コンビニエンスストアやスーパー、飲食店などで学生アルバイトの姿を目にしない日はないであろう。実は、彼ら彼女らの働きぶりからは、企業がおこなう「社員教育」の問題点が垣間見えることが多い。それは一体、どのような問題点だろうか。
アルバイト従業員の勤務態様に見る「社員教育」の問題点

コミュニケーションスキルが未熟な学生アルバイト

学生が希望するアルバイトの職種ベスト3は、「コンビニ・スーパー店員」、「ホールスタッフ(飲食店のウェイター・ウェイトレス)」、「ファーストフード店店員」であり(リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター「学生版求職者の動向・意識調査2018」)、多くの学生がサービス業をアルバイト先に選択して、働きながら学生生活を送っている。このような学生たちの勤務ぶりを見ていると、多くの学生アルバイトがある問題を抱えていることに気付く。「働くうえで必要なコミュニケーションスキルが十分に身に付いていない」という問題である。

第三者と関わりを持ちながら社会活動を営むうえで、好ましいコミュニケーションスキルを身に付けていることが極めて重要である。中でも、最も基礎となるのが「スマイルとアイコンタクト」のスキルである。「相手の目を見て、笑顔で対応すること」。これを「スマイルとアイコンタクト」のスキルという。

学生であったとしても、アルバイトとして働いている時間については、当然、一人前の職業人としての言動が求められる。そのため、「スマイルとアイコンタクト」のスキルは、当然、身に付けていなければならない。

ところが、サービス業の現場で働く学生の働きぶりを見ていると、先輩従業員や顧客に対して、目を見て笑顔で対応できているケースは非常に少ない印象を持つ。もちろん、例外がないわけではないのだが、残念ながら、多くのコンビニや飲食店などで、「笑顔のない不愛想な店員」や「目を合わせずに商品を差し出すスタッフ」などを目にしない日はない。

しかしながら、そのような学生アルバイトは「スマイルとアイコンタクト」がまったくできないのかといえば、そうではない。一緒に働く同年代の仲間同士の間では、「スマイルとアイコンタクト」が十分にできているケースもあるのである。

この事実は取りも直さず、「社員教育」として「スマイルとアイコンタクト」のスキル指導が十分におこなわれていないことを意味している。つまり、学生アルバイトは教えられたのにもかかわらず好ましいコミュニケーションがとれないのではなく、十分な教育を受けていないから、好ましいコミュニケーションがとれないだけなのであろう。

「スマイルとアイコンタクト」は“好ましい組織風土”構築の基礎スキル

実は、「スマイルとアイコンタクト」は、サービス業界で働く学生アルバイトにだけ必要とされるコミュニケーションスキルではない。業種・職種の違いにかかわらず、組織活動に携わるあらゆる人材が身に付けるべきスキルである。経営者や役員層はもちろん、部課長から一般社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトまで、従業員の皆が身に付けていなければならない。「スマイルとアイコンタクト」には人と人との関係を良化し、職場の雰囲気を改善する絶大な力があるからである。

業務における各種やり取りの中で「スマイルとアイコンタクト」が徹底されている企業には、業種・職種にかかわらず、明るく、前向きで、積極的な雰囲気が醸成されているという特徴がある。そのような職場では、従業員一人ひとりのモチベーションが高いために離職率が低く、安定的な人材確保を実現しているケースが多い。つまり、“好ましい組織風土・企業文化”を構築して安定経営を実現する第一歩が、全関係者による「スマイルとアイコンタクト」の習慣の徹底なのである。

ところが、「社員教育」といえば、とかく業務に直接必要となる知識・スキルの習得に重点を置く傾向にある。“好ましい組織風土・企業文化”の構築を目的にコミュニケーション教育に取り組む企業は、残念ながら非常に少ないのが現実である。

しかしながらこの事実は、コミュニケーション教育の実践が競合他社との大きな差別化要因になることを意味しているともいえる。厳しい経営環境を乗り切る手法のひと一つとして、「コミュニケーション教育」の実施を検討したいものである。
大須賀信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
組織人事コンサルタント・中小企業診断士・特定社会保険労務士
https://www.ch-plyo.net

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