HRサミット2015 スペシャルインタビュー”ものづくり”から”ものこと&ひとづくり”へ

提供:サムトータル・システムズ株式会社
東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
田中 芳夫氏

田中 芳夫氏 Profile▶ 東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
1973年東京理科大学工学部電気工学科卒業、同年、住友重機械工業(株)に入社、Online system設計などのシステム開発に従事、1980年に日本IBMの研究開発製造部門に入社。世界向けの製品・サービス・ソフトウエアの開発、マネージメント、および 副社長補佐。1998年にIBM Corporation R&D Asia Pacific Technical Operation担当。
2001年研究開発部門 企画・事業開発担当理事。2005年マイクロソフトCTO就任。2007年(独)産業技術総合研究所参与、青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授。2009年東京理科大学大学院教授、国際大学GLOCOM 上席客員研究員、日本工学アカデミー会員

目次

低迷の理由は、通用しなくなった日本のビジネスモデル

――2014年4月に「ものこと双発学会」と「ものこと双発協議会」が設立されました。この協議会、学会は、2009年に経済同友会に設けられた「もの・ことづくり委員会」の活動を踏まえて設立され、田中先生は委員会、協議会、学会のいずれにも世話人や理事として関わってこられました。まず教えていただきたいのは、なぜ、いま「ものこと」という視点が必要なのかということです。日本が抱える課題について教えてください。

 戦後日本は「もの」を追求することで成功をおさめました。QCD(品質:Quality、価格:Cost)、納期:Delivery)にこだわり、「いいものは売れるはずだ」という信念を持ち、高品質の製品を大量にかつ廉価に提供することが企業の役割だと考えてきました。そして1980年代に世界一の技術大国になったのです。しかし1990年代から世界一の座は揺らぎはじめました。そして今世紀に入ってから日本の地位は下がり続け、世界のトップを走っていた製造業は低迷し、苦しんでいます。
 その理由は日本のビジネスモデルが通用しなくなったからです。ICTがすさまじい速度で進歩普及したことにより、日本が得意としていた「品質・コスト・大量供給」は強みではなくなったのです。今世紀に存在感を増し台頭しているアップル、グーグル、フェイスブックなどは新たな仕組みあるいは価値提案をして成長しました。
 これに対し、わが国は、ICTによるグローバルなビジネス展開の波に乗りきれておらず、新たなニーズ、ビジネスのあり方を提案するというよりは、他国が切り拓くICTインフラを部分的に享受する「ものづくりに留まっている面が大きいと思います。いまだに日本メーカーの製品は評価されていますが、大きな利益を上げていません。
 たとえばiPhoneです。初期のiPhoneはほとんどが日本製部品で製造されていました。しかしiPhoneによって膨大な利益を上げたのはアップル社でした。また現在のiPhoneは台湾、韓国、中国の部品と組み立てメーカーによって製造されています。

技術を自社内に囲い込もうとした日本メーカーの衰退

――1990年の頃の半導体産業で日本の存在感は圧倒的でした。またつい10年前までは日本の液晶産業は世界に冠たる水準にありましたが、いずれも優位性を失いました。なぜ衰退したのでしょうか?
 
 半導体も液晶も、技術の強みは製造ノウハウにあります。製造装置はどの国のメーカーでも買うことはできますが、シリコンに添加物をどの温度でどのくらいの時間で加工するかのパラメーターがわからなければ製品を作れません。だから製造ノウハウが奪われまいと日本メーカーは必死だったのです。シャープの亀山工場は窓のない工場として有名で、万全の技術流出対策が施されていました。しかし、液晶の製造ノウハウは他国のメーカーに流出しました。ノウハウを知るエンジニアがスカウトされて、製造パラメーターが流出したからです。
 エンジニア流出によって日本メーカーの競争力が低下したのは、1990 年代の半導体産業でも起こったことです。技術を自社内に囲い込もうとした日本メーカーが、自社エンジニアの流出で優位性を失ってきたことは皮肉な構図とも言えます。
 このように、日本ではエンジニア流出がメーカーの競争力低下という致命的な結果をもたらしていますが、欧米企業ではそのような例をあまり聞きません。アップルやグーグルでは1週間に数百人以上のエンジニアが入社し、その半数以上が辞めていくそうです。人材の流動性がきわめて高いのです。

