人事評価と採用活動に生かす!注目が集まるコンピテンシーとは?

昨今の企業の人事評価、採用活動、及び人材育成の場において、担当者の主観偏重、適切な人材の取りこぼし、結果に直結しない社内研修等を避けるために、コンピテンシーと呼ばれる概念の活用が注目されています。

この記事では、コンピテンシーとは何なのか、どのようなメリットがあるのか、具体的にどのように活用すればよいのか、こういった疑問について分かりやすく解説します。

目次

1.「コンピテンシー」とは何か?

「コンピテンシー(Competency)」は、企業内で高い業績を上げる「ハイパフォーマーの行動特性」を差す言葉として一般化されています。

現在は、人事評価や人材育成といった場面で、多くの企業がその概念を導入しています。

そもそも、コンピテンシーが注目を集めるようになったきっかけは、1973年にハーバード大学のデイビッド・マクレランド教授が発表した論文「Testing for Competence Rather Than for Intelligence」です。

アメリカの国務省は、個人が持つ学歴・知能と職場でのパフォーマンスの相関性について、マクレランド教授に調査を依頼しました。

調査の背景には、高学歴・高IQの外交官の中で生じる業績の格差という問題がありました。

大学で動機づけ理論を研究していた心理学者のマクレランド教授は、調査を通じて職場で高い業績を残すハイパフォーマーの行動特性を、以下のとおり明らかにしました。

・学業成績や知能指数は、職場での業績の高低差との間に顕著な相関性が見受けられない
・高い業績を残す人材には、次に挙げる3つの共通した行動特性が認められる
→異なる文化の人々に対して感受性を発揮して人間関係を構築できる
→他者の挑発的な態度に対して前向きな姿勢を保ち続けられる
→政治的な人材ネットワークを素早く形成できる

マクレランド教授による調査結果は、後に社会心理学者のボヤティズ教授によって実証的に体系化され、組織では人事管理において活用される概念となっています。

日本では、1990年代からコンピテンシーの概念が企業で導入され始めました。現在では、コンピテンシーは人事評価と採用活動において、多くの企業で取り入れられています。

参考:コンピテンシーの意味とは?人事評価に活用するモデル化を解説

2.コンピテンシーとスキル

専門的な知識や技能のことをスキルと呼びます。

スキルとコンピテンシーの違いのポイントは「行動」にあります。スキルが高度であっても、それが行動に結びつかなければ高い業績・成果にはつながりません。

コンピテンシーは、保有する知識・能力を実践する力やその行動特性を指します。

成果に結びつく行動をするかどうかが重要であり、コンピテンシーモデルとして人事評価や採用活動に生かしているのです。

また、スキルは企業や会社に関係なく、共通して活用できるものに対して、コンピテンシーは企業や会社の中でみられる行動特性が企業や会社ごとに共通点がある反面、汎用が効かないデータであるという違いがあります。

参考:コンピテンシーの意味とは?スキルとの違いや人事評価と採用に活用する方法を解説

3.コンピテンシーを人事評価に取り入れる方法・メリット

コンピテンシーを人事評価に活用するためには、以下の2つのプロセスが必要です。

・企業や会社ごとに応じたコンピテンシーモデルの作成
・コンピテンシーモデルに応じた個々の目標設定※評価と改善点の洗い出し

また、コンピテンシーを人事評価に取り入れることによるメリットは以下の4点になります。

1.個々の業務が高い業績や成果につながりやすくなる
コンピテンシー評価によって、高い人材のパフォーマンスを客観的に把握することができ、コンピテンシーモデルになる社員のスキルにあった適材適所での高いパフォーマンスや最適な配置ができます。

その結果、個人・組織の生産性が向上し、会社全体のパフォーマンス向上につながることになります。

2.客観的な指標のため評価への納得が高くなる
コンピテンシーモデルに応じた客観的な指標をもとに評価が行われるため、社員の納得感が高まります。

3.社員の成長につながりやすい
コンピテシーモデルに応じた社員個々の目標設定※が行われることで、社員は会社から求められている目標を明確に理解することができます。

明確な目標に対し行動することによる社員の成長が期待できます。

4.人事評価の負荷が軽減される
人事評価にコンピテシーを取り入れることは、評価を行う上司などの評価者や人事評価を取りまとめる人事担当者、最終的な判断を行う人事責任者の負担を軽減します。

※目標設定自体はコンピテンシーだけでなくスキルからくるパフォーマンス観点の設定も考えられます。コンピテンシーだけで目標設定がなされるわけではありません。

参考:コンピテンシーの意味とは?スキルとの違いや人事評価と採用に活用する方法を解説

4.コンピテンシーを採用活動に取り入れる方法・メリット

採用活動においては、主に面接・採用試験で注目するポイントが変わってきます。

コンピテンシーを活用することで「知識を生かしてどう行動しているか」「行動には成果のための工夫があるか」を確認することが軸となりメリットは以下の4点になります。

1.入社後を見据えた面接ができる
面接では、学歴、資格、志望動機、自己PRなどの質問で人材を見極めなければならないため、入社後に能力を発揮できるかどうかを判断するのが困難でしたが、コンピテンシーモデルをもとに行動に着目した質問ができるようになりました。

