株式会社パーソル総合研究所と中央大学は2018年10月、共同研究として取り組んできた「労働市場の未来推計2030」の成果を発表した。この推計では、2030年までの人手不足数や人手不足の対策に関する推計値などを算出している。
2030年、推計644万人の人手不足に ―― 最も不足する地域、職種は

共同研究の趣旨として、パーソル総合研究所は「人事領域のシンクタンクとしての役割を果たすため、社会や企業、個人が早期に適切な打ち手を講じることができるよう、2016年に「労働市場の未来推計2025」を発表しています。今回の「労働市場の未来推計2030」は、前回の5年先となる2030年を推計対象にするとともに、推計方法を高度化したものです。パーソル総合研究所と中央大学経済学部教授・阿部正浩が共同研究を行うことにより、推計結果の精度を上げることを目指しました」としている。

人手不足がより一層深刻化する中、今後の市場はどうなるのだろうか。

■2030年までの人手不足への推移

・2017年(実績)…121万人
・2010年(予測)…384万人
・2025年(予測)…505万人
・2030年(予測)…644万人

2030年の人手不足の推計値は644万人。20年の人手不足は384万人、25年は505万人と深刻化が進む見込み。また、産業別に見ると、人手不足が最も生じるのはサービス業で400万人。次いで医療・福祉の187万人。職業別に見ると、人手不足が最も生じるのは専門的・技術的職業従事者で212万人。

■【都道府県別】2030年にどのくらいの人手不足となるか?(供給 ― 需要)
(20万人以上不足する地域のみ記載)

・東京…△133万人
・神奈川…△54万人
・愛知…△36万人
・千葉…△36万人
・埼玉…△28万人
・静岡…△24万人

都道府県別にみると、人手不足が最も生じるのは東京で133万人。

これを受けて、パーソル総合研究所は下記の4つの対策が有効となりうるとしている。

<対策1:働く女性を増やす>
25~29歳の労働力率88.0%が45~49歳まで継続すると仮定した場合、「102万人」の労働力が確保できる。なお、2030年時点で働く女性を102万人増やすためには、未就学児童の保育の受け皿として、116.2万人分追加する必要がある。

<対策2:働くシニアを増やす>
男性は64歳の労働力率80.9%が69歳まで続くと仮定し、女性は60~69歳のうち70%の人が働くと仮定し、試算すると、「163万人」の労働力が確保できる。

<対策3:働く外国人を増やす>
2018年6月の経済財政運営の基本方針(2025年までに新たな在留資格の創設で50万人超の就業を目指す)をもとに、既存在留資格での外国人就労者は横ばいという前提で試算すると、「81万人」の労働力が確保できる。

<対策4:生産性を上げる>
OECDが2016年に発表した調査結果によれば、自動化可能性が70%を超える労働者の割合は日本において7%。自動化が2030年まで十分進むと仮定すると4.9%の工数が削減でき、「298万人」分の労働需要をカバーすることは可能と考える。

また、提言として下記のように述べている。

●「644万人」は、実質賃金が時給換算で今よりも240円上がっている状態における不足人数である。もし賃金の上昇がここまで到達しないと、不足量はさらに大きくなるため、国や企業はこれまで以上に賃上げの努力をすべきである。
●この推計では考慮できていないが、実際には市場が求めるスキルと労働者が持つスキルの間に乖離が発生する可能性が高いため、市場に求められるスキルを労働者が継続的な能力開発によって身につけるべきであり、国や企業も適切にそれを支援すべきである。
●働くシニアを増やすにあたり、女性の労働力率を上げられるかどうかが重要なポイントとなるが、今後予想される「介護を必要とする人の増加」が、女性の労働参加を妨げる可能性がある。国や企業は、介護をしながら働くことが可能な社会を作っていくべきである。
●外国人労働者の増加は平均賃金を大きく低下させる懸念がある。働く場所として外国人に選ばれる国となるべく、並行して労働条件の改善を行っていくべきである。

今後の人手不足が確実となる日本では、もはやこれまでの働き方を続けていては、成長がなりゆかない。各企業単位でも、新たな働き方を探っていく必要があるだろう。

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