離職率が高い業界・企業は?ランキングから見る業界・企業の特徴について徹底解説
人事においては、優秀な人材を採用し、さらに活躍できる人材に育てていくことが求められます。
しかし、これらは「人材の定着」とセットになって初めて大きな意味を持ちます。
せっかく優秀な人材を採用し、育てたとしても、すぐに離職してしまう人が多ければ、十分な成果を得ることはできません。
実は、離職率は業界によって大きく異なります。
業界ごとの離職率から「離職率が高い業界の特徴」を読み解くことは、自社に人材を定着させていくためのヒントになるはずです。
そこでこの記事では、業界ごとの離職率のランキングから業界の特徴を読み解き、自社に人材を定着させるためのポイントを紹介します。
【業界別の離職率ランキング】離職率の高い業界・低い業界はどこか?
早速、厚生労働省が調査した令和3年上半期の業界別離職率の状況を確認してみましょう。
このグラフを、離職率の高い業界順に並べ替えると以下のランキングとなります。
ランキングトップは「宿泊業、飲食サービス業」で15.6%、逆に最も離職率が低い「金融業、保険業」は4.3%でした。
両者の間には約10%の差があります。
離職率の高い業界の特徴
前項では離職率の高い業界のランキングを確認しました。
しかし、離職率のデータはあくまでも「業界の平均」でしかなく、実際には企業ごとにばらつきがあります。
ランキング1位の「宿泊業、飲食サービス業」の中にも離職率が低い企業があるでしょうし「金融業,保険業」の中にも離職率のとても高い企業はあるかもしれません。
また、離職率のデータ自体もあくまでもデータ、数値でしかないので一概に離職率をこのデータのみで判断することはお勧めしません。
大切なのは、離職率の高い業界の特徴を分析することです。
離職率の高い業界のおもな特徴や傾向としては以下になります。
BtoC業界に偏った傾向
企業の事業・サービスには大きく分けて、企業(法人)に対して事業・サービスを提供する形態のBtoB(Business to Business)という形と個人に対して事業・サービスを提供する形態のBtoC(Business to Customer)という形があります。
ランキングの上位に入っている業界はほとんどがBtoC業界です。
あくまでも傾向ではあるのですがBtoC業界が高い傾向が出ています。
労働条件が悪い
労働条件が悪い職場環境も従業員は定着しにくく、離職率は高くなります。
令和2年雇用動向調査結果の概要によると、転職入職者が前職を辞めた理由のうち「定年・契約期間の満了」「その他の理由(出向等を含む)」を除いた上位は、以下になっていました。
【男性】
給与等収入が少なかった:9.4%
職場の人間関係が好ましくなかった:8.8%
労働時間、休日等の労働条件が悪かった:8.3%
【女性】
職場の人間関係が好ましくなかった:13.3%
労働時間、休日等の労働条件が悪かった:11.6%
給与等収入が少なかった:8.8%
データからも、労働条件が悪い職場環境は退職の要因となっていることがわかるでしょう。
ただし、残業などで労働時間が増える理由もさまざまです。
たとえば、BtoC業界では、日中は接客で事務仕事に手が付けられず、顧客が帰った後に残業しなければならないケースもあるでしょう。
一方で、従業員に責任のある仕事を積極的に任せたり、企業の成長と従業員の成長により結果的に労働時間が増えることも考えられます。
残業時間が多いことと離職率の相関は企業ごとや個人ごとによって個別の理由があることは間違いありません。
平均年収が低い
転職サイト大手のdodaの平均年収ランキングによると、令和3年(2021年)の業種分類別平均年収は、小売/外食、サービス業に低い傾向がみられました。
参照:doda 平均年収ランキング(96業種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】
小売/外食、サービス業は、離職率の高い業界と重なる業種であることから、離職率が高い業界は平均年収が低い傾向にあるといえるかもしれません。
労働時間や負担が多く、給与が少ないといったことから、人材が定着しにくい傾向が見て取れます。
ただ、年収が低いことにより離職率が高いことの相関はあくまでも傾向で企業ごとや個人ごとによって個別の理由があることは間違いありません。
教育や福利厚生が十分でない
人材が定着しないと少人数に業務負荷が集中し、目の前の業務をこなすことだけに追われてしまいがちです。
教育などを十分におこなうこともできず、福利厚生などのシステムを整えるのも難しくなってしまうでしょう。
その結果、ますます人材が定着しにくくなってしまうという悪循環も起こりやすいことが予測されます。
離職率を抑え、優秀な人材を定着させるポイントとは?
