経営プロ× 日経 “人財を活かす” 経営変革フォーラムVol.3 激変する時代を勝ち抜く、先進のマネジメントと人材育成

目次

HRテックの最新動向~HRテックによる最新の人材育成とは~

サムトータル・システムズ株式会社 
マーケティングディレクター
古沢 淳 氏

世界的に生産年齢人口が低下していく中、日本企業が勝ち残るためには、今いる社員を育て、活用しながら生産性を上げていかなければなりません。そこで重要な役割を果たすのがHRテクノロジーです。AI+ビッグデータをHRのシステムに応用することで、より強い組織を作ることができます。そこで今回は、ラーニングを柱に人材育成ソフトウェアの開発・提供を行う同社の古沢 淳より、HRテックの最新動向や、人材育成への応用方法について解説いたします。

HR テックが求められる背景

 企業の人事の方々は、HRテックに何を求めているのでしょうか。HRテックを活用した人事の課題を調べてみると、「人事のプロセスを自動化したい」という意見が少なくありません。私たちもお客様に弊社の製品をご説明していると、たびたびこのような話題・質問が出てきます。しかし、最終的に判断するのは人間です。自動化と人間の役割はそれぞれ異なるということを、まずは知っておく必要があります。
 今まで過去の経験や勘をもとに人事の評価を行うことが多々ありましたが、最近はそういったことは大幅に減り、経験や勘とは異なる科学的な人事の評価が必要になってきました。さらにデータの精度に関しては、昨今グローバル化やダイバーシティが進んでいることもあり、多角的な見方をしながら評価することが求められています。「この人は性格が良い」、「この人はいい大学を出ている」、「この人は営業成績が良い」といった表面的なことだけでなく、プロセスやアウトプットも重要です。また、より広範囲なデータを収集するためにも、HRテックの活用は不可欠でしょう。最終的に人事には、パーソナライゼーションが必要です。個人個人に合った形の評価・分析をしていかなければなりません。そのためにはHRテックを活用して、主観と経験と勘に頼らない、データに基づいた根拠のある判断をしていくことが求められます。

人材育成に必要なHR テック

 ITテクノロジーの新たな潮流として、我々が今最も重要視しているのは、ビッグデータ( Big Data)、A(I 人工知能:Artificial Intelligence)、RPA( Robotic Process Automation)の3つです。これらは、これからの人事システム、教育・人材育成システムに必要不可欠なテクノロジーとなるでしょう。AI+ビッグデータの特長としては、データ量が多いこと、多くの仮説を出すことができ、それぞれを多角的に検証できること、抜けがないことが挙げられます。さらに、偏りのない基準を設定し、対象を客観的に評価できることが大きな強みです。
 AI+ビッグデータの実装は、これから本格化していきます。従来からさまざまな手法が編み出されてきましたが、集まったデータの分析や判断は、最終的には人間が行ってきました。これは、従来はデータが複雑になると機械では処理できなかったからです。では、今後どのような分野に応用されていくのか。例えば、採用(マッチング、スクリーニング、キャリア予測)、配置・異動、組織の最適化、人材育成・活用、教育(カリキュラム、内容、進捗管理、ポテンシャル)、評価(アセスメント、リーダーシップ、パフォーマンス、コンピテンシー)、処遇(昇給、ボーナス、インセンティブ)、モチベーション形成(企業文化、価値観、信頼感、期待度)などが挙げられるでしょう。

RPA の特徴およびタレントマネジメントの融合

 RPAとはRobotic Process Automationの略で、これまでホワイトカラーが担ってきたオフィスにおける業務をデジタルレイバー(Digital Labor)というシステムに代行させる技術です。昨今、タレント(優秀人材)の獲得にあたって、企業間の競争が激化し、能力を発揮する生産性の向上や、そのためのモチベーションの向上も重要になっています。RPAの導入は、より有意義な仕事にシフトすることによって、高いレベルで能力を発揮できる組織づくり、仕組みづくりを進めるうえで非常に有効な手段と言えるでしょう。
 さらにRPAとタレントマネジメントを融合させることも重要です。会社のビジョンと、人材の育成、活用ビジョンを重ね合わせ、単純な作業はデジタルレイバーに任せ、創造性を人に任せる戦略にシフトしていく必要があります。人が働くことにおいて、仕事に納得感を持つことや、やりたいことにチャレンジし、成長する過程を重要視。これまで負ってきたモチベーションを下げかねない単純業務の負担が軽減されることは、タレントエクスパンション(優秀人材の能力向上、成長)を考える上で重要な役割を果たすでしょう。RPAによる働き方改革とタレントマネジメントの融合により、強い組織を築くことができるのです。

