「働き方改革とHRTech 最前線」講演録 働き方改革とHR Tech の活用

KPMG コンサルティング株式会社 People & Change Director 坂東 治忠 氏

働き方改革には、生産性向上と人財活用という2 つの大きなテーマがあります。そして、それらを実現させるための鍵となるのが、HR Techやタレントマネジメントの活用です。そこで今回は、RPA を活用した業務改革支援を行うKPMGコンサルティング株式会社の 坂東治忠氏をお招きし、働き方改革にHR Techがどのように寄与するのか、その活用法や具体的な事例、ポイントなどを解説していただきました。

働き方改革とは

働き方改革は、現在のように政府が推進する以前から、そのニーズが存在していました。すでに企業を取り巻く環境変化として、例えば、ビジネスのグローバル化による競争、国内市場の成熟化と需要の多様化、テクノロジーの進化(AI導入の拡大)、法規制強化(長時間労働・非正規雇用)、また、労働人口の減少、仕事に対する価値観の多様化…などが顕在化しており、それらに対策を講じる必要性が生じていました。そこから、生産性向上や人財活用といったニーズが生まれました。さらにそのための施策として、ルーチン業務の効率化、人財の見える化による高付加価値業務への注力、時間の制約がある社員も能力を発揮できる環境整備などが図られてきた、という経緯があります。 現在の働き方改革の検討テーマは、①非正規雇用の処遇改善、②賃金引上げと労働生産性向上、③長時間労働の是正、④柔軟な働き方がしやすい環境整備、⑤病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労促進、⑥外国人材の受入れ、⑦女性・若者が活躍しやすい環境整備、⑧雇用吸収力、付加価値の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、⑨高齢者の就業促進――以上のように分類されますが、これらの殆どは以前より検討されてきた「生産性の向上」と「人財活用」というアプローチで解決していくことができるのです。

「時短(長時間労働回避)」の対策をしたA 社の例

ここで時短の対策をされたお客様の事例を1つご紹介いたします。 製造業のA社(従業員数:約2,000名)は残業が常態化していました。経営層は生活残業が原因と考え、単純に時短のための管理を強化するよう各拠点に指示をしましたが、なかなか時短が進まないため、「働き方改革プロジェクト」を実施。 このようなA社に対し、弊社は次のような支援を行いました。まずは状況を分析した結果、業務が非効率に行われており、多大な残業が発生するほどの過剰労働状況であることがわかりました。にも関わらず、36協定を順守しようとしていたため、各拠点にてサービス残業が常態化していたのです。そこで弊社は、非効率な業務・プロセスを炙り出し、改革に着手しました。 生産性向上においては、業務内容の再検討による職務記述書の再定義や、製造・営業・サポート各業務のプロセス改善、RPAによるノンコア業務の省力化など。 また、人財活用(タレントマネジメント)においては、評価制度の変更、スキルセットとタスクの難易度のマッチング、ラーニング管理システムによる人材育成など。 こういった支援を通じて、現在A社は時短に向けた働き方改革に取り組んでいます。

働き方改革(生産性向上)とHR Tech(AI・RPA)

生産性向上とは、限られた人的リソース・時間の中で生産性の向上を目指すことです。生産性向上を語るうえで、「労働生産性=総労働量分の付加価値総額」という計算式は外せません。では、「付加価値総額」を増大させるためには何をすればいいのかというと、高付加価値業務の優先度を向上させる必要があり、一方の、「総労働量」を低減させるためには何をすればいいのかというと、業務の整理・シンプル化が必要です。 そのための一つのアプローチとしてHR Tech、特にRPA(プロセス自動化)を活用することが効果的です。しかし、今ある仕事をすべてRPAに移行する必要はありません。まずは現状の業務を見直して、非効率な、もしくは複雑すぎるプロセスをシンプル化し、効率化しましょう。単純作業はアウトソーシングを利用し、一方で単純作業の自動化や、ピーク時の人員不足をシステムに任せるなど、RPAを活用することで、単純作業からスタッフを開放し、より戦略的かつ高付加価値な業務にシフトしていくことができます。

働き方改革(人財活用)とタレントマネジメント

働き方改革を行ううえで非常に大切なのが、職務記述書ならびに評価基準の再定義です。 職務記述書(ポジションマネジメント)によって、それぞれの職務内容を明確化し、またそのポジションに最適であると思われる人物像・経験・スキル・コンピテンシーモデル等を定義することが可能となります。これにより、担当者による注力業務のバラつきを最小化し、安定した業務運用が行え、適切な人財マッチングの基準を作ることができるでしょう。 一方の評価基準ですが、これによって、働き方改革に適したKPI、一定時間内の業務の完了率、単位時間当たりの付加価値額、成果物の品質・歩留りなどを再定義します。KPIを再定義することで、やるべきこととその水準が明確化でき、さらにはモチベーション向上にも大きく貢献すると思います。 このように従業員がやるべきことと目標値を明確化し、従業員による判断のブレを最小化しつつモチベーションを強化することで、適切な働き方を実現するということです。