2.客観的な評価ポイントを設定でき、評価のばらつきがなくなる
従来の面接では面接官によって評価のばらつきがありましたが、コンピテンシー面接では、客観的な評価ポイントが設定できるため、評価のばらつきをなくすことができます。

3.明確な指標があるため応募者の満足度につながる
コンピテンシーを採用する事で、自社がどんな人材を募集しているのかを応募者に明確に伝えることが可能となり、応募者の満足度につながります。

4.採用活動の負荷を抑えられる
コンピテンシーモデルをもとに採用活動における質問内容と評価項目を決めておくことができるため、採用に関わるスタッフの負担を抑えることが可能です。

参考:コンピテンシーの意味とは?スキルとの違いや人事評価と採用に活用する方法を解説

5.人事評価において活用するための「コンピテンシーのモデル化」とは

企業が人事評価でコンピテンシーを活用するためには、コンピテンシーのモデル化が必要です。

モデル化するためには、自社のコンピテンシーを特定し、評価基準を設けなければいけません。つまりオリジナルのコンピテンシーモデルを作成する、ということです。

コンピテンシーモデルの作成にあたっては、WHO(世界保健機関)が定めた「WHOグローバル・コンピテンシー・モデル」が参考になるでしょう。

以下の図表は、WHOグローバル・コンピテンシー・モデルの概要をまとめたものです。

コア・コンピテンシー
1. 確実で有効な方法でコミュニケーションを行う
2. 自分自身をよく知り、管理できている
3. 成果を出す
4. 変化する環境の中で前進する
5. 連携とネットワークを育てる
6. 個性や文化の違いを尊重し、奨励する
7. 手本となり模範となる
マネジメント・コンピテンシー
1. エンパワメント的で、やる気の高まった状況を作り出す
2. 資源の効果的な活用を確実に行う
3. 部門組織をこえた協働を築き、推進する
リーダーシップ・コンピテンシー
1. WHOを将来的な成功へ推し進める
2. 改革や組織的な学習を進める
3. 保健のリーダーシップ上でのWHOの地位を高める

WHOは、コンピテンシーを「コア」「マネジメント」「リーダーシップ」という3つのカテゴリーに分類しました。そして各カテゴリーの中で合計13項目の行動特性を定義しています。

またWHOは、項目ごとに「適切な行い」と「不適切な行い」も併せて例示しています。

WHOによるモデルの他にも、ATD(米国の世界最大級の人材・組織開発に関するNPO)が発表したコンピテンシーモデルや、IPA(日本の情報処理推進機構)による「i コンピテンシ ディクショナリ」等があります。

コンピテンシーモデルの作成にあたっては、そちらも参考にしてみると良いでしょう。

参考:・コンピテンシーの意味とは?人事評価に活用するモデル化を解説

6.採用活動のためのコンピテンシーモデルの作成

自社でコンピテンシーモデルに沿った採用をしていく方針が決まったら、コンピテンシーモデルを作成するための枠組みを選択しなければなりません。

ここでは参考までにコンピテンシーモデルの枠組みと項目例を紹介します。

達成行動達成・正確性への関心/イニシアチブ/情報収集
援助・対人支援理解/顧客支援志向
インパクト・対人影響力インパクト・影響力/組織感覚/関係構築
管理領域他社育成/指導/チームワークと協力/リーダーシップ
知的領域分析・概念的思考/技術・管理等専門性
個人の効果自己管理/柔軟性/組織コミットメント/自信

また、モデルをどのように決めていくかという視点で考えると次の3つの選択肢があるでしょう。

・企業が求める理想の人物像
・実在する従業員の人物像
・理想の人物像と実在する人物像を融合

参考:・コンピテンシーモデルに沿った人材採用!自社の評価基準をぶらさずに採用していく

7.コンピテンシー面接の5段階評価

コンピテンシーモデルを使って採用面接を実施する際には、客観的な評価基準を使って評価を行っていきます。

コンピテンシーモデルに対し、今回採用したい人材レベルに該当する既存社員のコンピテンシーレベルがどのレベルにあたるかを設定し、募集者のレベルを評価します。

レベル行動
1受動行動受動的、場当たり的、思考の一貫性がない
2通常行動工夫がない、決められたことを行う、普通
3能動・主体的行動工夫する、主体性がある、より良い結果を求める
4創造・課題解決行動PDCAサイクルを回す、高い成果を出す
5パラダイム転換行動イノベーション、リーダーシップ

参考:・コンピテンシーモデルに沿った人材採用!自社の評価基準をぶらさずに採用していく

8.コンピテンシーの研修における活用

これまで人事評価と採用活動におけるコンピテンシーの扱いを説明してきましたが、コンピテンシーは研修においても活用することが出来ます。

コンピテンシーを活用する研修には2つのタイプがあります。

・コンピテンシー・モデル自体を研修のなかで受講者が作成するタイプ
・コンピテンシー・モデルの作成を人事部が行い、作成されたコンピテンシー・モデルをもとに研修を行うタイプ

