なぜ役員まで店舗で働くのか?

ニトリには「配転教育」という教育があります。配転とは、配置転換のことです。なぜこのようなことを行うのかというと、複数の部署で経験を積んでもらって、何ができるか、気付きを得てもらうためです。

ニトリでは、店舗現場での経験を何よりも重視しています。本部で施策を作っても、お客様が受け入れてくれるか実際に分かるのは店舗だけです。POSデータ(POS:Point of Sales=販売時点)で、売れる理由や実績は分かりますが、売れない理由は店舗でしか分かりません。お客様の要望も店舗でしか分かりません。ですので、本部勤務は通常5、6年で、店舗現場に戻ります。営業企画、通販、物流などの部門による例外なしに、一定期間で店舗に戻っていきます。そこで、お客様が今何を求めているのかを考えるのです。

この人事異動を拒否する社員はいません。なぜなら、こんな仕事がしたい、経験がしたいなどの要望を社員に申告させ、そのすべてを人事が把握し、きちんとマッチングさせているからです。カウンセリングも行います。人によっては家族の事情で人事異動をかけるのが気の毒なときもありますので、その点も考慮します。データとして、家族情報も検討事項に加えています。

異動は、役職による例外もありません。役員に対しても、店舗でお客様対応にあたる人事異動も出ます。中途入社の社員は驚くこともありますが、3~6カ月ほど店舗にいると、様々な気付きを得ることができます。そして本部に戻り、また数年後に再び店舗に戻るときにはむしろ「待ってました」といわんばかりになります。現場の知識が足りなくなり、自分の施策が正しいのかどうかだんだん分からなくなるので、それを店舗で確かめられるから、というわけです。

この配転教育を含めた教育制度と評価制度を今、海外のニトリにも展開しています。これからさらにグローバル化を加速させるにあたって、共通の情報をどの国でも得られるようにするためです。

新入社員全員をアメリカに

人が技術をもつことで会社は継承していけるので、教育にはお金を使わなければなりません。知識教育(OFF-JT)として、教育費は、1人あたり年間数十万を使っています。その大半が、アメリカをはじめとした海外視察とセミナーです。ニトリの原点は、会長の似鳥が当時のアメリカに感動したことであると、さきほど述べましたが、その感動を全社員と共有するために、このような視察やセミナーを行っています。入社2年目で、全員が無条件で参加できます。これによって共通認識を持ち、共に施策を考えられるようになります。

その他、社内の自己育成として、社内eラーニング(業務知識、商品説明の動画などで自分が好きな時に学べ、商品知識を常にアップデートできる)、語学、教育資格取得一時金、教育マイレージ、社外通信講座、NCCS(ニトリカラーコーディネートスクール)などを行っています。

ニトリの働き方改革とグローバル教育

ニトリのグローバル人財育成
現在、働き方改革として、在宅勤務制度の拡大、勤務間インターバル制度(シフト設計時に業務終了から翌日業務開始まで10時間を確保するシステム)、社内人財バンク制度(地方現場で働く従業員とITを活用し本部業務とのマッチングを実施)などを行っています。会社は個人の能力を最大限に活用し、社員はやりたい仕事を実現する、というように、会社と社員がwin-winの関係になることを目指しています。

グローバル教育、グローバルな人財づくりという面では、実際にこれまで日本で運用してきた配転教育を中国や台湾などへ展開し、現地で運用を行っています。日本で行っていることを基本的に踏襲したうえで、現地の慣習、習慣を受け入れるためには、システムから共通の情報が吐き出されなくてはなりません。2014年にワークスのCOMPANYを導入したのは、グローバル展開を見据え、多言語で共通情報を収集し一元管理できるシステムを求めたからです。

配転教育に対する海外の現地社員の反応は前向きで、自分の職種・スペシャリティを活かしたいという志向が高いです。今では台湾27店舗中26店舗の店長を、配転教育によって日本の店長と同等以上の技術を得た台湾人社員が務めており、国外でも“多数精鋭主義” が形になりつつあります。外国だから日本のやり方が通じないということは確かにありますが、日本のやり方がまるっきり通じないわけではないと実感しています。

ニトリのこれからのグローバル組織づくりは

今後のグローバル展開において、グローバルな人財づくりは、避けて通れません。圧倒的に多い日本人社員に対しては、絶対に英語と中国語を学びなさい、そのための環境は用意しますといったことを伝えています。一方で、外国籍社員にも日本語を理解してほしいと思っています。創業者である似鳥の生の言葉を聞き取り、理解してほしいからです。そのような語学教育を取り入れながら、いかに自分の言葉で話せるようになるかも目指してもらっています。

グローバル組織体制づくりには、ニトリの企業風土の浸透と定着が大切だと考えています。そのために、似鳥にはニトリのDNAを伝え続けてくださいとお願いしています。会社を大きくすることがニトリの目的ではありません。「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というロマンを実現させることが目的です。そのためには、まだまだスペシャリストが足りていないと認識しており、これからも人財づくりに取り組んでいきたいと考えています。
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