学生側の調査データから見た内定辞退

内定辞退を学生の側からも見てみましょう。10月26日発表の就職みらい研究所(株式会社リクルートキャリア)の「就職プロセス調査(2018年卒)」によれば、この経団連の調査が実施されていた8月1日現在で、複数企業から内定を取得した学生の割合は64.2%で、昨年の同時期よりもさらに3.3ポイント増えています[図表4]。平均内定社数は2.39社で、昨年の2.40社とほぼ同じです。学生は何社から内定を取得しようが、入社できるのは1社だけであり、残りの企業には内定辞退をすることになります。8月1日現在の内定率も昨年の79.3%から4.9ポイント多い84.2%になっていることを考えれば、内定辞退の総数は昨年よりも約5%増えていることになります。企業側で内定辞退が増えたと感じているのは当然のことです。
第81回 学生の志望度が下がる最大のきっかけは?ほか、「2017 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」
さらに10月1日現在の調査結果で比較してみましょう。内定率は昨年の90.6%に対して92.1%と1.5ポイントの差に縮まっていますが、複数内定率は昨年の61.7%よりも3.4ポイント高い65.1%です。驚くべきは、平均内定社数です。昨年は、8月1日現在の2.40社から2.33社へと減少しています。これは、8月1日現在で内定を取得していた学生が新たな内定をあまり取得していない、あるいは8月2日以降に初めて内定を取得した学生の平均内定社数が2.40社を大きく下回っていたことを意味します。これに対して、今年の結果を見ると、8月1日現在の2.39社から2.50社へとさらに増えているのです。これは、8月2日以降に初めて内定を取得した学生の平均内定社数も2.39社を上回るとともに、8月1日現在で内定を取得していた学生が就職活動を継続し、さらに内定社数を増やしたものと推測されます。10月1日現在での内定率こそ1.5ポイントの差しかありませんが、内定辞退の総数は昨年の同時期よりも約15%も増加していることになります。8月1日以降10月1日までに増えた内定数は、昨年よりも約40%も多くなっていますので、8月1日以降にもかなりの内定辞退が発生していたはずです。それを考えると、先の経団連の採用計画の達成状況はさらに悪化している可能性もあり得ます。

学生の志望度が下がる最大のきっかけは?

内定辞退だけでなく、選考途中での辞退も含め、辞退に至るためには入社志望度の低下(相対的低下を含む)が必ずあります。HR総研では、楽天「みん就」と共同で実施した「2018年新卒就職活動動向調査」の中で、入社を志望していたにもかかわらず志望度が下がるきっかけは何かを学生に聞いてみたところ、フリーテキストでの回答方式にもかかわらず、1432名の学生が回答をしてくれました。ここからは、その結果を報告します。
最も多いのは「社員の雰囲気・態度」で、実に350名以上の学生が挙げています。具体的なコメントを見てみましょう。

・横柄な態度の社員さんがいたとき(旧帝大クラス)
・社員の不誠実な態度(旧帝大クラス)
・自社を上げるのではなく周りを下げるように話すこと(旧帝大クラス)
・自社への自信のなさ(旧帝大クラス)
・社員の覇気がない(早慶クラス)
・説明会で社員同士が内輪で盛り上がっている(早慶クラス)
・社員が無愛想もしくは無駄にうるさい(上位国公立大)
・社員が時間にルーズ(上位国公立大)
・社員が上から目線だったとき(上位国公立大)
・受付や採用担当の方以外の社員さんが挨拶をしてくれない(上位国公立大)
・志の低い社員に会ったこと(上位私立大)
・社員が疲れている。社員に自分の意見がない(上位私立大)
・社員が自分の言葉で話さず、会社のマニュアルに従っているとき(上位私立大)
・上司の顔ばかりうかがっている(上位私立大)
・社員がボソッと会社の愚痴をこぼしていたとき(その他国公立大)
・社員さんのやる気のなさ(中堅私立大)
・社員の仕事に対するモチベーションの低さが見られたとき(中堅私立大)

どんなに志望度の高い企業であっても、説明会や座談会での社員の雰囲気や態度が大きく志望度に影響するようです。説明会や座談会等で登壇する社員だけでなく、イベント運営に携わるなど学生との接点を持つ社員の人選には細心の注意を払うとともに、採用活動における学生への接し方についてじっくり研修を実施するなど、メールや文書配布だけで終わらせない対応が求められます。

やはり面接官の影響は大きい

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