HR テックを活用した人材育成

 HRテックは優秀な人材の発掘と育成にも寄与します。そのポイントは大きく分けて3つ。1つ目は、創造力やアイデアを持った人材の発掘です。独創性、新しいアイデアを作り出す能力、アイデアの豊富さ、出したアイデアの緻密性などを測るアセスメントツールや分析手法として活用できます。2つ目は、キャリアプランやポジションギャップです。本人の進捗に合わせて、次にどのコースを受講すべきかをガイドし、さらに必須コース以外のコースを適宜推薦することにより、学習への興味を継続させます。そして3つ目は、カリキュラムや学習内容の自動生成です。外国語学習において、その人の役に立たない内容を排除し、仕事内容に合ったカリキュラムを既存の雑誌や本などから自動的にピックアップします(米国のベンチャー企業での例)。
 HRテックは評価、アセスメントへの応用にも力を発揮するでしょう。データ量が増えるほど結果の正確性が増していきます。ファジーな機能が実装されることにより、より客観的な評価を達成。すでに囲碁ソフトなどで証明されつつあります。また、コンピテンシー、プロセスなどの評価基準、測定方法および実行動との比較・分析、ポテンシャルの把握、360度評価への応用(評判と逆評判の分析・評価)、能力の定期的診断ルーチン(体の定期健診に相当するタレントの定期“健診”)などにも応用できるでしょう。

次世代リーダーの発掘と育成

 HRテックは次世代リーダーの発掘と育成にも役立つと思います。第一に、ポジション・マッチング(行動特性データの収集・分析をAI化する)です。例えば、候補者に複数のゲームをさせ、その行動特性を収集し最適なキャリアを予測。集まったデータを人間が評価するのではなく、コンピュータが判断する点が新しいわけです。また、学歴・業務歴スクリーニングにも役立つでしょう。有名校出身ではない優秀な人材を発掘し、さらに職種を出来る限り細分化し、それぞれにさらに深いQ&AやeLearningを体験させ、行動特性データを収集、分析していきます。加えてGoogl eの例として、集合知による採用判断があります。複数の面接官によるさまざまな角度のレポートに加え、候補者と何らかの重複のある社員からヒアリングしたデータを追加。データの量が増えてくると、AI+ビッグデータ向きな条件がそろうというものです。

人事データベースのビッグデータ化

 直訳すると、「膨大なデータ」を意味するビッグデータとは、単にデータ量が多いだけでなく、データに必ずしも関連性がありません。ビッグデータはWEB、インターネットの世界に広がるさまざまなデータを検索、分析するために開発、発展した技術です。伝統的なI T 技術では、あらかじめ設定した項目や分類でフォーマットを決めて、データベースとして管理するため、定型化されたデータの検索や分析は高速で処理できますが、あいまいで、唐突なデータの集合を処理するロジックは弱くなっています。しかしWEBの登場で、ITインフラが公開され、参加者が世界的かつ末端の個人にまで広がってくると、発信されるデータ量、蓄積されたデータの大きさ、複雑さは今までの想定を遥かに超えていきました(GOOGLEの躍進はWEBにおけるビッグデータの扱いにいち早く対応したからに他なりません)。社員は人間です。データ量は一個人であっても、それ自体がビッグデータとなり得ます。今後、人材開発、人材育成におけるビッグデータの扱いが重要になるでしょう。

HR テックが組織にもたらすもの

 組織の成功のために最も必要な戦略――それは人事戦略でしょう。よって今後、HR 関連の担当者はより重要な役割を担っていくことになります。そうした中で、働きがいのある会社にするにはどうしたらよいのか。どうすれば働きたくなる?優秀な人ほど辞めない会社になるには?そのためには企業価値、財務諸表だけでは見えない指標の策定が必要になります。要するに従業員の満足度、エンゲージメントです。会社側からすれば、忠誠度、貢献度、信頼性、透明性の測定。社員側からすれば、公平性、満足度、将来性、安定性の測定。報酬よりも、信頼できる仲間と仕事をすることに働きがいを感じる人は少なくありません。幸福度、上司・部下の信頼関係、決定プロセスの妥当性等が重要になります。

組織を強くするために不可欠な5 つの柱

 組織を強くするためには次の5つの要素が不可欠になります。1つ目は個別化された開発計画(従業員とのエンゲージ スキル・知識を伸ばす)、2つ目は継続的なラーニング(労働力を成長させる。スキルギャップを縮める)、3つ目はキャリアの可動性(リテンションを高める。タレントに整合性をもたせる)、4つ目はナレッジの活性化(生産性を向上させる。 チームの生産性を増加)、5つ目は実用的なインサイト(リスクと機会を予測し、推奨事項を提供する)です。これらの要素を持って組織を強くしていくためにも、人事の方々はいろいろなテクノロジーやツールを有効活用していかなければなりません。

 「準備を整え、そこに機会が訪れれば成功する」――これは米国の著名な営業のプロ、ジグ・ジグラー氏の言葉です。いろいろなテクノロジーの知識を頭の中で持っていても、実際にそれを使わなければ意味がありません。ぜひHRテクノロジーのツールを活用し、人材育成や人材開発に応用していただければと思います。ご静聴ありがとうございました。

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