定量的なアプローチで「健康経営」を推進
スペシャル対談 後編

2018.05.19 
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株式会社ローソン 人事本部
人事企画 部長 山口 恭子 氏

カシオヒューマンシステムズ株式会社
取締役 陣内 孝之 氏

ProFuture株式会社
ファリシリテーター 代表取締役社長 寺澤 康介

少子化・高齢化が進む中、従業員の健康をいかに増進し、生産性向上につなげていけるかは、これからの企業にとって大きな経営課題。
トップ自らがCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)に就任して先進的な取り組みを展開し、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に2015年、2016年、2017年の3年連続で選定されているのが株式会社ローソンです。

今回は、人事統合システムを提供するカシオヒューマンシステムズ株式会社の陣内氏と共に、株式会社ローソン人事本部の山口恭子氏にインタビュー。
数値を重視した定量的アプローチや、健康保険組合・労働組合・産業医と緊密に連携した推進体制が特色となっている同社の取り組みについてお話しいただきました。

前編はこちら
健康数値目標と実績を白書で毎年公開 定量的なアプローチで「健康経営」を推進 前編

 

会社と健康保険組合、労働組合、産業医が一体となって推進

寺澤 健康経営の推進体制について、教えていただけますか。

山口 社内に「健康ステーション推進委員会」という会議体があり、当初から、社長がこの会議体の委員長となって健康経営の取り組みを進めてきました。
現在は、社長がCHOとなり、その下にCHO補佐である統括産業医と健康保険組合理事長、そして、健康ステーション推進委員会があるという体制です。
また、人事本部内に社員の健康を推進する「社員健康チーム」を設置し、健康保険組合、労働組合と連携して、さまざまな施策を展開しています。

陣内 カシオでも、社員の健康増進の取り組みは会社と健康保険組合が一体となって進めています。
健康診断や医療費のデータを分析・活用する上で、健康保険組合との協力関係を構築することは非常に重要ですね。

山口 健康ステーション推進委員会には、担当役員や人事だけではなく、健康保険組合、労働組合、産業医の方々にもメンバーとして参加していただき、どの目標にどう取り組むか、取り組んだ結果を検証してどう改善するかなど、一緒に議論しています。
こうした協力関係を構築しているのは、健康に関する活動をそれぞれが別個に行うのではなく、窓口がひとつである方が社員にとってわかりやすいことも大きな理由です。
例えば、健康診断や特定保健指導などの社員への一次案内は全て会社から行っています。
ローソンヘルスケアポイントも、労働組合の実施するレクリエーションに参加すると200ポイント付与というように、会社と健康保険組合、労働組合の活動をひっくるめた制度になっています。
社員が何をすればポイントが付与されるのかというメニューを一覧にしたパンフレットも作っています。

陣内 カシオでも、従業員の健康意識を高めるために、会社・健保・組合と協同で健康増進報奨制度を実施しています。
これは健診結果が良かった社員、改善している社員、きちんと通院してケアしている社員にポイントを付与する制度です。
弊社の場合は健診結果に限ったポイント付与制度ですが、ローソンヘルスケアポイントは、誰でも日々簡単な行動をすればポイントが少しずつたまる仕組みですね。
多くの社員に取り組んでいただくためには効果的だと思います。

参加者の増加や健康効果向上へのトライアンドエラー

寺澤 御社はさまざまな施策で成果を上げられて、健康経営銘柄にも選定されているわけですが、施策を打っても最初はうまくいかず、改善して成果が出たということもありましたか?

山口 もちろん、トライアンドエラーは常々行っています。
2016年に全社員の健康意識を高めるために「健康90日チャレンジ!」という健康増進期間を策定し、食生活の改善を促す「ロカボ(1食あたりの糖質量を一定量に制限する食べ方)チャレンジ」などのプログラムを実施しました。
しかし、参加者数が期待を下回り、参加しても90日間続かなかった社員もいたため、2017年の「健康90日チャレンジ!」では、参加者が増え、期間中のやる気が継続するような工夫をしました。
特に、2016年は個人参加がメインでしたが、今年はチーム参加が多くなるよう積極的に呼びかけて、1チーム3人から5人で310チーム、個人参加と合わせて1724人が参加しました。
今、結果を集計中ですが、このチーム参加の効果は大きかったようです。
チーム別のBMI変化度、チーム合計歩数を見える化し、社員のスマホに配信しているアプリで週ごとのチームランキングが見られるようにしたので、みんなで「頑張りましょう」と励まし合いながら続けられたようですね。
忘年会や新年会の時期にもかかわらず、チーム参加した社員は平均体重が0.58kg減という好結果です。

寺澤 全社員のうち参加者の割合はどのくらいですか?

