人事も総務もトップも、一体となることが必要

“働き方改革”の向かう先
松本氏:遅野井さんは、今の日本企業全体の働き方改革をどう思われますか?

遅野井氏:働き方改革として、何をどう取り組んでいいのか分からないという相談をされることが多いです。これはまさに手段と目的の取り違えが起きていると言えます。今の働き方で10年20年発展できる見込みがついていれば、わざわざ働き方を変える必要はありません。しかし、企業や組織として実現したい姿があって、そこへ働き方を変えることでアプローチする。つまり働き方改革は手段であるはずです。また、働き方改革実現のためには総務部門、人事部門、情報システム部門がしっかり連携を取らないとうまくいきません。会社として実現したい姿を共有し、経営と現場がしっかり結びついていることが大切です。外資系企業では、総務、人事、ITが社内改革を引っ張っています。一方日本の場合、これらの部門は裏方に回りがちです。働き改革という意味での社内改革は、トップと全社員が一丸となって、取り組むことが大切です。

松本氏:間接部門の組織における役割、定義が大事になってくるということですね。宮下さん、日本ユニシスではその点いかがでしょうか?

宮下氏:当社の社長や専務はそれぞれ営業部門とシステム部門出身で、残業するのが当たり前という働き方をしていました。ですが、今はそのような上の人たちが、自ら残業を減らそうと周りに呼び掛けています。経営陣からメッセージを出して、人事はルールを作り、そのうえで総務や情報システムとも連携し、会社全体で取り組んでいこうとしています。

グローバル展開における働き方改革

“働き方改革”の向かう先
松本氏:藤江さんにお伺いしたいのですが、海外から見た日本の働き方、あるいは海外を意識したときの味の素での働き方はどう捉えられていますか?

藤江氏:以前は、海外の社員で、日本で働きたいという人は限られていました。長時間勤務などのイメージも背景にあったからだと思います。味の素は今、グローバル企業のトップ10に入るために、性別、国籍、価値観にかかわらず、多様な人材がどうやったら活躍できるのだろうかと考え、経営戦略の一環としてダイバーシティ推進と働き方改革の両者の連携を密に進めています。こうして、多様な働き方を受け入れることこそが成果につながると考えています。
トップがリーダーシップを発揮し、様々な意見を織り交ぜながら、集合知で意志決定を行っていくことで、新たな考え方や発想が生まれてくる、これはまさに多様性=ダイバーシティにおける最大のメリットです。

働き方改革、まず始めるべきはコレ

“働き方改革”の向かう先
松本氏:目的やビジョンがあっての働き方改革ですが、とはいえ行動から入ることで意識が変わるというお話もありました。ゴールを見据えたときに、まず1つだけ始めるならコレ、というものはありますか?

藤江氏:それは始終業時間を決め、行動を変えることです。「意識が変わると行動が変わる」という言葉がよく使われますが、働き方改革においては「行動が変わると意識が変わる」という発想も重要だと感じます。そうすると、自ずと課題が職場から噴出すると思います。その課題は、自分たちがありたい姿とのギャップであると思います。その課題が解決できればありたい姿に近づいていくと思います。

遅野井氏:まず変えていくべきもの、それは会議です。会議は新入社員から役員までいろんな人が実施するので、会議が変われば、あらゆる層が変革を即座に実感できます。だからこそ、最初の足がかりとして適しています。

宮下氏:「社員たちが十分な能力を発揮できる環境を提供する」というのが会社のビジョンです。ですから、私の人事部長としての1つの目標は、ルールがなくても、個人が自律的にパフォーマンスを取れる環境をつくり、行動することです。社員全員に、働き方改革における会社としてのメッセージを伝え、理解してもらうためには、社員としっかりコミュニケーションをとることが重要だと思っています。
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