2018年3月、株式会社マイナビは、「マイナビ 大学生低学年のキャリア意識調査」の結果を発表した。同調査は、2018年2月14日~2月21日、大学1、2年生の男女1,059名を対象に実施されたもの。調査結果からは、大学生低学年のキャリア観に影響を与えているものや、学生が求める企業説明会・インターンシップの在り方などが浮かび上がった。同結果を見ながら、今後の採用活動の在り方について考える。
大学生低学年のキャリア意識調査 8割がインターンシップ経験を希望

大学内での情報が低学年時のキャリア観に影響。就活解禁後は学内企業セミナーを重視

調査によると、中学・高校で、仕事について考えるような授業や特別教室、イベントの経験の有無を聞くと、回答者の73.8%が「何らかの経験をしている」と回答。一方で、「高校生のとき、特にやりたい仕事はなかった」と回答している割合は、約4割(38.2%)となっている。イベント等で仕事について考える機会を持ちつつも、大学入学時点では多くの学生が、まだ具体的なイメージを持てていないことがわかった。

これに対して、大学1、2年生の現状を聞いたところ、74.7%が「自分のやりたい仕事について何らかのイメージを持っている」と回答している。また、仕事を考えるとき影響を受けているものとして、「大学職員・教授の話(授業含む)」が37.7%で1位。高校生までは仕事に対するイメージを持てていなかった学生たちが、大学における身近な大人の話をきっかけに、キャリア観を形成しつつあることがわかる。

加えて、大学が実施するキャリアに関するガイダンスや、学内企業セミナーも重視されている。同調査によると、大学でキャリアに関する授業やガイダンスを受けた経験がある学生は47.0%で半数を少し下回ったが、今後1、2年生向けのガイダンスなどが実施される場合には、「参加したい」「参加しても良い」と回答した学生は81.8%に達した。

この傾向は、大学生高学年においても顕著だ。2017年、HR総研が 2018年卒の大学生・大学院生に対して行った調査によると、8割の学生が、少なくとも1回は学内企業セミナーに参加している。また、学内企業セミナーで話を聞いた企業へプレエントリーを行った学生も、8割を超えた。さらに、就職情報会社主催の合同企業セミナーと学内企業セミナーのどちらを重視するかを尋ねた質問では、文系の49%、理系の55%が、学内企業セミナーを重視すると回答している。学内企業セミナーは、学生にとっても企業にとっても、学歴によるミスマッチを避けられるメリットがある。学生が大学内の情報に信頼を置いていることからも、ぜひとも活用していきたいところだろう。

参考:
HR総研:2018年卒学生の就職活動動向調査 結果報告【2】
8割の学生が学内企業セミナーを積極的に活用
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=171

8割がインターンシップ経験を希望、社員に混じっての業務体験にニーズ

マイナビによる冒頭の調査では、仕事について考えるうえで経験したい項目についても質問している。同質問に対する回答では、「興味のある職種・業界でのインターンシップ」(44.5%)、「興味のある職種・業界でのアルバイト・ボランティア」(40.9%)、「興味のある職種・業界の職場見学・会社見学」(38.7%)が上位を占めた。なかでも注目を集めているのがインターンシップ。回答者のうち、現時点ですでにインターンシップに参加したことがある学生の割合は16.8%にとどまったが、「今後参加したい、やってみたい」と回答した学生は、全体の81.3%と、8割を超えている。

参加したい内容としては、「社員に混じっての『業務体験』」が68.1%で1位。「会社の中や工場の内部を見て回る『会社見学』」(45.1%)や、「社員に仕事の説明をしてもらう『講義』」(44.3%)を大きく引き離した。現場で就業体験をし、仕事に対するイメージをより明確にしたいという思いが表れているようである。

ただし、インターンシップの実態を見ると、必ずしも学生のニーズに応えられているわけではない。HR総研が2017年に行った「インターンシップ採用に関する調査」によると、特に中堅・中小企業のウィンターインターンシップにおいて、学生のニーズとは裏腹に、就業体験のないセミナー的なインターンシップが多くなっていることがわかる。

中堅・中小企業では、8~9月のサマーインターンシップよりも、1~2月のウィンターインターンシップを行っている割合の方が多い。サマーインターンシップとウィンターインターンシップの実施企業数を比較してみると、大企業ではほとんど変化が見られないが、中堅企業ではサマー37%、ウィンター54%、中小企業でもサマー25%、ウィンター32%と、明らかな差が見られる。

ウィンターインターンシップは、サマーインターンシップより、実施日数が少ない傾向にあるのが特徴だ。サマーインターンシップでは、実施期間「1日」(25%)よりも「1週間(5日)」(29%)の方が多く、「2週間」(23%)も「1日」に次いで多くなっている。これに対しウィンターインターンシップでは、「1週間(5日)」が14%にとどまる一方、「1日」は48%、「半日」も33%だ。

実施日数の長短に従って、インターンシップの内容も変わってくる。サマーインターンシップでは、5割の企業で「実務体験」が実施されているのに対し、ウィンターインターンシップではそれが3割にとどまる。

インターンシップは、知名度の低い企業においても、その内容によっては多くの学生を呼び込めるチャンスだと言える。大企業に負けずに優秀な人材を確保していきたい中堅・中小企業こそ、就業体験を積極的に実施し、学生を引きつけるインターンシップを実施したいところだ。

参考:
「インターンシップ採用に関する調査」結果報告
インターンシップ採用解禁には賛成するも、「指針」廃止は反対
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=162

議論されるインターンシップの在り方

近年では、政府や経団連の間で、インターンシップ採用解禁についての議論も進められている。現時点における経団連の「採用選考に関する指針」の手引きでは、インターンシップは学生に対して就業体験の機会を提供することを目的とし、採用活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある、とされているが、この前提がくつがえる可能性が出てきているということだ。

先述した「インターンシップ採用に関する調査」によると、大企業の41%、中堅企業の37%、中小企業の52%が、インターンシップ採用に「賛成」と回答している。いずれの規模の企業においても「どちらとも言えない」が半数近くに及ぶが、「反対」は1割前後にとどまった。

賛成の理由としては、「知名度が高くない企業、あるいは職務内容がイメージしにくい職務を学生に知ってもらう良い機会と考えるため」「就業体験は学生にとって企業と自分が合うかを判断する場とも言えるが、企業側としても学生を判断できるのでミスマッチが防げると思うから」といったコメントが寄せられている。インターンシップ採用が解禁されれば、インターンシップが学生だけでなく、企業にとっても非常にメリットのあるものになるだろう。

学生がキャリア形成や就職活動において重視する、学内企業セミナーとインターンシップ。特に、学生が低学年時から注目しているインターンシップは、多くの企業において改善の余地があるものだ。企業は、リアルな就業体験を求める学生のニーズをくみ取りながら、採用と結び付けるなど、自社にとってもメリットのあるインターンシップの在り方を考えていく必要があるだろう。

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