GEは「インダストリアル・インターネット」、ドイツ政府は「インダストリー4.0」

――日本では企業内に閉じる開発が主流ですが、欧米ではまったく異なるイノベーションモデルが提唱されているそうですね。
 
 世界最大のコングロマリットであるGE は、「インダストリアル・インターネット」という概念を提起しています。GEは世界最大のジェットエンジンのメーカーですが、センサーが常時エンジンを監視し、故障を予測できれば、エンジン負担を軽減し、燃料費も節約でき、また遅延によるコスト負担も軽減できます。
GE はヘルスケア分野にも進出しており、同様の仕組みが使えます。つまり製造業がサービス業に変貌し、この仕組みはIOT(Internet of Things)と呼ばれることもあります。GE は「世界最大のIT ベンダーになる」と言っています。

 ドイツ政府は「インダストリー4.0」という言葉を使い、ドイツの主要企業を含む産官学の多くの組織や団体が参加する、新たなモノづくりの形を提起しています。意味するものは第4 次産業革命です。
 3Dプリンタの登場も革命的です。コンシューマーの多様なニーズがあっても、製品にするには時間とコストがかかりました。しかし3D プリンタが普及すると、ニーズに基づいてただちに製造することができます。一つひとつ異なる製品を一人ひとりのコンシューマーに提供できるのです。
 しかし、日本メーカーは、このような変化を理解していません。あるいはそうなって欲しくないと考えているのかもしれません。

Open Innovation2.0の背景

――Open Innovation2.0という言葉が使われています。その背景を教えてください。

 1990 年代以降にイノベーションについては多くが語られました。そして2000 年代になってOpen Innovation と言う言葉が登場しました。組織の枠組みを越えて、知識と技術の結集を図ってイノベーションを起こすことです。産学官連携プロジェクト、異業種交流プロジェクト、大企業とベンチャー企業による共同プロジェクトなどが挙げられます。
 Open Innovation が言われ始めてもう10 年が経ち、その間に世の中はすっかり変わりました。日本では2011 年の東北大震災と福島原発事故、経済界では2008 年のリーマンショックがありました。
 そしてICT はすっかり社会に定着し、IOT が現実化しています。この10 年間で仕事のやり方も一変しました。
 そこでOpen Innovation の進化形としてOpen Innovation 2.0 という概念が生まれたのです。
すでに欧米ではベンチャー企業がWeb 上でマネーを集め、アイデアを製品化して成功をおさめるクラウドファンディングが普及しています。

尖った人材がイノベーションを成就させる

――「ものこと双発学会」や「ものこと双発協議会」でいう「こと」について教えてください。 また「こと」を生むために必要な「ひとづくり」について最後に教えてください。

 従来のものづくりは、製品を起点として製品で収益を上げるものでした。しかし、このモデルは過去のものです。
iPhone などのビジネス成功モデルを分析すると、製品起点・サービス収益というモデルもあるし、サービス起点製品収益というモデルも成功しています。つまり、ものはものだけでビジネスモデルにならず、こと(仕組み)が必要と言うことです。
 ただ、「ものこと」だけでは足りません。イノベーションを生み出すのは「人」です。常識に囚われず、挑み、壊す人材がイノベーションを成就させるのです。だから「ものこと」と「ひとづくり」は一体で考えなくてはならないでしょう。残念ながら日本企業は尖った人材を育てるのが苦手です。出る杭を打つような組織、仕組みからイノベーションが生まれるはずはありません。
 これからの日本にとってもっとも重要なのはGlobal 人材戦略です。その詳細については6 月4 日のHR サミットでお話ししたいと思います。

【会社概要】

社名 ▶ サムトータル・システムズ株式会社
英文社名 ▶ SumTotal Systems Japan
設立 ▶ 2001 年
住所 ▶ 〒1500002 東京都渋谷区渋谷1-4-2 アーバンプレム渋谷4F
代表者 ▶ 代表取締役社長 平野 正信
事業概要 ▶
・ラーニングマネジメント・パフォーマンスマネジメント
・報酬管理・後継者計画・キャリア開発・360 度評価・採用管理
・ソーシャルコラボレーション・人事管理(HRMS)
問合せ先 ▶ 03-6823-6400
URL ▶ http://japan.sumtotalsystems.com/

【講演情報】

6 月4 日(木)13:40~14:40
“ものづくり”から“ものこと&ひとづくり”へ
Open Innovation 時代の企業のGlobal人材戦略

東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
田中 芳夫氏

6 月2 日(火)13:40~14:40
e ラーニングコンテンツによる効果的なラーニングマネジメント
サムトータル・システムズ株式会社 マーケティングディレクター
古沢 淳氏

6 月5 日 ( 金) 13:40 ~14:40
タレントマネジメントで会社を変える
―最新のIT を活用すれば人事はここまでできる

サムトータル・システムズ株式会社 代表取締役社長
平野 正信氏

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