HRプロでは、6月22日から6月30日にかけて採用担当者を対象とした2012年新卒採用の総括アンケート調査を実施した。有効回答は541社。例年なら4月末から連休明けの段階で大勢が判明するが、今年は東日本大震災によって選考が大幅にずれたため、6月末の調査によって20年卒採用を総括した。

  選考の遅れは今年だけの特異な現象だが、13年卒採用は、日本経団連の倫理憲章の改訂によって、2カ月遅れの12月に採用広報、エントリーの受付が始まる。

様変わりしたプレエントリー、震災の影響を受けた本エントリー

プレエントリー数は様変わりした。11年卒は76%の企業でプレエントリーが増えたが、12年卒になると、「多い」企業は34%と前年より半分以上少なくなった。「昨年並み」は17%から37%と倍増し、「少ない」は7%から29%へと4倍近く増えている。震災の影響もいくらかはあるだろうが、震災が3月だったことを考えるとプレエントリー時期としては外れており、やみくもにプレエントリーする風潮が是正されてきているのかもしれない。

図表1:プレエントリー数の対前年比較
第74回 2012年度新卒採用総括 企業の動き
本エントリーについては、「昨年同時期より少ない」が31%を占め、「昨年並み」が40%、「多い」が28%だった。「少ない」の比率がやや高いが、12年卒は震災後の3月中旬から5月連休明けまで選考を中止していた企業が多く、学生がエントリーしたくても門戸が閉ざされていたなど、混乱が影響したものと思われる。

 図表2:本エントリー数の対前年比較
第74回 2012年度新卒採用総括 企業の動き

会社説明会への参加者減少にも震災の影

11年卒は、説明会参加者が「多い」企業が6割を占めていたが、12年卒はすっかり様変わりし、「多い」は3割と半減した。そして「少ない」が10%→27%と3倍弱に増えた。「昨年並み」も30%→43%と1.5倍になっている。
 全体として伸びは鈍化傾向で、震災による影響も少なくないだろうが、震災前の2月時点でも説明会参加者の少なさを懸念する声があり、学生集客面での二極化がより進んだとも考えられる。

図表3:会社説明会参加者数の対前年比較
第74回 2012年度新卒採用総括 企業の動き

選考開始は2月から急増したが、震災で伸びがストップ

2012年卒選考開始企業は2月から急増し開始のピークは2月~4月だった。ただし開始していても、東日本大震災によって選考を進められなくなった企業が多かったし、内定を出しても、5月、6月に選考を遅らせた大手企業の影響で、内定を受諾しない学生も多かった。

図表4:選考開始時期
第74回 2012年度新卒採用総括 企業の動き

面接回数は「3回」までが9割を占める

学生のアンケートを読むと、中には十数回の面接を課する企業もあるようだ。学生の負担が大きく、あまりにも非常識だと思うが、そんな企業は例外である。
 今回の企業調査では、面接回数3回までの企業が約9割である。半数近くが「3回」、4割弱が「2回」だ。妥当な回数だと思う。
 規模が大きくなると「4回」「5回」という企業が増え始める。「5001名以上」では6回という企業が6%ほどある。6回となると、学生は他社への就活が阻害され、負担はかなり大きい。

図表5:実施する面接回数(推薦応募を除く)
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内定出しは大幅に遅れ、「6月前半~8月以降」内定ピーク企業が約4割

11年卒採用では、4月に内定出しのピークを迎えた企業が事務系で43%、技術系で38%あり、いずれも4月が内定出しのヤマだった。12年卒採用では事務系のヤマは5月に移動している。技術系もヤマこそ4月ながらも、5月との差はそれほどなくなっている。
 注意したいのは、時間区分が11年卒調査と12年卒調査で変わっていること。11年卒は「6月以降」を1つの区分としていたが、12年卒は震災で選考が大幅に遅延したため、8月以降までに細分化してデータを取った。11年卒の「6月以降」は事務系、技術系ともに2割を切っているが、12年卒では「6月前半~8月以降」が事務系、技術系とも約4割を占め、選考が大幅に遅れている実態を示している。

図表6:内定ピーク時期(事務系)
第74回 2012年度新卒採用総括 企業の動き
第74回 2012年度新卒採用総括 企業の動き
図表7:内定ピーク時期(技術系)

長期化する12年卒採用

7月以降の施策を見ても長期化の様相は見て取れる。7月段階で「すでに選考は終了した」企業は23%にとどまる。そして「内定者に対するフォローが中心となる」企業は44%だ。
 しかし採用活動を継続する企業も目立つ。「新たに会社説明会を開催」30%、「就職部・キャリアセンターとの連絡」18%、「夏採用・秋採用」15%、「新たな学内企業説明会への参加」14%。かなりの数の企業が採用活動を継続しており、12年卒採用は全体として長期化は避けられない。
 内定充足率でも遅延は読み取れる。12年卒の4月末段階の内定充足率0%の企業は5割近くを占め、91~110%の企業は1割に満たなかった。東日本大震災によって選考がストップした企業が多かったことを意味する。
  しかし2カ月が経過した6月末時点では内定充足率0%は2割未満になり、91~110%は2割を超えている。71~90%、51~70%の企業も急増している。5月、6月で選考がかなり進んできている。
  200%を超える企業もあるが、これは内定辞退者が多くなることを見越しての措置と思われる。

図表8:内定充足率
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成果の乏しい既卒者採用

未内定のまま卒業する学生に対し、厚生労働省は10年11月15日に「青少年雇用機会確保指針」を改正し、卒業後3年以内の既卒者を「新卒枠」で採用すべきとした。
 この指針に基づき、12年卒採用の既卒者の扱いは、6割以上の企業が「新卒枠」で受け付けている。しかし、採用に至った事例は少なく、いずれの企業規模でも数%にとどまり、「1~50名」では皆無だった。「新卒枠で就職活動を継続」したい学生は多いが、ハードルは高い。

図表9:卒業後3年以内の既卒者採用
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