「地方創生」が叫ばれる現代、都市部への一極集中からの脱却とともに、学生は地元で働くことについてどう思っているのか?その点について、リクルートキャリアの研究機関・就職みらい研究所が調査を行っている。
「地元で働くことについての意向調査」、一都三県に居住する学生では、6割近くが地元に戻ることを不安視

こちらは2018年12月1日時点で民間企業への就職が確定している大学生を対象にしたもので、「地元で働くことについての意向調査」という題目で結果をまとめている。
「地元で働くことについての意向調査」、一都三県に居住する学生では、6割近くが地元に戻ることを不安視
「地元で働くことについての意向調査」、一都三県に居住する学生では、6割近くが地元に戻ることを不安視
以下、「地元で働きたい理由」「地元で働くことへの不安」について、学生のコメントが紹介されているので、興味深いものを抜粋する。なお、対象は帰省先が一都三県以外の学生となる。

■地元で働きたいか?

●一都三県以外の地元に住む学生(※n=506)
<働きたい67.0%><どちらとも言えない21.4%><働きたくない11.6%>

●一都三県に住むも、地元は別の学生(※n=72)
<働きたい42.1%><どちらとも言えない30.0%><働きたくない27.8%>

・地方出身なので。東京にいる必要性をそれほど感じないから
・慣れ親しんだ土地で働くことに憧れがあるから(居住地:神奈川県、地元:茨城県、男性)
・東京とは違う魅力があり、課題も多いが可能性も十分あるから(居住地:東京都、地元:福岡県、男性)
・地方でしかできない仕事があるだろうから(居住地:東京都、地元:長崎県、女性)
・新天地で何もかも0からスタートさせることに楽しみがあるから(居住地:埼玉県、地元:愛知県、女性)
・家族や友人がいることで安心できる(居住地:埼玉県、地元:山形県、女性)

一都三県以外に住み、地元の大学に通っている場合は、およそ7割が地元での就職に前向き。一方、地元を離れて一都三県に居住する学生では、約4割が地元での就職に前向きだということが分かった。

■地元で働くことに不安はあるか?

●一都三県以外の地元に住む学生(※n=506)
<不安はない60.6%><どちらとも言えない20.6%><不安がある18.8%>

●一都三県に住むも、地元は別の学生(※n=72)
<不安はない32.6%><どちらとも言えない10.6%><不安がある56.8%>

・職が少なく、人も少ないから(居住地:東京都、地元:秋田県、男性)
・待遇面がいい企業ばかりではないから(居住地:神奈川県、地元:茨城県、男性)
・経済、ビジネス面で不便な点があることは確かだから(居住地:東京都、地元:福岡県、男性)
・生活の利便性の面で不安があるから(居住地:東京都、地元:長崎県、女性)
・頼れる人が少ないから(居住地:埼玉県、地元:愛知県、女性)
・志望業種がないから(居住地:埼玉県、地元:山形県、女性)

地元の大学に通っている場合は、地元での就職に不安を抱くのは2割だが、地元を離れて一都三県に居住する学生では、6割近くが不安に感じていることが分かった。

また、就職みらい研究所所長・増本全氏は、2018年に同所が実施した「働きたい組織の特徴(2019年)」の調査結果から「地元志向者」と「Uターン志向者」の就職観の違いを次のように分析している。

●地元志向者

給与や待遇のよさはそれほど求めないが、給与の変化がなく、安定的に収入が得られることを望む傾向がある。

●Uターン志向者

地元志向者と比べ、若干、大企業や安定を志向するも、給与や待遇は特別多くなくてもよいとする傾向がある。また、これまでの経験を活かしたいという意向が強いのも特徴。


調査結果を見ると、学生は地元で働くこと、Uターン就活に興味がないわけではなく、さまざまな不安を抱えていることがわかった。待遇面ややりがいを感じる志望業種など、こうした不安要素を先回りして払拭し、学生とのコミュニケーションを密にすることが重要なのかもしれない。

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