山口 4割程度です。ただ、強制ではなく自主参加ですので。

寺澤 素晴らしいと思います。
企業が健康増進のプログラムなり、スマホのアプリを活用したプログラムなりを実施しても、社員があまり乗ってくれないということはよくあるようです。
個人ではなくチームで取り組む形だと、より効果が期待できそうですね。

山口 そう思います。
みんなでやっていくということでは、5人以上で部活動を組織化すると会社から補助金が出る「部活動」の仕組みも作っています。
体育館やコートを借りてバスケやフットサルをするといった部活動で、参加すると200ポイント付与されます。
私自身もランニングの部活動に参加していますが、例えば、平日の業務後に皇居に走りに行くとなると、「今日は絶対に定時で終わらせましょう」とメンバー同士が呼びかけ合い、生産性が非常に高い仕事をするわけです。
メンバーには他部署の社員もおり、社内の組織に横串を刺して交流を図ることで、仕事上でも良い効果が生まれると思います。

データ活用と生産性向上、経営への貢献が次のステップ

陣内 社員の方々が健康になれば完了なのではなく、その先に生産性の向上や企業の活力を高めるといったことがあると思います。
御社では何をもって健康経営の取り組みの効果、成果だとされていますか?

山口 やはり、健康な社員がいい仕事をして、会社に成果をもたらすことです。
ただ、取り組みによって健康になった社員がいい仕事をして、こういう業績を上げたというように全てデータで測るのはなかなか難しいですね。そこが悩ましいところです。

陣内 確かに難しいですね。
ひとつの切り口として、いま、カシオでは、社員の健康状態と評価と育成といったデータを統合的に解析して、関連性を見出そうという取り組みを行っています。
例えば、健康診断のデータから健康度をランク付けした時、健康度が高い人は評価が高いという相関関係がありました。
こうした解析を社内の部門ごとに行うと、どの部門にどういう課題があるかがわかり、業績を向上させるための手を打っていくこともできると思います。

山口 弊社でも人事として取っているデータは、健康診断のほかに、過去からやっているストレスチェック、従業員意識調査といろいろありますが、その相関性を分析するといったことはまだこれからです。
今、組織ごとがどういう状態なのかを見始めているところですが、採用や評価といったところまで広げて、データを全部入れて分析し、それならどういう施策を打てば会社の業績向上に効果があるかというところに持っていきたいですね。

寺澤 これからの企業が健康経営を生産性向上につなげるためには、まずはデータをきちんと取ることと、そのデータを分析し、いかに活用していくかが重要になってくると思います。
最後に御社の健康経営で今後トライされたいことなどありましたら、お聞かせください。

山口 弊社でも働き方改革に取り組んでいますが、ここは健康と切り離せませんから、そこがつながるような取り組みにしていきたいですね。
生産性の高い仕事ができて経営の観点からの効果をきちんと出すというところまで見える形にすることが、次のステップだと思います。

寺澤 今日は大変参考になるお話をありがとうございました。

 

 

山口 恭子氏
株式会社ローソン
人事本部 人事企画 部長
1993年4月新卒で入社。店舗勤務後本社に異動。約1年の産休・育児休職取得後2001年復職し人事業務に従事。2012年から女性・外国籍社員・障がい者を中心としたダイバーシティ推進などを担当し、事業所内保育施設・障がい者雇用の特例子会社などを設立。女性活躍推進の取り組みは、2014年「なでしこ銘柄」の4年連続選定に貢献。また健康経営銘柄は3年連続選定。2015年より人事本部 人事企画部長。特例子会社(株)ローソンウィルの取締役も兼任。

 

陣内 孝之 氏
カシオヒューマンシステムズ株式会社
取締役
1992 年カシオ計算機(株)入社。人事ソリューションの営業担当としてこれまで1,000 社以上のお客様への提案、導入に関わる。その後、企画室マネージャーとして企業の人事・給与ソリューションから人財マネジメントに関するシステム企画・サービス企画に従事。常に人事部を取り巻く環境の変化に合わせた柔軟なソリューションを提供している。2017年10月より現職。

参考リンク

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