PMI(Post Merger Integration)とは?M&Aのリスクとそれを防ぐためのPMIの進め方について解説します!

市場規模の縮小や後継者不足が深刻化する昨今、事業の継続・拡大を見据え、M&A(合併・買収)を検討している企業も少なくないでしょう。しかし、M&Aは失敗すればさまざまなトラブルを招く諸刃の剣でもあります。

そうした中、M&Aのリスクをできる限り取り除き、シナジー効果をより早く、より確実に享受する鍵となるのが、PMI(Post Merger Integration)です。この記事では、PMIの概要について解説した上で、PMIの進め方、PMIを成功させるためのポイントをご紹介します。

目次

PMI(Post Merger Integration)とは

PMIとは、M&A(合併・買収)成立後の統合プロセスを指す言葉で、「Post Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーション」の略です。自社及び相手企業に関するあらゆるデータを収集して、リスクや課題の検証を行い、その検証結果をもとに、統合後のマネジメントの仕組みを構築していきます。

また、統合後のマネジメントの推進もPMIの一環です。PMIの対象は、経営理念から戦略、ビジョン、組織体制、制度、人事、財務、業務システム、事業内容、取引先、仕入先、ブランド、企業風土・社風、オフィススペースなど、非常に多岐にわたります。

M&Aというと、相手企業との合意プロセスばかりに関心が集まりがちです。しかし、その後の統合プロセスがうまくいかないと、M&Aによるシナジー効果が十分発揮できないだけでなく、業務効率の低下や優秀な社員の離職、顧客離れなど、さまざまなトラブルも起こり得ます。つまりM&Aの成否は、このPMIをうまく行うかどうかにかかっていると言っても過言ではないのです。

M&A後に起こり得るトラブルとPMIの効果

M&Aには、複数の企業が連携や共同で事業を運営することによって、大きなシナジー効果が期待できる一方で、さまざまなトラブルを招くリスクも潜んでいます。しかし、M&A後に起こり得るトラブルの多くは、PMIによって未然に防ぐことが可能です。以下に、M&A後に起こりがちな3つのトラブルと、それらに対するPMIの効果をご紹介します。

●起こり得るトラブル①:業務効率の低下

M&Aによって期待できるシナジー効果の1つとして挙げられるのが、業務効率の向上です。しかし、業種が異なる企業はもちろん、同業種同士であっても、M&Aによる変化に柔軟に対応しきれなかったり、思わぬトラブルが発生したりして、かえって業務効率が低下する可能性があります。

→PMIを通じて、経営方針から企業風土、組織体制まで、企業運営に関わるあらゆる要素について丁寧なすり合わせを行うことで、業務効率の低下を防ぐことができます。

●起こり得るトラブル②:従業員の離職

M&Aが成功して企業のブランド力が高まれば、優秀な人材もより集めやすくなるでしょう。しかしその一方で、特に買収される側の企業の従業員が、M&Aによる変化に不安や不満を感じ、モチベーションが低下して離職してしまうリスクもあります。

→PMIによってソフトランディングを意識した統合計画を策定し、従業員全員に周知するとともに、従業員ができるだけ不利益を被らない形で統合を進めることが、従業員の離職防止につながります。

●起こり得るトラブル③:顧客・取引先の離反

M&Aを実施すれば、2社分の顧客・取引先を得られることが期待できます。また、新たな技術を獲得することで、既存事業が強化され、顧客・取引網をさらに拡大することも期待できるでしょう。しかし、顧客・取引先が突然のM&Aに動揺したり、不満を覚えたりして離反することも考えられます。

→PMIによって買収する側と買収される側それぞれの顧客・取引先のニーズを把握して、お互いの顧客・取引先との関係を可能な限り良好な形で維持できるように統合を進めることで、顧客・取引先の離反を抑制できます。

PMIの効果的な進め方

PMIには適切なプロセスがあり、ただやみくもに進めてしまっては十分な効果を得ることはできません。PMIを実践する際には、以下の5つのステップを踏みましょう。

●ステップ①:現状把握

PMIによってM&A後のトラブルの発生リスクを抑え、シナジー効果を最大化するためには、初めに自社とM&A相手の現状を正確に把握しておく必要があります。特にM&A相手の現状把握は非常に重要ですので、役員や実務担当者に対してヒアリングを行い、事業がどのような仕組みや役割分担で動いているのか、M&A実行後に期待していること、率直な思いなどをしっかり確認しましょう。また統合対象となる要素についてのデータを収集し、現在抱えている課題や、統合後に発生する可能性のあるリスクを洗い出すことも重要です。

●ステップ②:統合方針の決定

現状把握によって抽出された課題やリスクを考慮しつつ、統合の目的や目標、方法、手順などの統合方針を決めましょう。統合方針の主な枠組みとしては、被買収企業を子会社として存続させ、できるだけ独立性を維持する「連邦型統合」と、被買収企業を残しつつも買収企業が積極的に関与する「支配型統合」、吸収合併や事業譲渡などを通じて買収企業が被買収企業を吸収して一体化する「吸収型統合」の3つが挙げられます。

