ランスタッドは2019年4月17日、同社の研究機関であるランスタッド・リサーチインスティテュートが実施した「将来働きたい地域に関する調査」の結果のうち、特に女性に関係するものを発表した。調査の結果、女性は地方よりも首都圏の方が活躍しやすいと考えているということと、地方のデメリットが解消できれば地方勤務を望む女性が多く存在することが分かった。
女性が活躍する機会が多いのは首都圏、可能ならば地方で働きたいという女性も

調査はWebアンケートの形式で実施した。調査期間は2019年2月15日から2月19日。調査対象は、日本全国の20歳から69歳までの一般企業に勤務する正社員と契約社員。公務員と団体職員も対象とした。

まず、首都圏と首都圏以外に分けて、それぞれで働き、生活することについてのメリットとデメリットについて聞いている。その結果が下図。グラフは4つあり、上の2つがメリット、下の2つはデメリットを集計したもの。また、いずれも左が首都圏、右は首都圏以外となっている。

首都圏のメリットとして「交通の利便性が高い」(61%)、「何をするにも便利」(51.9%)、「給与が高い」(47.9%)といった項目が上位3項目として挙がり、デメリットとしては「通勤ラッシュがある」(68.3%)、「住宅費、食費などの生活にかかる費用が高い」(63.6%)、「人が多い(何をするにも混む)」(60%)が上位3項目となった。

首都圏以外のメリットとしては、「通勤のストレスが少ない(満員電車がない、通勤時間が短い)」(50.9%)、「住宅費、食費など生活にかかる費用が少ない」(49.6%)、「自然が近くにある」(47.3%)といった項目が上位に挙がった。

デメリットとしては、「首都圏に比べて給与が低い」(50.8%)、「就職の際に、職業、職種、業務内容の選択肢が少ない」(39%)、「通勤の利便性が低い(車社会、電車やバスの運行が少ない、など)」(38.1%)の3項目が上位に並んだ。

女性の活躍という視点でこの結果を見ると、首都圏のメリットとして「女性が活躍しやすい」という回答が16.4%に達している。一方で、首都圏以外のメリットとして「女性が活躍しやすい」という回答は3.9%にとどまった。また、首都圏のデメリットとして「女性が活躍しづらい」という回答は2.9%となったが、首都圏以外のデメリットとして「女性が活躍しづらい」を挙げた回答は9.3%に達している。地方よりも首都圏の方が、女性が活躍する環境が整っていると言えそうだ。
女性が活躍する機会が多いのは首都圏、可能ならば地方で働きたいという女性も
そして、首都圏で働き、生活することについてのメリットと、首都圏以外で働き、生活することについてのデメリットを尋ねた結果を性別ごとに集計した(下図参照)。その結果、「就職の際に職業、業種、業務内容の選択肢が多い」(男性36.2%、女性48%)、「セミナーや講演が多く、自己研鑽のチャンスがある」(男性18%、女性28.3%)、「キャリアアップのチャンスがある」(男性17.1%、女性27.4%)の3項目で、男性に比べて女性がメリットだと回答する割合が高いことが分かった。

首都圏以外のデメリットを見てみると、「首都圏に比べて給与が低い」(男性45%、女性56.7%)、「就職の際に職業、業種、業務内容の選択肢が少ない」(男性33%、女性45%)、「自己研鑽のためのセミナーや講演が少ない」(男性15.7%、女性26.1%)の3項目で、男性に比べて女性がデメリットであると回答する割合が高かった。

首都圏のメリット、首都圏以外のデメリットとして、男性の回答が少なく、女性の回答が多かった先述の項目が、女性に地方では活躍しづらいと感じさせている理由だと推測できる。
女性が活躍する機会が多いのは首都圏、可能ならば地方で働きたいという女性も
また、「将来、地方で勤務するつもりはない」と回答している首都圏勤務の女性に、地方のデメリットが解消されれば、地方勤務に向けた意向が変化するかと聞いたところ、2.9%が「非常にそう思う」、27.1%が「ややそう思う」と回答した、合計30%が、地方のデメリットがなければ、地方勤務も選択肢に入れるということだ。

一方、「将来、首都圏で勤務するつもりはない」と回答している地方勤務の女性にも、首都圏のデメリットが解消されれば首都圏勤務に向けた意向が変化するかと聞いた。その結果、4.2%が「非常にそう思う」、17%が「ややそう思う」と回答している。合計値は21.2%にとどまり、可能ならば地方で働きたいと考える女性の方が多いという結果になった。
女性が活躍する機会が多いのは首都圏、可能ならば地方で働きたいという女性も
ランスタッド・リサーチインスティテュート所長の中山悟朗氏はこの結果について、「地方では『職業の選択肢』、『自己研鑽の機会』が少なく、それが『給与の低さ』、『キャリア形成機会のなさ』ひいては、女性が活躍できないイメージを作り出している可能性が高いと分かった。自治体や地方の企業が、こうした点の改善に努めれば、地元に人材を引き止めると同時に、新しい人材を首都圏から流入させることも出来そうだ。実態と異なるのであれば、イメージの払拭を図るべきだろう」と語っている。

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