管理職研修の後に管理職の方と話していると、新入社員や若手社員に対して、褒めるのがいいのか叱るのがいいのかという質問をよく受ける。そこで、ある心理学者E.B.ハーロックの実験をご紹介する。
いいとこ伸ばしとモチベーションアップ

ハーロックは、
A:いつも褒める
B:いつも叱る
C:褒めも叱りもしない
D:統制群(普通の状態)
の4つの群を設定し、学習効果について調べた。

その結果、A>B>D>Cという結果が得られた。
その後数日が経つと、「B:いつも叱る」群のみ学習効果が著しく低減した。

この実験から言えることは、職場においてもまずは褒めるのが良いということである。
また、C群のように放置するのはよくないということだ。

心理学、特に行動療法の世界では「強化」という考え方がある。
強化とは、ある行動を維持させるための報酬であり、強化を通じて行動は維持されている。

例として、職場での朝のあいさつで考えてみる。
望ましい行動(朝元気にあいさつする)に対して、強化(上司がほめる、あるいは元気にあいさつを返す)することにより、その行動が維持される。
一方で、新入社員が朝あいさつしていても誰も返事をしない職場もある。そのような職場では、数か月するとその社員のあいさつという行動の発生頻度は低減してしまうだろう。

したがって、明るい職場を目指す時に事業主の方にお願いしたいのは、悪いところを指摘することではなく、望ましい行動をする人を褒めることに注力することだ。
そのことにより、職場での望ましい行動が増えていくだろう。

しかしながら、褒めるといっても、むやみやたらに褒めれば良いというものではない。
褒めることを機能させて、効果を高めるには、いくつかコツがあるのだ。

【何を、どのように褒めるか】
望ましい行動を増やしたいわけであるから、本人の人格ではなく、本人の行動を褒めるようにする。
例えば、「○○さんすごいね」よりも「○○さんのこういうところは素晴らしい!」と具体的に褒める。

【いつ褒めるか】
「自分は褒めているけれども部下に全く響かない」という相談を受けることがある。
よくよく話を伺うと、一つの可能性が考えられた。
それは、行動が起きてから、褒めるまでの時間が離れすぎているということだった。
相談をしてきた方は、朝いいなと思うことがあっても部下を呼んで褒めていたのはその日の夕方ごろということだった。

褒めるのであれば即時に実施した方が効果的であることは科学的にも実証されている。
強化は行動が起きてから即時(0~1秒以内)に実施することが大切だ。
それ以上時間が離れてしまうと、褒める効果がみるみる減っていってしまう。

「どうせ褒めるのなら、すぐに褒めましょう」とアドバイスしたところ、後日その管理職から、効果があったと連絡があった。

いかに部下のモチベーションを上げて長所を伸ばすか、お悩みの管理職の方々には是非参考にしていただきたい。


Office CPSR 臨床心理士・社会保険労務士事務所 代 表
一般社団法人 ウエルフルジャパン 理 事
産業能率大学兼任講師
植田 健太

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