タレントマネジメントによる人財活用

社内に散在する従業員のプロファイルデータを一元管理し、常にどこにどんな人財がいるのかを把握することが重要です。例えば経歴、教育履歴、スキル、パフォーマンス評価、コンピテンシー、キャリア計画などのタレントマネジメント系必須管理項目から、趣味、勤務可能地、ボランティア等のオプション管理項目まで、従業員の人財統合データベースを整備し、タレントマネジメントを実行しましょう。 では、タレントマネジメントによる人財活用の全体の流れをご紹介します。 まず職務定義(ポジションマネジメント)や人財プロファイル(見える化)をもとにマッチングを行います。そして適材適所の人材を配置。これにより生産性向上、人財活用、モチベーション向上などが実現できるわけです。また評価基準においては、働き方改革の目的に沿ったKPIを設定することで、正しい評価を行い、その評価結果をもとに育成を行っていきます。 果たしてこのようなタレントマネジメントはどのような効果をもたらすのでしょうか。 適材適所の人財配置と、適切な評価、効果的な人材育成が行われることによって、①新規事業・業務への対応、②女性、若者、高齢者など、様々なタイプの人員活用の必要性、③グローバル化(外国人の活用)への対応、④スキルマッチングによる効率的な仕事、⑤従業員の仕事のやりがい・モチベーションを引き出す…などがもたらされます。 まさに、ポジションマネジメントとタレントマネジメントの活用による働き方の改善と言えるでしょう。

働き方改革の実行

次に、働き方改革を実行するうえで不可欠な3つのポイントをご紹介します。 1つ目は、業務の目的を再定義するためのTo-Be策定です。企業戦略に基づき職務定義や評価基準を見直します。2つ目は、現状・Gap分析です。既存業務の無駄を多角的に分析し、見える化します。そして3つ目は、改革の実行です。改革の阻害要因を分析し、その対応策として意識改革に向けた計画的なチェンジマネジメントを実行します。 しかし、現在の働き方改革においては、職務レベル、部署、階層、各個人によって異なる状況・意義が交錯しており、そういった中で改革を進める難しさもあるでしょう。例えば、経営層にとって重要なのは、会社の業績や、行政指導、会社の評判など。管理職にとって重要なのは、部下の管理監督責任や、会社からの自分への評価など。そして従業員にとって重要なのは、働き甲斐や生き甲斐、待遇、余暇など、といったように、それぞれのポジションによって求めるものが違います。これらを一つの方向性にまとめ、全社共通の意義を作ることが、働き方改革を進めるうえで最も重要だと認識してください。

改革実行におけるチェンジマネジメントとは

働き方改革がうまくいかない事例として、せっかくテレワーク環境を導入したのに殆ど使ってくれない、定時後の業務用PC利用を制限したら、家のPCで仕事をしている、ノー残業デーを採用したのにまったく参加しない部署がある…といったケースが見られます。こうしたことに対しては、やる気(モチベーション)を出させる、会社で行うことの意味を見出させる(成果の認識)、改革の成果に対する評価・報酬、方向性を認識させ、合意点を見出す、継続したモニタリングとコーチングの環境の整備、各部署間の調整…などが必要でしょう。そしてこれが、チェンジマネジメントという作業なのです。 チェンジマネジメントとは、つまり、影響を受ける関係者が変革を受け入れ、それに備えながら、望み通りの結果を達成できるように、構造化され、意識的に行われる、プロセス・ツールそしてメソッドの導入手法のこと。 これは、理解フェーズ(現状を十分に分析し、要求されるカルチャーの変革を把握する)、周知フェーズ(変革を早期に周知し、メンバーが変革に貢献するよう働きかける)、具体化フェーズ(変革ビジョンを具現化して、意義を定義)、実現フェーズ(知識、スキル、能力を身につけるためワークショップ、トレーニング、リーダーシップコミュニケーションを活用)、定着化フェーズ(将来の状態に対してパフォーマンス評価、KPI、ビジネスプロセス、ロールと役割を定義)という、5つのフェーズに分けられます。

改革を成功させるために

最後に、働き方改革を成功させるための3つのポイントをご紹介します。 1つ目は、働き方改革は、働かせ方改革ではないということ。“社員を”ではなく、“社員が”自主性を持って改革していくことが大切です。 2つ目は、仕組みだけの整備では効果は少ないということ。働き方改革は、いわばビジネスの変革であることを意識しましょう。 そして3つ目は、従業員だけでなく、経営陣や管理職の意識も改革すること。法制対応だけでなく、会社にとって意味のある改革が必要です。 以上で私の話は終了いたします。ご静聴ありがとうございました。

【参考】「働き方改革とHRTech 最前線」講演録 RPAがもたらす生産性向上
【参考】働き方改革対策として注目されるHRテクノロジーの活用方法

KPMGコンサルティング株式会社 People & Change Director 坂東 治忠 氏 KPMGコンサルティング株式会社 People&Change ディレクター。大手総合商社に入社後、大手外資系日本法人立ち上げに参画。後に外資系企業日本法人代表としての日本立ち上げや数々の外資系IT /ソフトウェアベンダーにおける要職を歴任。 米国タレントマネジメントソリューションの大手コーナーストーンオンデマンド社の社長を経て、現職。

【著者プロフィール】
「ラーニング・イノベーションLABO」編集部
人事領域において人材開発やDX・ITにおけるクリティカルな情報をお届けします。
また、人事担当者の方々が日々抱える人材育成、人材開発における課題を整理し解決していくメディアを目指しています。
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