第3回 ハイパフォーマー分析が「健康経営」に繋がる?!その理由とは?【後編】

2018.11.09 
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みなさんこんにちは。
このコラムでは「健康経営」というキーワードを中心に、人事関連の様々なトピックについて考えていきます。

第3回ではHP/ハイパフォーマー(LP/ローパフォーマ―)分析と健康経営とのかかわりについてお話を進めています。
前編では、HP(LP)分析の基本的な進め方と留意点について簡単に述べ、中編では特にHP分析に焦点を当てて健康経営との関連性を論じました。
この後編では引き続きLP分析に焦点を当てて、健康経営との関連性について考えていきます。

先に申し上げておきますと、私はHP分析よりもLP分析の方により興味を持っています。
その理由は最後に述べたいと思います。

さて、前編で掲載したLP分析の図はこちらでした。

HP(LP)分析のアウトプットイメージ図
この架空の組織では、全体として特性Bと特性Eが他の特性に比べて低い傾向がLPには見られましたね。
この分析結果を受けてのアクション案としては、LPから一般的なレベルに引き上げるべく、特性Bと特性Eの改善を目的としたLP向けならびに全社員向けの研修制度を構築することが考えられるでしょう。

そして、(中編と同じく)健康経営の文脈において私たちが発見すべきLP人材のパターンがあります。それは次の2つです。

パターン①人材
特性Bと特性Fがそれほど低くないにもかかわらず、LPと評価されている人材
ハイパフォーマー分析 カシオヒューマンシステムズ

パターン②人材
特性Bと特性Fを含むほぼすべての特性が著しく低く、評価者による偏りなど関係なく本当にLPである人材
ハイパフォーマー分析 カシオヒューマンシステムズ

パターン①人材は、LPの特性が強くないにもかかわらずLPと判断されています。
上司や周囲とのフィット感が低く、いわゆる「くすぶっている」状態である可能性があります。
プラス側の特性の傾向に見合った部署に配置転換した上で、中編で論じた研修制度に乗せることによって、モチベーションと生産性の向上が期待できる可能性があります。

パターン②人材は、「判断に迷う」というのが正直なところかと思います。
企業には少なからず「採用責任」というものがありますので、当該スタッフのレベルを引き上げるよう、積極的にサポートする必要があるでしょう。
一方で、極めてシビアな見方かもしれませんが、この従業員の現在の処遇を見直すことも選択肢の一つとしてあり得ます。

以上の議論を踏まえると、LP分析には次の2つの価値があるというのが私の考えです。
まず、HP分析と同じく「適材適所の実現」のために有効である可能性があります。
HP特性を持つかどうかはわかりませんが、少なくともLP特性が弱いにも関わらずLPとされている人材は、仕事もしくは上司等の職場環境、あるいはその両方がフィットしていないために「くすぶっている」のかもしれません。

この状況を放置しておくと、遅かれ早かれプレゼンティーズム(注1)に陥り、休職→退職という残念な結果になりかねません。
LP分析の結果導き出された特性をもとに適切な配属先に配置転換をすることで、こういった残念な結果を事前に防ぐことができる可能性があります。(注2)

次に、LP分析を上手く活用することによって「組織の稼ぐ力(生産性)の底上げ」につながる可能性があります。
第一に、先述した「くすぶっている」LPを適切な部署に配置転換するだけで、少しのトレーニングで(最低でも)平均的な実績を出すことができるようになることが期待できます。ということは、人件費はそのままでアウトプットの量と質が向上します。これはすなわち、第2回で述べた生産性の向上に他なりません。
第二に、先ほどのパターン②人材については、徹底的なトレーニングによって実績を高める努力をすることで、程度はともかく、以前より実績を出させることはできます。また、もともと実績を出せていないわけですから、当人の現在の処遇を見直すことによっても組織全体の生産性は高まるでしょう。

このように、LP分析を適切に実施してその結果を適切に解釈することで、実は組織全体の生産性の平均値を底上げしていくことが可能になるかもしれません。
私がHP分析ではなくてLP分析の方により興味を持っている最も大きな理由はここにあります。

以上に述べてきたように、HP(LP)分析は、生産性向上のためのツールであるのみならず、特に組織におけるプレゼンティーズムを仕組みとして極小化する、「健康経営のためのツール」でもあると私は考えています。この仮説が正しいのかどうか、機会があれば定量的に実証してみたいと思います。

もちろんこの第3回で述べたこと以外の論点もあるでしょうし、違った観点の意見もあると思います。
繰り返し強調していますが、重要なのはみなさんがご自身のテーマとして考えてみることだと思います。
私の考えを鵜呑みにせず、ぜひクリティカル(批判的)なスタンスでお読みいただき、ご自身の組織に当てはめていろいろと考えてみてくださいね。

それではまた次回!

第3回  ハイパフォーマー分析が「健康経営」に繋がる?!その理由とは?【前編】
第3回  ハイパフォーマー分析が「健康経営」に繋がる?!その理由とは?【中編】

<謝辞>
前編中編に引き続き、今回のコラムはその大部分において、イオン株式会社グループ人事部人事企画グループの小河原好弘さまとの数ヶ月に及ぶ議論にインスパイアされています。ここに感謝の意を表します。

※本コラムは執筆者個人の考えに基づく論考であり、特定の企業や団体の意向を代表するものではありません。

(注1)出社していても何らかの不調のせいで、本来発揮されるべきパフォーマンスが低下している状態のこと。疾病就業とも訳されます。

(注2)とはいえ、これは規模の小さい企業にとってはなかなか難しい問題です。
異動させようにもそもそも異動できる部署が限られていますし、規模の大きな企業と比べて、手掛ける事業の数も一般的には少ないからです。中小企業での離職が多いとすれば、それにはこのような理由もあるのかもしれません。

新改敬英 (Takahide SHINKAI)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 大学研究員

大手国際会計事務所等にて会計監査・M&Aアドバイザリーに従事したのち、
外資系メーカーおよび国内系医療・介護グループを経て研究者に転身。
民間企業在籍中は一貫して経営企画業務に従事し、
経営戦略立案、組織マネジメントから財務分析、人材採用までオールラウンドに手掛ける。
現在は九州大学大学院の博士課程に在籍し、会計学・組織マネジメントについて研究する傍ら、
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)の研究員として、
企業との共同研究・アドバイザリーに従事。(2019年3月現在)

参考リンク

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