●ステップ③:ランディング・プランの策定

ランディング・プランとは、M&Aの最終手続きである「クロージング」が完了した後、3~6カ月以内に実行するべき統合計画のことで、短期的な課題解決を目指して作成します。ランディング・プランを策定することで見落としたリスクや、把握することが難しかった課題などを反映させることが可能です。検討する領域は、経営・組織、人事・労務、経理・財務などの管理面と、原価・販管費、取引先・仕入先、設備投資などの事業面がメインになります。

●ステップ④:100日プランの策定

100日プランとは、クロージングが完了した後、100日間で実行するべき統合計画のことで、中長期的な課題解決を目指して作成します。計画の具体的な中身については100社100様ですので、取り組むべき優先順位をしっかりと見極めて、無理のないアクションプランを設定しましょう。その際には、中長期的なミッションやビジョンから逆算して戦略を考え、100日プランのメニューに落とし込んでいくことが重要です。

●ステップ⑤:プランの実行・モニタリング

クロージングが完了すると、ランディング・プラン及び100日プランを実行に移します。また、プランを実行するだけでなく、問題点をいち早く発見し、適宜軌道修正を行うために、進捗状況を定期的にモニタリング(成果の測定)することも重要です。数値化できる定量的な要素はもちろん、数値化できない定性的な要素についてもKPIを設定しておくことで、多角的な分析が可能となります。

PMIを成功させるためのポイント

PMIを成功させるためには、統合する両社の状況を鑑みつつ、余裕を持った準備やPMIに適した体制整備、綿密なコミュニケーションなどを進めることが重要です。以下に挙げるポイントをぜひ押さえておきましょう。

●余裕を持ってPMIの準備を進める

PMIのランディング・プラン及び100日プランの策定は、クロージングが完了する日までに終わらせておく必要があります。そのため、できるだけ早期に計画作成に着手することが大切です。PMIの準備は、M&Aの交渉プロセスで企業概要書(IM)を提示する段階から進めておくことが理想ですが、デューデリジェンス(譲渡対象企業に対する事前調査)が終われば、相手企業の現状や課題は把握できますので、遅くともそのタイミングで課題に対する対応策などを検討し、ランディング・プランや100日プランの枠組みを作成すると良いでしょう。

●PMIに適した体制整備・人材配置を行う

PMIを滞りなく進めるためには、プロジェクト全体の進捗を管理するPMO(Project Management Office)の設置が必要不可欠です。例えば、統合作業の進捗確認や報告会の実施、窓口業務などはPMOが取り仕切ります。また、プロジェクトを着実にドライブさせるためには、PMIを担うのに適した人材を各部署に配置することも重要です。PMIは非常に難しいプロジェクトで、経験がないとなかなか前進させられないため、もし自社にもM&A相手にもPMIの経験やノウハウを持った人材がいない場合は、外部からPMIの経験者や、コンサルタントを招くことも検討した方が得策でしょう。また、買収された側の企業は、社員のモチベーションが下がっているケースも多いため、チーム全体を引っ張っていけるリーダー的な人材をPMIの実行者として選定する必要もあります。

●綿密なコミュニケーションを取る

PMIにおいて最も重要な要素の一つがコミュニケーションです。従業員とのコミュニケーションを怠ると、不安や混乱が生じ、大きなトラブルに見舞われるリスクが高まります。特に買収された側の企業には、M&Aにマイナスの印象を抱いている人や、反対している人も少なからずいるでしょう。そのため、そうした従業員の疑問や不安、意見にしっかりと耳を傾け、同時に、ビジョンや目標は何なのか、新しい上司は誰なのか、給料はどうなるのかなどを逐一共有することで、お互いに理解を深めていく必要があります。PMIは買収する側の企業の努力だけでは進められません。買収する側、される側のすべての従業員を巻き込んで、一丸となって取り組むことが何よりも重要なのです。

まとめ

◆M&A成立後の統合プロセスであるPMI(Post Merger Integration)は、短期間に適切に実施することで、業務効率の低下や従業員の離職、顧客・取引先の離反といったM&A後に発生しがちなトラブルを未然に防ぐことができる。

◆PMIを成功させるためには、できるだけ余裕を持って準備をすること、PMIに適した体制整備や人材配置を行うこと、そして従業員と密なコミュニケーションを図ることが重要である。

◆M&A成立後のリスクを回避し、シナジー効果を十二分に得たいと考えている企業は、今回ご紹介したPMIの進め方や成功させるためのポイントをしっかりと押さえた上で取り組んでみよう。

【著者プロフィール】
「ラーニング・イノベーションLABO」編集部
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