だけで成果を上げている優秀なマネジャーを一人思い浮かべていただき、同じ質問に回答してもらった結果です。図表右側の棒グラフ(薄紫色)はギャップの大きさを表しています。このギャップが大きい項目こそが、巻き込み力のあるマネジャーの特徴的な行動です。

まず、2番目にギャップが大きかった「⑫すべての関係者がWin-Winになる方法を考えている」に着目します。組織の壁は利害の不一致がもとで形成されることが多いことを思い出せば、この項目の重要性が理解できるでしょう。利害が一致していない場合は、自分のメリットや思いをいくら熱く語っても意味がありません。相手にとってのメリットを訴えなければ首を縦に振ってもらえないのです。
とはいうものの、そもそも利害が対立しているのに、相手のメリットを考えることは容易ではありません。そこでヒントを1つだけ紹介します。範囲を広げてみてください。時間的にも空間的にも狭い範囲で考えている限りは、アイデアも限定されてしまいます。
ケースを題材に例を示します。営業部の越本部長は、確実に売上が見込める旧商品のベータに営業リソースを割く方針を立て、堀内マネジャーが開発した新商品アルファには多くのリソースを割こうとしませんでした。短期的にはその方針は正しいかもしれませんが、中期的にはそうともいえません。それであれば「成熟商品のベータはいずれ売上が減少します。将来にわたって売上を維持できるように、いまからアルファという次の商品を一緒に育てましょう」と訴える方法もあるでしょう。また、投資回収のリスクを気にする生産部の坂口部長に対しては、外注工場の活用を提案するのもよいでしょう。生産ラインを無理やり空ける必要もなく、かつリスクも抑えられます。

周りを巻き込むために(3)_信頼残高を増やす

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