マネジャーは非常に重要な役割です。1人のマネジャーによって、組織のパフォーマンスが大きく改善することもあれば、その逆もあります。ケースに登場した奥本充と篠原和也は、それぞれ個性的なマネジメントをしていました。しかし、結果は上手くいきませんでした。
組織パフォーマンスを高めるために、どのようなマネジメントが求められるのでしょうか。調査結果をもとに考えます。

マネジメントの2つの側面

マネジャーの仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。一般社員とは違って、マネジャーには定型的ではない業務がたくさんあります。それゆえ、改めて聞かれると戸惑うことでしょう。細かく整理しようとすればきりがありませんが、大別するとどうなるでしょうか。2,170 人(27社)に対する定量調査データを因子分析という統計手法を使って分析したところ、以下の2つの側面が現れました。

●方向づける
●力を引き出す

“方向づける”とは、部門戦略を策定することで方向を明示することです。組織のベクトルを合わせることが目的です。そして、この側面でのマネジメントの対象は、戦略や課題です。一方の“力を引き出す”とは、部下一人ひとりに働きかけたり、部下同士や組織間の連携を促すことです。個人や組織の力を最大化することが目的です。そして、この側面でのマネジメントの対象は、部下や組織です。

ちなみに、この分類は新しい発見というわけではありません。神戸大学の金井壽宏先生によれば、リーダーシップやマネジメント行動を因子分析すると、必ずこのような2つの側面が表れるといいます。例を挙げると、日本を代表するリーダーシップ論の大家、三隅二不二氏が提唱したPM理論では「課題達成(Performance)」と「集団維持(Maintenance)」で説明され、オハイオ州立大学の研究では「仕事の枠組み作り」と「配慮・思いやり」という2軸が導き出されています(注1)。俗にいわれる「IQ」と「EQ」、「理」と「情」という区分もこれに近いでしょう。

2つの側面の意味とマネジャーの利き手

この2つでは、どちらのマネジメントスタイルが望ましいのでしょうか。図1で考えてみましょう。
なぜ組織の成果があがらないのか
もし、マネジャーが“方向づける”しかやらなければ、組織はどうなってしまうでしょうか。右下の象限です。ここの組織では、ほとんどの部下は部門戦略を理解し、自分がやるべきことも理解しています。組織は整然としているのですが、どこか活気がない状態です。もうひと頑張りしようという部下が現れず、目標とする成果になかなか届きません。ケース2の篠原和也のマネジメントが、これに近いでしょう。
反対に、マネジャーが“力を引き出す”しかやらなければ、組織はどうなってしまうでしょうか。左上の象限です。ここの組織では、ほとんどの部下は一生懸命頑張っています。自分の時間を犠牲にして、同僚の手助けをすることも少なくありません。しかし、組織のベクトルが揃っていないため、結果として無駄な努力が多くなり、個々人の努力が成果に結び付きません。ケース1の奥本充のマネジメントが、これに近いでしょう。
ここまでの説明で分かるように、成果を上げるためにはこの2つの側面のどちらも欠くことができません。とはいうものの、両方で秀でることは簡単ではありません。なぜならば、マネジャーには利き手があるからである。
やや専門的な話になりますが、因子分析で2つの側面が現れたということは、どちらかに偏重する傾向が少なからずあることを示しています。つまり、鋭い洞察によって戦略を提示することが得意なマネジャーもいれば、人間味あふれる対応で部下を鼓舞し、力を引き出すことが得意なマネジャーもいるのです。
苦手領域があれば、改善すればよいだけです。そのヒントになるように、多くのマネジャーにとって優先順位が高いと思われるものに絞って、改善ポイントを説明します。

“方向づける”ポイント_止める決断、やらない決断

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