健康経営は個と組織に何をもたらすのか――。第2回

2018.05.31 
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慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本 隆氏

近年、従業員の健康増進への取り組みを強化し、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人(ホワイト500)」の看板を取得する企業が増えている。

しかし一方で、健康経営自体が目的化し、業績に繋げられていない企業も少なくない。
多くの企業にとって、次なる課題は、健康増進をいかに生産性の向上や組織パフォーマンスの向上に繋げていけるかだ。

そこで本ページでは、「健康×経営ラボ」の監修者である、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科・岩本隆特任教授へのインタビューを実施。

【第2回目】となる今回は、健康経営の成功事例や、取り組みにおける阻害要因について解説いただいた。

トップのコミットや人事のリテラシーが健康経営を成功させる鍵に

――これまで岩本先生はさまざまな企業の健康経営の取り組みをご覧になられてきたかと思いますが、健康経営の取り組みに成功している事例や傾向などがありましたら、教えていただけないでしょうか。

岩本 「健康経営銘柄」を第一回からずっと取り続けているような企業は、もともと経営者の意識が高く、ずっと以前から健康経営に取り組み、業績を伸ばしてきました。

例えば、SCSKや伊藤忠商事、東急電鉄、ローソン、大和証券など。
いずれも長年かけてトライアンドエラーを繰り返しながら、成果を蓄積させています。

また成功している企業は、テクノロジーをうまく活用して健康経営の取り組みを分析し、生産性の向上やビジネスのレベルアップに繋げています。

――逆に、健康経営の取り組みで壁にぶつかったり、うまくいかないケースはどのようなものがあるのでしょうか?

岩本 やはり多かれ少なかれ投資が必要になるため、トップを説得し切れないという話は多いですね。

逆に成功している企業は、トップが主導で進めているケースが多く、いずれにせよトップのコミットメントが不可欠と言えるでしょう。

健康促進は当然良いことですし、やるべきことは山ほどありますし、時間的にも費用的にもすべてできるわけではありません。

トップを説得するためにも、自分たちの組織の中で何が必要なのかを順位付けし、何が社員のパフォーマンスの向上に繋がるのかを、きちんとデータを取って検証していく必要があります。

今や多くの企業が様々な領域においてデータサイエンティストを社内に抱えていますが、人事においては不足気味です。
よって最近は人事自らが、データサイエンティストの勉強をし始めています。どちらにせよ、人事はデータ活用のリテラシーをさらに向上させなければなりません。

――もう一つ、健康保険組合が所有している社員の健康データを企業側が活用できないという問題もありますね。

岩本 プライバシーの観点からも確かにハードルは高いです。
しかし近年は、企業と健保が協力・連携し合うコラボヘルスに取り組んでいる企業も増えてきています。

人事と健保、さらには産業医が統合し、プライバシーをきちんと保護した状態で、データを共有し合う。もはやこれもテクノロジーで解決できる問題です。

健康経営はメリットばかりですが、さまざまな阻害要因から、うまく進んでいない事例が散見されます。
そうした中、成功している企業は、さきほどご紹介したように長い時間をかけて地道に取り組んできたケースばかりです。
つまり一朝一夕では難しいと言えます。

健康経営は全体的にまだまだ課題も少なくありませんが、社員の働き方や健康状態を経営のパフォーマンスに繋げていくという部分では、テクノロジーの力を活用する余地がまだまだたくさん残されています。

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