離職率が高い業界のランキングから、離職率の高い業界のおもな特徴を見てきましたが、自社の離職率を下げ、人材を定着させるためにはどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
まずは以下の観点で自社の職場環境をチェックし、改善策を考え実行することが重要です。
採用時にミスマッチを防げているか
採用時に、業界の特徴や残業量、ノルマ、年収、福利厚生などを採用候補者に明確に伝えることで、採用後の退職を予防できます。
採用時に自社の良いところばかりを伝えるだけでは、入社後にミスマッチが起こって離職に結びつく可能性が高まります。
採用時には自社の良いところばかりでなく、課題や問題点も伝えるべきでしょう。
たとえば、「自社はこれから伸びていく業界で若い社員にもどんどん仕事を任せていいきます。
そのため残業が多くなる可能性があります。」といった伝え方になるでしょう。
入社前に実際に自社の職場環境を感じてもらうのもミスマッチを防ぐ方法になるでしょう。
具体的には、インターンシップや体験入社の導入があります。
労働管理が十分にできているか
働きすぎや、仕事量にかたよりがないかなど、社員の労務管理をきちんと実施する体制を整えることで退職を予防します。
長時間にわたって働く従業員の割合を管理して、心身の健康を維持しながらライフスタイルにあった多様な働き方を実現できるような職場環境を整備する必要があるでしょう。
労働基準法に基づく長時間労働の抑制はもちろんのこと、フレックスタイム制の導入や代替休暇の付与などの取り組みも検討しましょう。
福利厚生・手当は十分に整っているか
社員の価値観やライフイベントのニーズに合った福利厚生や手当が整っているかを確認し、改善を目指します。
労働環境・待遇は適切か
労務環境や待遇面が適切であるかを確認し、改善を目指します。
離職率の高い業界の特徴の章でも紹介しましたが、厚生労働省が調査した「令和2年 雇用動向調査結果の概況」によると転職入職者が前職を辞めた理由で割合が高かったのは、定年や契約期間満了を除くと男性は「給与等収入が少なかった」次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」の割合が高く、女性は「職場の人間関係が好ましくなかった」次いで「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」の順となっています。
社風や職場の人間環境は良好か
社風や職場の人間関係も社員が退職を決める大きな理由になります。
自社の現状をふまえ改善を目指す必要があります。
先に挙げた「離職率が高い業界の特徴」については、もちろん業界によっては変えることがほぼ不可能な項目もあります。
しかし、上記のポイントに沿って自社の環境を見直し、少しずつ改善に向けて動き出すことができれば、現状よりも人材が定着しやすくなるでしょう。
また、人材が定着しやすい環境になれば採用時にアピールができ、よい人材が集まりやすいという好循環にもつながります。
業界別の離職率ランキング:年別推移
過去のデータと比較すると業界別の離職率がどう変わってきたかを知ることができます。
参考に業界別の離職率ランキング年別推移のグラフを見てみましょう。
ランキングトップの「宿泊業、飲食サービス業」は変わりませんが、下位の業界については、順位の変化がみられます。
参照:令和2年雇用動向調査結果の概要/厚生労働省
ランキングトップは「宿泊業、飲食サービス業」で26.9%、逆に最も離職率が低い「鉱業,採石業,砂利採取業」は5.6%でした。
参照:令和元年雇用動向調査結果の概要/厚生労働省
ランキングトップは「宿泊業、飲食サービス業」で33.6%、逆に最も離職率が低い「複合サービス事業」は7.9%でした。
参照:平成30年雇用動向調査結果の概要/厚生労働省
ランキングトップは「宿泊業、飲食サービス業」で26.9%、逆に最も離職率が低い「鉱業,採石業,砂利採取業」は6.7%でした。
まとめ
◆離職率の高い業界をランキングで確認し、それらの業界の特徴について解説してきたが、もちろん、該当する業界の全企業に当てはまるわけではなく、その業界の全企業の離職率が高いということでもない。
◆企業ごと個人ごとそれぞれに理由があり一概にいえないが、離職率の高い業界の特徴を見てみると、労働時間や負担の大きさに対して報酬が少ないと感じられていることが、離職率が高い要因の1つのようにも見える。
◆離職率が低くなり人材が定着するようになれば、労働環境が改善され、さらに多くの人材が集まるようになるなど、好循環が生まれる。ぜひ自社の環境を見直し、少しずつ改善に向けて動き出してみよう。
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