HRサミット2017最新のHRテックとその応用

目次

最新のHRテックとその応用 ~ここまで来たAIとビッグデータ~

サムトータル・システムズ株式会社 代表取締役社長 平野 正信 氏 世界的に労働力の確保が難しくなる中、これからの企業には、今いる社員を大切にしながら、社員一人ひとりの生産性を向上させることが求められています。その実現に寄与する新たな人材育成やタレントマネジメントを支えるのが、A(I 人工知能)とビッグデータを中心とするHRテクノロジーです。本セッションでは、HRテクノロジーの最新事情と、「AI+ビッグデータ」が人事・教育システムをどう変え、何ができるようになりつつあるのかについて、わかりやすく解説いたします。

日本の現状とHRテクノロジーの役割

当社は、ラーニングやタレントマネジメントなどの人事ソリューションを全世界に供給しているグローバルなITベンダーであり、顧客企業は全世界で約3,500 社にのぼります。日本法人は2001年に設立し、日本のお客様のさまざまな人事課題に対応したソリューションをご提供しています。今日は、最近、私たちの製品にも導入が進んでおり、人事分野でさまざまなことを実現し始めているHRテクノロジーについて、最新事情をお話ししたいと思います。 初めに、日本企業のHRにおける現状と課題を整理すると、やはり、大きいのはこれから始まる人口減少という問題です。国土交通省「国土の長期展望」(2011年)によれば、現状のまま進んだ場合、2100年に日本の総人口は5,000万人にまで減少すると推計されます。これは明治末期の人口規模です。生産年齢人口の割合も2060年頃まで低下し、50%台になるという予測データもあります(国際連合「WorldPopulationProspects:The2012Revision」等による)。ただし、この傾向は日本だけでなく各国で見られており、労働力の確保は世界的に難しくなるということです。加えて、近年、日本の一人あたりGDPは先進諸国の中で徐々にランクを下げ、OECD34カ国中20位まで下がっています。 つまり、企業の人事部門にとってみれば、今後は人を採用することがより困難になり、今いる社員を大切にしながら、社員一人ひとりの生産性をいかに向上させていくかということがきわめて重要になるわけです。そのためには、例えば、教育やパフォーマンスマネジメントといったことを新たに考えていかなければなりません。そのとき、力になるのがHRテクノロジーです。

ビッグデータ以前のデータベース・テクノロジー

HRテクノロジーは、今、非常に注目されているワードです。中心となっているのはビッグデータとA(I人口知能)であり、これからの人事システム、教育・人材育成システムで採用されていく、現在進行形の最新テクノロジーです。 これらが実際どういうものなのかをご説明するために、少し歴史的なお話をしたいと思います。まず、ビッグデータが登場する以前、コンピュータの世界では、整理された情報の集まり、言い換えると、データを蓄積でき、検索できる情報の集まりをデータベースと呼ぶようになり、この用語が定着していました。1970年に論文発表されたRDB(RelationalDatabase:関係データベース)が、現在の基幹系システムにおけるデータベース・テクノロジーの基本です。現在の企業向けITシステムは、皆さんがお使いの人事システムも含めて、ほぼ例外なくRDBを中心にシステムが構築されています。 RDBの特徴は、データの集まりを効果的に管理するため、データ構造と呼ぶ形式をあらかじめ定めておくことです。そのため、データの一貫性が保証され、複雑な条件での検索が可能になるといった大きなメリットがありますが、一方では欠点もありました。データ量が多くなると制御が複雑になりますし、データ構造が異なるデータを大量に持つと、管理も大変になるのです。関係性のないデータを蓄積しても、データベースとしてのメリットは何も生まれません。ということは、インターネットには向かないのです。

インターネットが普及し、ビッグデータが登場

ビッグデータが出てきた背景にあるのは、インターネットです。インターネットの原型は1970 年代に米国で生まれ、1991年には世界初のウェブ・ブラウザが登場しました。蜘蛛の巣状にコンピュータがつながっていて、そのコンピュータが内部に持っているデータを閲覧するのがブラウザです。やがて、インターネットにつながっているコンピュータの数は加速度的に増え、億単位になりました。億単位のコンピュータの中に、ばらばらになったデータ構造が、ほぼ無限に存在しているようなイメージです。そこで、関連性のないデータで構成されているウェブのデータを、どうやって取り出すかということが、大きな課題になりました。従来のRDBの技術で検索エンジンを開発しても、うまく取り出せないわけです。そこで生まれたのがビッグデータです。 つまり、ビッグデータとは、単に大きいデータベースということではなく、関連性のない膨大なデータから必要なデータをいかに迅速に取り出すか、という仕組みを持ったデータベースなのです。

