第3回 ハイパフォーマー分析が「健康経営」に繋がる?!その理由とは?【中編】

2018.11.02 
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みなさんこんにちは。
このコラムでは「健康経営」というキーワードを中心に、人事関連の様々なトピックについて考えていきます。

第3回ではHP/ハイパフォーマー(LP/ローパフォーマ―)分析と健康経営とのかかわりについてお話を進めています。前編では、HP(LP)分析の基本的な進め方と留意点について中心に述べました。
今回は、特にHP分析に焦点を当てて、健康経営との関連性を論じていきたいと思います。それでは始めましょう。
前編ではこちらのHP分析の結果の図を掲載しました。
HP(LP)分析のアウトプットイメージ図
この架空の事例では、HPは特性Aと特性Dが他の特性に比べてより高いという全体としての傾向が見られましたね。

次にすべきことは、一般的には次の2つになるかと思います。
◇現時点ではHPでないと評価されている従業員の中から、特性Aと特性Dが比較的高い人員を探索し、HP候補として選抜する。
◇HP候補群の選抜・育成と並行して、特性Aと特性Dを優先的に伸ばすための全社員向け研修プログラムを設置する。
ここまではみなさんも想定できるお話かもしれません。

そして、ここからが中編のメインパートです。
健康経営の文脈において、私たちが発見すべきは次の2パターンの人材だというのが私の考えです。
もしかするとみなさんが既に取り組まれている内容かもしれませんが、ここで一度整理しておきます。

パターン①人材
特性Aと特性Dが高いけれどもLPと評価されている人材

パターン②人材
特性Aと特性Dが低いけれどもHPと評価されている人材

パターン①人材とパターン②人材の共通点はおわかりでしょうか。
・・・私が考える共通点は「どちらも部署異動を検討すべき人材」です。以下、簡単に説明していきます。

まずパターン①人材について。この人材はHP要素を明確に持っているにもかかわらず、パフォーマンスはLP相当との評価を受けています。ここで想定すべきは、「何らかの理由によって本来の実力を発揮できていない状態」です。

パッと思いつく理由は、アサインされている業務がこの人材にフィットしていないこと、そして上司や同僚との人間関係が円滑とは言えないことです。「職場が合わない」、ということですね。もちろんこれらは仮説ですから、きちんと裏を取って確定させていく必要があります。

ただ、もしこの仮説が正しいとすると、短期的にはプレゼンティーズム(注1)に陥る可能性が高く、中長期的に見ると、休職・退職リスクが高まる可能性が高いでしょう。その場合は、可及的速やかに手を打つ必要があります。なにせHP要素を持っている人材ですので。

次にパターン②人材について。
この人材は、特性Aと特性DというHP要素が低いにもかかわらず、パフォーマンスについてはHPとの評価を受けています。

ここで考えられる状況は次の2つです。すなわち「アサインされている仕事が簡単すぎる」こと、そして「評価者に気に入られて上手いことやっている」可能性があるとも言えることです。つまり「本来目指すべき目標に対して合っていない」状況です。

この仮説が正しいとすると、本来ならばHPになるはずのない人材であるにもかかわらず、簡単な業務を囲い込んでいる可能性があることや、上司の「覚えめでたし」な状況によって、HP認定されている可能性があります。
このような人材の存在は、周りの従業員のモチベーションや生産性にあまり良い影響を与えていないかもしれません。
つまり正しく評価され、成果に向けてまじめに努力を続ける従業員において、プレゼンティーズムを誘発する可能性も出てくるかもしれません。従って、この点について注意深く確認し、必要に応じて適切な目標設定と配置などの措置を講ずる必要がありそうです。

一方で、このパターン②人材は、当該部署におけるHP特性以外の特性が高いです(特性Bと特性F)。
もしかすると、この2つの特性をより生かせる部署が他にあるかもしれません。
その場合、その部署に異動した方が、本当の意味でHP人材として活躍できる可能性があります。

以上より、いずれの人材も部署異動を検討すべき、という結論に達しました。
適材適所の配置によって、本人や周囲のプレゼンティーズムを極小化でき、かつ生産性も向上させられるのであれば、それは十分検討に値する施策なのではないでしょうか。

もちろん今回の論理の筋は、私が勝手につくった架空の状況をベースにしています。
従いまして、必ずこの通りになるとは言い切れません。また、規模の小さい企業では異動先にも限界がある、などの課題もあるでしょう。しかしながら、HP分析の結果を上手く使うことができれば、「適材適所の実現」によって、職場のプレゼンティーズムや休職・退職リスクの極小化といった、一見して全く関係のなさそうな健康経営にも少なからずプラスの影響があるのではないかと考えている次第です。

引き続き後編では、LP分析と健康経営の関連について論じていきます。
ここでもキーワードは「適材適所の実現」ですが、実はもうひとつ重要なキーワードが出てきますのでどうぞお楽しみに!
それではまた次回!

第3回  ハイパフォーマー分析が「健康経営」に繋がる?!その理由とは?【前編】
第3回  ハイパフォーマー分析が「健康経営」に繋がる?!その理由とは?【後編】

<謝辞>
前編に引き続き、今回のコラムはその大部分において、イオン株式会社グループ人事部人事企画グループの小河原好弘さまとの数ヶ月に及ぶ議論にインスパイアされています。ここに感謝の意を表します。
※本コラムは執筆者個人の考えに基づく論考であり、特定の企業や団体の意向を代表するものではありません。

(注1)出社していても何らかの不調のせいで、本来発揮されるべきパフォーマンスが低下している状態のこと。疾病就業とも訳されます。

新改敬英 (Takahide SHINKAI)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 大学研究員

大手国際会計事務所等にて会計監査・M&Aアドバイザリーに従事したのち、
外資系メーカーおよび国内系医療・介護グループを経て研究者に転身。
民間企業在籍中は一貫して経営企画業務に従事し、
経営戦略立案、組織マネジメントから財務分析、人材採用までオールラウンドに手掛ける。
現在は九州大学大学院の博士課程に在籍し、会計学・組織マネジメントについて研究する傍ら、
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネススクール)の研究員として、
企業との共同研究・アドバイザリーに従事。(2019年3月現在)

参考リンク

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