第4回 青い鳥は存在するのか?~「理想の職場」について考える~【前編】

2019.02.05 
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第4回 青い鳥は存在するのか?~「理想の職場」について考える~【前編】

みなさんこんにちは。
このコラムでは「健康経営」というキーワードを中心に、人事関連の様々なトピックについて考えていきます。

これまでの連載では、生産性やハイパフォーマー分析/ローパフォーマー分析と健康経営のかかわりといった、比較的「お堅い」内容のトピックについてお話してきました。
今回はソフトに、「毎日仕事に行くのが楽しくなるような理想の職場とは」について、前編・後編で考えてみたいと思います。今回は前編です。

少し前の話になるのですが、2018年7月24日に、慶應ビジネス・スクールの特別公開講座が開催されました。

登壇したのはハーバード・ビジネス・スクールのゲイリー・P・ピサノ教授で(注1)、演題は、「Creative Construction:The DNA of Sustained Innovation」でした。講演の内容を一言で表すと「イノベーションを起こすために経営者がなすべき仕事(Job)」で、非常に示唆に富んだ素晴らしい講演だったと思います。(注2)

演題からわかるように、メインテーマはイノベーションで、これはこれで重要な経営課題です。

しかしながら、本コラムのメインテーマは「健康経営」であり、今回のお題は「理想の職場とは?」です。
従って、それに沿った内容でなければこれ以上話を進めることはできませんが、ピサノ教授はちゃんと僕たちの関心事についても重要な示唆を与えてくれていました。

ピサノ教授は講演の中で、イノベーションを起こすために経営者がなすべき最も重要かつ難しい仕事として「Build the culture」、すなわち「企業文化を創り上げること」を挙げていました。
そして、誰もが「そうあってほしい」と思っている企業文化として、次の5つの要素を提示しました。

1) Tolerance for failure(失敗に対して寛容であること)
2) Willingness to experiment(積極的にチャレンジできること)
3) Collaborative(スタッフがみな協力的であること)
4) Freedom to speak up(誰でも自由に発言できること)
5) Flat(フラットな組織であること)
(すべて執筆者訳)

僕がまだ企業で働いていたときに漠然と思い描いていた「外資系企業」「ベンチャー企業」の組織風土は、まさにこんなイメージでした。

具体的な会社名は皆さんのご想像にお任せしますが、様々な媒体でもてはやされたり、講演等で紹介されたりしている事例をまとめると、確かにこんな感じになりそうな気がします。

この5つの要素を見て、皆さんはどのように思われましたか?

もちろん好印象ですよね。
どれも非常に魅力的な要素です。
「毎日仕事に行くのが楽しくなるような理想の職場」って、こんな感じの職場ではないですか?

プレゼンティーズムとは無縁の世界のように思えます。
「健康経営」はどちらかというと「個人」に焦点があてられることが多いように思いますが、「組織」の観点で考えると、このような組織文化を実現させることも「健康経営」と言えるのかもしれません。

・・・しかし、残念ながら事はそう単純ではありませんでした。
この要素を紹介した後にピサノ教授が提示したオチに、僕は「やられた!」と思うと同時に、深く納得せざるを得ませんでした。

この要素を満たすことが極めて難しい、という話ではありません。
そうではなくて、この要素を満たした企業が持つ「裏の企業文化」の話です(注3)。

少し長くなってしまいましたので、ここから先の議論は後編に譲りたいと思います。
後編では、「裏の企業文化」の内容と、それが与える影響について述べていきます。「この理想的な職場、人によっては逆にプレゼンティーズムを招きかねない?!」という話です。

それではまた次回!

第4回 青い鳥は存在するのか?~「理想の職場」について考える~【後編】 に続く。

※本コラムは執筆者個人の考えに基づく論考であり、特定の企業や団体の意向を代表するものではありません。また、本文中に提示されている講演内容の紹介は、すべて執筆者の解釈に基づいています。

(注1)
ピサノ教授は、戦略論や組織論の研究者ではおそらく知らない人がいないであろう、世界的なスター教授です。ちなみに慶應ビジネス・スクールのスタッフの方によると「素晴らしく紳士的な先生」だったそうです。

(注2)
概要は慶應ビジネス・スクールのウェブサイトにアップされていますので、興味を持たれた方はそちらをご参照ください。

(注3)
「裏の企業文化」というのは僕のオリジナル表現で、ピサノ教授はそのような言葉は使っていません。

新改敬英 (Takahide SHINKAI)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 大学研究員

大手国際会計事務所等にて会計監査・M&Aアドバイザリーに従事したのち、
外資系メーカーおよび国内系医療・介護グループを経て研究者に転身。
民間企業在籍中は一貫して経営企画業務に従事し、
経営戦略立案、組織マネジメントから財務分析、人材採用までオールラウンドに手掛ける。
現在は九州大学大学院の博士課程に在籍し、会計学・組織マネジメントについて研究する傍ら、
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)の研究員として、
企業との共同研究・アドバイザリーに従事。(2019年3月現在)

参考リンク

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