“方向づける”ポイント_止める決断、やらない決断

図2をご覧ください。これは、戦略の実行を阻害する要因です。マネジャーと部下の両方に対して定性調査をしました。マネジャーには「あなたはなぜ部下に部門戦略を実行させることができなかったのですか」と質問し、その回答割合が縦軸です。部下に対しては「あなたはなぜ部門戦略を実行できなかったのですか」と質問し、その回答割合は横軸です。やや簡易的な調査ですが、特定企業向けに何度か実施した類似調査でも同じ傾向を示していました。視覚的に最も分かりやすので、この図を使います。
なぜ組織の成果があがらないのか
この中で、マネジャーと部下の両方で上位に挙がっているものがあります。丸で囲まれた「過去の施策を見直さずに、新たな施策が追加される」です。
戦略は何も今期だけにおりてくるものではありません。昨年も一昨年も下りてきています。しかし、過去の戦略に何も手をつけないまま新しい戦略が下ろされることが大きな問題です。本来であれば、効果がないものは止めなければなりません。そうして部下の時間を確保した上で、新たな戦略を展開しなければ、本当にやって欲しいことに時間を使ってもらえません。
もう一つの情報を補足します。別の調査にてマネジメントの現状を分析したところ、“従来からなされている施策や活動の見直しや不要業務の廃止”が最もなされていませんでした。一方で、毎期の部門方針や重点課題は、どのマネジャーも明示していました。つまり、組織の足並みが揃わないのは、“やるべきこと”が示されていないことよりも、“止めること”や“やらないこと”が決められていないことが原因である場合が多いのです。このような中では、やるべきことをさらに強調したところで効果は薄いでしょう。止める決断、やらない決断こそが、組織を方向づけるための効果的な方法なのです。

ケース1の販売会社では、いろいろな施策に手を出したがために力が分散されてしまい、何かの施策に特化した競合他社にことごとく負けてしまっていました。この販売会社のように経営資源が限られている中では、少ない労力で大きなリターンを得られるような施策を見つけ出し、そこにすべての力を集中させなければなりません。マネジャーの奥本がすべきことは、どの施策に集中するのかを明示するとともに、他の施策に取り組ませないことでしょう。
もちろん、こうした決断は容易ではありません。決断力を高める方法は、『人材開発白書2015』をご覧ください。

“力を引き出す”ポイント_四方八方への働きかけ

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