従業員のメンタルヘルスやモチベーションを管理する「メンタリティマネジメント」に注目が集まっている。従来の対症療法的・受動的なメンタルヘルス対策ではなく、積極的に従業員のストレスをコントロールしていく点がポイントだ。
「働き方改革」や「健康経営」が謳われるようになって以降、特にその傾向は強まっており、企業における従業員のメンタルヘルスケア・モチベーション対策は急務である。
「働き方改革」「健康経営」で重要性が増すモチベーション管理・メンタリティマネジメント

重要度を増すメンタリティマネジメント

従業員のメンタルヘルスにかかわる問題のひとつとして、メンタル不調を原因とした休職者増加による人員不足が深刻化している現状がある。労働政策研究・研修機構(JILPT)が平成25年に発表した「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活の両立支援に関する調査」によると、有効回答があった5,904件のうち、休職者がいる企業の割合は52.0%にものぼり、さらに、過去3 年間における休職者人数の平均値は2.88 人だった。特に従業員の少ない中小企業においては、従業員の休職が大きな痛手となりうるだろう。

また、ストレスやメンタル不調により、従業員のモチベーションが低下し、生産性が低下するという問題もある。ストレスと生産性については関連があることがいくつかの研究で発表されており(Riedel 2009、Boles 2004など)、高ストレスの人は低ストレスの人に比べて、生産性が低下するというデータも出ている。

さらに、メンタルヘルスに対する誤解や偏見の問題もある。目に見えない疾病であることから、病気休暇や休職に対する周囲の理解が得られなかったり、休職していた従業員が復職しづらかったりといった例が後を絶たない。

企業においては、メンタルヘルスに関する正しい理解を促すことを含め、積極的なメンタルヘルスケア対策、モチベーション対策がますます重要になってくるだろう。

6割以上が「職場でのメンタルヘルス対策に関わる課題」あり、休職者の増加や従業員のモチベーション低下が悩み

従業員のメンタルヘルスケアの重要性を理解しながらも、悩みを抱えている人事担当者も多いことだろう。人財サービスを展開するアデコ株式会社が2017年9月に発表した、全国のストレスチェック責任者300名を対象にした調査結果によると、「職場でのメンタルヘルス対策に関わる課題・悩みはありますか」との質問に対し、61.3%が「ある」と回答していた。また、同質問に「ある」と回答した人に対し、具体的な課題や悩みの内容を質問したところ、多かったのは「休職者の増加」(46.7%)、「従業員の生産性・士気の低下」(44.6%)、「メンタルヘルスに関する誤解や偏見が顕在・潜在化している」(35.3%)といった回答だった。
「働き方改革」「健康経営」で重要性が増すモチベーション管理・メンタリティマネジメント
これらの問題に対する対策としては、「個々人に対するストレスチェックだけでなく、その結果を利用した集団分析を行っている」(65.0%)、「厚生労働省が策定を推進している『心の健康づくり計画』を策定している」(43.0%)といった回答が多くを占める。これらの対策は、積極的なメンタリティマネジメントの代表的な実践と言えるだろう。現場において、実際にメンタリティマネジメントが重視されるようになってきていることがわかる。

企業側から働きかけるメンタリティマネジメントの実践ポイント

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