人間の脳の仕組みをコンピュータでつくる

次にAIですが、こちらは1950年頃から研究が始まったものの、開発に挑んでは挫折する歴史が繰り返されてきました。当時のコンピュータが遅すぎたためです。いくら理論的に優れたロジックを実装しても、コンピュータの性能が追いつかず、答えにたどり着きません。AI研究者の中からは、プログラミング言語を使って人工知能をつくろうとする当時の考え方が、そもそも間違いではないかと唱える人も出てきました。時は移り、今の人工知能は、当初の考え方を捨て、脳の仕組みをそのままコンピュータ言語化しようという発想から生まれています。 脳の仕組みにおいて、まず大事なのは記憶容量です。いろいろなことを記憶していることと、その記憶を使ってうまくロジックとして考えること、この2つの機能が重要です。ニューロンと呼ばれる脳の神経細胞の数は、人間の脳全体では一千数百億個(百数十ギガ)ですが、今のパソコンのハードディスク容量も、数百ギガから1テラになり、人間の脳細胞に近いところまで来ました。 ようやく、人間の真似事ができるところまでコンピュータの性能が上がってきたのです。

急激に進化するAIの行き着く先

脳の仕組みを人工的にシミュレーションしたものを、ニューラルネットワークと呼びます。脳の神経細胞のネットワークを、コンピュータでも同じような形でつくろうとして生まれたのが、今の人工知能です。1997年にIBMのDeepBlueがチェスの世界チャンピオンに勝ちましたが、Deepはニューロンとほぼ同じ意味で使われる言葉です。ニューラルネットワークの考え方が、現在のディープラーニングへと発展してきているわけです。 2016年、グーグルの子会社、DeepMindが開発したAI 囲碁「AlphaGo」が人間のプロ棋士に勝利したことは、AIの歴史において画期的な出来事でした。1980年代に考えられていたAIのやり方では、人間に勝てる囲碁のソフトは100年たっても開発できないと言われたものですが、ニューロンやディープラーニングといった今のAIは、それを実現できるまでに進化したのです。 さらにAIが進化するといずれ行き着くと考えられているのが「シンギュラリティ(特異点)」です。現在のAIは人間がロジックを改良し、徐々に進化していますが、このシンギュラリティに到達すると、AI自体が自らを改良するようになり、それまでとは異なる飛躍的な進化の段階に突入するとされています。データもAIが自分で勝手に集めてしまい、やがては、人間が開発しなくてもAIが勝手に進化できるようになる。SFの世界のようですが、専門家の間では、その時期がいつなのか、30年後かそれとももっと早いのかなど、さまざまに議論されています。シンギュラリティにどう対処するかが、今のAIの大きな論点になっています。

「AI+ビッグデータ」でHRシステムが変わる

では、「AI+ビッグデータ」がHRシステムにどう応用されるのでしょうか。AIとビッグデータを両方備えるメリットとしては、まず、データ量が多くなります。社員が1万人いても5万人いても、あらゆるデータを整理せずに放り込むだけでかまいません。 参照するデータが多ければ多いほど、正しい答えが出やすいのです。言い換えると、データ量が十分にあると多くの仮説を出すことができ、それぞれを多角的に検証できます。したがって、抜けがなくなります。偏りのない基準を設定し、対象を客観的に評価できるようになるのです。 これまでの人事システムでは、集まったデータの分析や判断は、最終的に人間が行っていました。データが複雑になると機械では処理できなかったからです。しかし、「AI+ビッグデータ」の実装が本格化すると、それを機械ができるようになります。

採用、教育、人材発掘などで、何が可能になるか

具体的に人事分野で何ができるかというと、例えば、採用では、ポジション・マッチングです。米国にはすでに実施している企業がありますが、候補者にゲームをさせると、行動特性データの収集・分析をAIが行い、その結果から、この人にはこういう職種が向いているといったことをAIが予測してくれるのです。 また、教育では、社員一人ひとりに合わせたリコメンデーションができます。必須コースに関し、本人の進捗に合わせて、次のどのコースを受講すべきかをガイドするほか、必須コース以外のコースをシステムがリコメンドすることで、社員の学習への興味やモチベーションを高めることができます。研修のカリキュラムや学習内容は、これまで人間が作成していましたが、誰が作成するかによって偏っている可能性があります。「AI+ビッグデータ」の特長は、非常に客観性の高い答えが出やすいことですから、人に依存しない客観的なカリキュラムや学習内容を機械的につくれるようになるのです。 さらに、創造力やアイディアを持った人材を発掘する新しい手法が生まれます。アイディアを出させてみて、独創性、新しいアイディアをつくり出す能力、アイディアの豊富さなどを測るアセスメントと分析をコンピュータ化することによって、ある人の意外な能力が見つけられる可能性があります。 そのほかにも、一年中、社員が業務でシステムをさわっている中で、システム自体が社員の行動特性データなどを集めることによって、一人ひとりの個性に合った教育や、公平できめ細かい評価を行うといったことも可能になってきます。 こうしたことは、すでに一部が実現し始めていますが、今後、さらに大きな動きになってくるでしょう。ご参考にしていただければ幸いです。

HRサミット2017/HRテクノロジーサミット2017内にて

平野 正信 氏 サムトータル・システムズ株式会社 代表取締役社長 IBMの開発エンジニア、日経マグロウヒル社(現日経BP社)記者、ハイペリオン日本法人代表、レッドハット・アジア担当VPなどを経て現在に至る。記者としての人脈、ソフトウエア全般、会計、人事などのITソリューションなどの豊富な経験を生かし、業界のビジョナリーとして活躍。明快な説明に定評がある。
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