周りを巻き込むために(1)_臆せずに一歩踏み出す

この方法は、利害対立を解決できるものではありません。しかし、最も基本的なことですので、お伝えします。
ある研究結果を紹介します。2000年代半ばのことです。組織行動学者のフランシス・フリンらが「他人がどのくらい頼みに応じてくれるか」という調査をするために、学生アルバイトを募集して、大学近くの街角で通行人に実際に頼みごとをしました(注3)。依頼に応じてくれる人の目標人数を決め、その目標に達するために何人に頼む必要があるのかを調べたのです。複数のアルバイトにこの調査をしてもらい、最終的に依頼人数の平均を出しました。
依頼内容と目標人数は以下の3つです。

・5-10分程度の短いアンケートを、5人に回答してもらう。
・3人から携帯電話を借りて、電話をさせてもらう。
・1人に、3ブロック先の体育館まで連れて行ってもらう。
なぜ部門間の協力が進まないのか
果たして目標人数に達するまでに、何人に頼まなければならなかったかでしょうか。結果は図表2の通りでした。思ったよりもはるかに少なかったことでしょう。もちろん、国民性の違いもあります。大学周辺という立地状況も影響したことでしょう。しかし、研究グループの事前予想人数よりも大きく下回っています。このことからいえることは、“人は、相手は頼みに応じてくれないと考える傾向にある”、あるいは“思ったよりも、人は頼みに応じてくれる”ということです。

さらに興味深いことがあります。調査の完遂率です。このような調査の完遂率は、通常は100%です。しかし、アルバイト内容の説明を聞いた後に拒否したり、あるいは何人かの通行人に断られてしまったことで気持ちがなえてしまい、途中で止めてしまう人が続出したといいます。この事実から言えることは、“人は頼むことが嫌いだ”ということです。
では、なぜ頼むのが嫌なのでしょうか。堂々巡りになってしまいますが、相手が頼みに応じてくれないと思い込んでいるからです。しかし、調査結果からも分かるように、人は思ったよりも頼みに応じてくれます。この堂々巡りを断ち切るためには、まずは思い切って頼んでみることが大切です。

さて、ケースの堀内マネジャーは、営業部長や生産部長に対して臆することなく、協力を依頼しに行きました。しかし、上手くいきませんでした。臆せずに頼みにいくことは大切ですが、闇雲に頼んでも上手くいきません。頼み方の工夫が必要です。どのように頼むべきなのかを、別の調査データを使って考えます。

周りを巻き込むために(2)_相手のメリットを訴える

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