① コンピテンシー・モデルを研修内で作成する場合
研修にコンピテンシー・モデルの作成を含む場合、人事部の作成が不要となる分の工数とリソースが削減できます。

社員同士がみずからモデルを作成することで、共通の認識と深い理解を得ることができ、モデルを再現しようとする自発的・積極的な行動がより期待できます。

一方で、企業の経営戦略に沿っていないなど、コンピテンシー・モデルとは認められないモデルが作成されるリスクもありますので、研修担当者がしっかりサポートする必要があります。

② コンピテンシー・モデルを人事が作成する場合
コンピテンシー・モデルを人事部が作成する場合、研修前までにハイパフォーマーへの調査・分析と、受講者に対して行ったアンケートをもとに、企業のコンピテンシー・モデルを作成します。

工数とリソースはある程度必要となりますが、自社が必要とする人材開発体系の検討など、企業全体の人材戦略・マネジメントにも活用できます。

参考:コンピテンシー研修とは? 研修の具体的なポイントについて解説!

9.コンピテンシー研修実施のポイント

9.1 コンピテンシー・モデルを研修内で作成する場合

コンピテンシー・モデル自体を研修のなかで受講者が作成するタイプの場合は、ワークショップのような形式が適切です。

たとえば、下記1~3の手順で研修を進行していきます。

1.「コンピテンシーとはなにか」を知る

2.会社の業績を上げる行動を検討し、コンピテンシー・モデルを作成する

・社員全員が意識して考えるべき「行動」を抽出・選択する
・職種ごと・部署ごとに班に分かれ、班ごとの「行動」を抽出・選択する

ここでは、コンピテンシーを動機・意識レベルにまで落とし込み、そこから評価に値する行動を、なるべく限定しすぎないように言語化し、コンピテンシー・モデルを作成します。
柔軟性のあるコンピテンシー・モデルを作成することで、その後の具体的な行動を計画していくなかで大きく成果を出すカギとなります。

3.具体的な行動を書き出して、行動計画に落とし込む

研修終了後は、「行動計画に対し実施できているのか」「実施できていないのはなぜか」といった点をチェックできるフォロー研修を実施し、ある程度のレベルに達したら、さらに上のコンピテンシーを目指していく人材育成を継続します。

9.2 コンピテンシー・モデルを人事が作成する場合

コンピテンシー・モデルの作成を人事部が行い、作成されたコンピテンシー・モデルをもとに研修を行うタイプでは、人事部が事前にコンピテンシー・モデルを抽出・作成を完了したうえで、下記の1~2の手順で研修を実施していきます。

1.セルフチェックシートを用いた現状とゴールの明確化
コンピテンシーの項目と段階が記載されたセルフチェックシートを用いて、受講者の現在地と目指すべき行動を明確化します。

2.具体的な行動を書き出して、行動計画に落とし込む
研修の中で参加者に具体的な行動計画を立案させ、行動変容とパフォーマンスの向上を促進します。

行動計画のうち学習コンテンツに関しては、参加者が選択できるように研修担当者が事前に用意しておくとよいでしょう。
学習コンテンツの一例は下記の表になります。

達成行動達成・正確性への関心などリーダーシップ
援助・対人支援理解/顧客支援志向コミュニケーション
インパクト・
対人影響力
インパクト・影響力/関係構築などコミュニケーション・論理的思考
管理領域他社育成/指導/リーダーシップ等マネジメント・リーダーシップ
知的領域分析・概念的思考/技術・管理等専門性論理的思考・専門講座
個人の効果自己管理/柔軟性/組織コミットメントなどセルフマネジメント・リーダーシップ

参考:・コンピテンシー研修とは? 研修の具体的なポイントについて解説!

10.まとめ

日本企業における従来の社員の評価方法、採用活動、及び研修では、明確な基準・方法が存在しないため、担当者の大きな負担となってしまったり、会社にとって戦力となる可能性のある人材を見逃してしまったりと、その曖昧さのために様々な不利益が生じることが当然とされていました。

しかし、コンピテンシーの概念を活用することによって、自社にとって利益をもたらす人材の特性の把握が可能となり、上記の活動に更なる効率化と再現性をもたらします。

企業の担当者の方は、コンピテンシーによる評価の導入を検討する際、自社のハイパフォーマーの行動特性の特定から始めてみてはいかがでしょうか。

【著者プロフィール】
「ラーニング・イノベーションLABO」編集部
人事領域において人材開発やDX・ITにおけるクリティカルな情報をお届けします。
また、人事担当者の方々が日々抱える人材育成、人材開発における課題を整理し解決していくメディアを目指しています。
人材開発の先にある、社員の方一人一人の自己開発型人材の実現を目指し気づきと学びを提供するべく情報をお届けしていきます。
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