第5回 エクセルでできる! ピープルアナリティクス超基本編⑤

2019.07.16 
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第5回 エクセルでできる! ピープルアナリティクス超基本編⑤

みなさんこんにちは。このコラムでは「健康経営」というキーワードを中心に、人事関連の様々なトピックについて考えていきます。

この第5回シリーズでは、人事ご担当者さまからのご要望が多かった「ピープルアナリティクス」の超基本編をお届けしています。

第5回 エクセルでできる! ピープルアナリティクス超基本編①
第5回 エクセルでできる! ピープルアナリティクス超基本編②
第5回 エクセルでできる! ピープルアナリティクス超基本編③
第5回 エクセルでできる! ピープルアナリティクス超基本編④

これまで4回にわたって、ピープルアナリティクス超基本編ということで、エクセルでできるいくつかの統計手法の基本を説明してきました。最終回となる今回は、ピープルアナリティクスを行う上で重要な考え方をお話ししたいと思います。

それは、「①とにかくやってみることが大事」「②解釈するのはあくまでも人間」「③ソフトウェアベンダーさんをフル活用」の3つです。

前回までで述べた内容と重複する部分もあるかもしれませんが、それはそれだけ重要だということでお考えいただければと思います。

それでは始めましょう。

目次

①とにかくやってみることが大事

個人としてのスキルを高める上でも、また人事としてデータを活用した仕事をやる上でも、スモールスタートで「とにかくやってみること」がすごく大事だと思います。

まず個人として。
データ分析は、特に文系の方にとってはなかなか最初の一歩が踏み出せない気がしませんか?少なくとも、大学受験の時に数学受験ナシの筋金入りの私立文系だった僕はそうでした。今では多少なりとも対応できるようになりましたが、手法を勉強したというよりは、まずデータがあって、とにかくそれをいろいろと触りながら必要に応じて手法をインプットしていった感じでした。

要はエクセルの関数を覚えるのと同じようなもので、「必要に迫られることで一つ一つマスターしていく」という過程が、遠回りのようで実は最も早くて確実だということなのかもしれません。

次に人事として。
人事の立場で「とにかくやってみること」には、2つの意義があると考えています。

第一に、入手可能な範囲のデータでまず分析して結果を出すことによって、次の展開につなげやすくなると思います。小さな成功事例をつくり、それを突破口にすることで、決裁権を持つ上長にデータ分析やタレントマネジメントシステム導入の説明・説得を行いやすくなるという展開が見えてきます。

第二に、実際にデータ分析を行ってみることによって、「どのようなデータを整備することが必要か」について考え、準備することができるようになります。

実際にやっていただくと分かりますが、データ分析は、データの整備ができれば半分は終わったようなものです。一方で、どのようなデータを集めるべきかは、アウトプット、すなわち「どのようなことを明らかにしたいか」が分かっていないと決められません。データを集めてくるのにもコストがかかり経営資源を消耗しますので、ある程度アウトプットのあたりをつけて収集することが重要になります。

しかしながら、どのようなデータを集めれば良いかについての正解はありません。ぐずぐず考えるよりも、まずは手元にあるデータで分析を行ってみて、そこから考えるのが最も早いと思います。いっぺんに完璧にできる必要はなくて、少しずつ(でもなるべく早く)分析能力とデータの蓄積を進めていけばよいのです。

すでに十分な機能を持つ人事システムを導入していて、データがそろっている場合はこの限りではありませんが、とにかく手元のデータで実際に分析を実践しながらあれこれ考えていくのが最良だと僕は思います。

人事データは紙、エクセルなど、バラバラに保管されていることが少なくありません。それをデータベースに集約するのは大変だと思います。ただ、データを確保するのに相当な手間を要する研究業界にいる立場からすると、「紙だろうとエクセルだろうと、それらが存在しているという時点で、もう立派なデータをお持ちじゃないですか」という気持ちです。手入力でも良いのでとりあえずデータ化して分析してみてください。そこから拓けることも多いと思います。

②解釈するのはあくまでも人間

データ分析は、勘や経験則に依らない客観的な示唆を得られるという点で、非常に優れた経営ツールです。新しい発見が得られるだけでなく、これまで「あたりまえ」と思っていたことが実際はそうではなかった、というように、人間のバイアスも修正してくれる可能性があります。

しかし一方で、扱い方を間違えると解釈を大きく間違えてしまう可能性が高い手法でもあります。それは、特に人事においては非常に致命的なミスにつながることもあり得ます。最も分かりやすいのは、「相関分析」の回で取り上げた「疑似相関」です(詳しくはシリーズ③をご参照ください)。

統計上は「強い相関あり」となった組み合わせがあったとしても、そこに第3の要素が関与している場合はその相関はニセモノの相関である可能性があります。それにもかかわらず、この相関関係を前提として人事施策が決められ、実行されたら・・・。

この疑似相関については、エクセルも統計ソフトも教えてはくれません。あくまでも我々人間が考え、判断する必要があります。

データ分析は勘と経験によるバイアスを排除してくれますが、同時にその勘と経験こそがデータ分析結果を生かす、と言っても良いかもしれません。まさに「論語」と「算盤」ですね。僕たちはデータ分析の手法と同等以上に、データの解釈について練習を重ねる必要があると思います。

③ソフトウェアベンダーさんをフル活用

本連載ではエクセルを使った統計分析について紹介してきましたが、お伝えしてきたようにその機能にも限界があります。

従って、事業の発展を前提とする限り、ずっとエクセルを使って分析し続けるのは少々無理があると言わざるを得ないタイミングが来ると思います(来ないとしたら、それはそれで問題です)。どこかのタイミングではベンダーさんのシステムを導入する必要が出てくるでしょう。

ベンダーさんは当然ながらシステムのプロフェッショナルですので、導入前のセールスの段階から分からないところはどんどん確認して、自社のノウハウにしていくことをお勧めします。

僕はベンダーさんの立場に立ったことはありませんが、ベンダーさんにとってもクライアントの相談に乗ることにはメリットがたくさんありますので、これはWin-Winだと思いますよ。

そして、データ分析の知識もここで生かされると思います。今ではほとんどの人事システムにデータ分析の仕組みが内蔵されている可能性が高いです。もし人事側にこの部分のリテラシーがなかった場合、導入しても「宝の持ち腐れ」になるでしょう。

クライアント側が「賢い利用者」になることで、ベンダーさんとの間に適度な緊張関係が生まれ、サービスのクオリティが双方にとってより良いものになっていくのではないでしょうか。

以上、ピープルアナリティクスを実施する上で重要だと思う論点を3つ述べました。少しでも参考にしていただければ幸いです。

さて、次回はいよいよ本コラムの最終回です。これまで述べてきたことを踏まえて、健康経営そして人事のこれからについて、私見をお話ししたいと思います。

それではまた次回!

※本コラムは執筆者個人の考えに基づく論考であり、特定の企業や団体の意向を代表するものではありません。また、本文中に提示されている講演内容の紹介は、すべて執筆者の解釈に基づいています。

新改敬英 (Takahide SHINKAI)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 大学研究員

大手国際会計事務所等にて会計監査・M&Aアドバイザリーに従事したのち、
外資系メーカーおよび国内系医療・介護グループを経て研究者に転身。
民間企業在籍中は一貫して経営企画業務に従事し、
経営戦略立案、組織マネジメントから財務分析、人材採用までオールラウンドに手掛ける。
現在は九州大学大学院の博士課程に在籍し、会計学・組織マネジメントについて研究する傍ら、
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)の研究員として、
企業との共同研究・アドバイザリーに従事。(2019年3月現在)

参考リンク

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