定量的なアプローチで「健康経営」を推進
スペシャル対談 前編

2018.05.18 
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株式会社ローソン 人事本部
人事企画 部長 山口 恭子 氏

カシオヒューマンシステムズ株式会社
取締役 陣内 孝之 氏

ProFuture株式会社
ファリシリテーター 代表取締役社長 寺澤 康介

少子化・高齢化が進む中、従業員の健康をいかに増進し、生産性向上につなげていけるかは、これからの企業にとって大きな経営課題。
トップ自らがCHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)に就任して先進的な取り組みを展開し、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に2015年、2016年、2017年の3年連続で選定されているのが株式会社ローソンです。

今回は、人事統合システムを提供するカシオヒューマンシステムズ株式会社の陣内氏と共に、株式会社ローソン人事本部の山口恭子氏にインタビュー。
数値を重視した定量的アプローチや、健康保険組合・労働組合・産業医と緊密に連携した推進体制が特色となっている同社の取り組みについてお話しいただきました。

商品開発も含め、会社全体として健康経営にシフト

寺澤 まず、御社が健康経営を推進されるようになった経緯から聞かせていただけますか?

山口 弊社では2008年からストレスチェックを実施するなど、社員の健康づくりに関連した取り組みを比較的早くから行っていましたが、2012年に、私どもの商品開発も含めて、健康という問題に会社として取り組んでいこうという新たな展開がスタートしました。
背景には、当時、糖尿病など不健康な食生活が一因となる成人病の増加は、社会保障費を増大させる国全体の問題であり、ローソンとしてこれに取り組んでいこうという経営の意思がありました。
コンビニエンスストアは、もともと若い男性を主なターゲットとして商品開発をしてきており、高カロリーで糖質の高いお弁当などを商材として利益を得てきました。
しかし、お客様の健康的な食生活のサポートは社会的要請であるとともに、ビジネスの観点からも、今後、より多くのシニアや女性のお客様に来店いただくための商品開発が求められていました。
そこで、会社としての改革が始まったのです。

寺澤 御社は2013年から「マチの健康ステーション」を新たなコーポレートスローガンとされていますね。
まさに事業そのものから、お客様の健康をサポートする方向に変えていこうと。

山口 そのためには社員が健康であることが大切です。
そこで、まずは健康診断の受診率を100%にするという目標を設定しました。
その達成のため、2012年に導入したのが、定期健康診断を受診しなかった場合に未受診の本人とその上司の賞与の一部をカット(本人15%、上司10%)するディスインセンティブ制度です。

寺澤 こうしたディスインセンティブ制度を導入される企業はあまりないと思います。
社内の反応はどうでしたか?

山口 最初は驚かれることもありましたが、社員の皆さんの健康のためであるということをきちんと説明して、理解していただいています。
また、これまでは多忙だといった理由で受診しない人がどうしても出ていたのですが、上司も巻き込み、受診しても業務の負担にならないような配慮も行っています。
2013年度からは100%の受診率を継続して達成しています。

陣内 カシオでも、健康診断に際しては、人事部からも組合からも「必ず全員受診してください」といった案内やリマインドを繰り返し行っていますが、100%には達していません。
素晴らしいですね。

数値目標を設定し、健康経営の取り組み成果を毎年公開

寺澤 100%受診が達成され、全社員の健康状態がデータで見られるようになったわけですね。
そのデータをどのように分析して、次の施策につなげていかれたのですか?

山口 全国平均に比べると、血圧を始めとする生活習慣病リスク因子が高めの数値で、男性の肥満率と喫煙率が特に高いという健康課題が明確になりました。
そこで、肥満、脂質、血圧、血糖値、喫煙率、疾病休職者数、メンタル疾患休職者数などの目標数値を毎年設定し、それらに対応する各施策を推進しています。
具体的には、健康診断結果に基づいて全従業員の健康リスクを階層化し、健康リスクがまだそれほど高くない層へのポピュレーションアプローチと、健康リスクが高めの層へのハイリスクアプローチという二段構えで施策を展開しています。
例えば、前者では、健康づくりに関するさまざまなメニューを用意し、社員がそれらに取り組むと共通ポイントサービスのPonta(ポンタ)ポイントを付与する「ローソンヘルスケアポイント」制度を2015年から始めています。
また、後者では、特に注意が必要な「精密検査」階層以上の従業員を対象に、産業保健師が各事業場へ出向いて面談するなどのフォローや、糖尿病リスクの高い従業員を対象とした宿泊型の保健指導を実施しています。
これは1泊2日で糖尿病専門医や保健師の講義や運動実技、個別面談などを行う合宿形式ですが、参加しやすいように業務扱いとしています。

寺澤 御社のウェブサイトでは、各項目の目標数値に対する実績がどうだったかなど、健康経営の取り組みを「健康白書」として毎年公開されていますね。
社員の健康状態のデータをきちんと取って、毎年分析しながら、定量的な目標に近づけていくための工夫をいろいろされている。
数字に基づく科学的なアプローチで、しかも、普通の企業ならあまり表に出さないような悪い数字も含めて、全て公開しながら取り組みを展開されていることが非常に印象的です。

後編へつづく
健康数値目標と実績を白書で毎年公開 定量的なアプローチで「健康経営」を推進 後編

 

山口 恭子氏
株式会社ローソン
人事本部 人事企画 部長
1993年4月新卒で入社。店舗勤務後本社に異動。約1年の産休・育児休職取得後2001年復職し人事業務に従事。2012年から女性・外国籍社員・障がい者を中心としたダイバーシティ推進などを担当し、事業所内保育施設・障がい者雇用の特例子会社などを設立。女性活躍推進の取り組みは、2014年「なでしこ銘柄」の4年連続選定に貢献。また健康経営銘柄は3年連続選定。2015年より人事本部 人事企画部長。特例子会社(株)ローソンウィルの取締役も兼任。

 

陣内 孝之 氏
カシオヒューマンシステムズ株式会社
取締役
1992 年カシオ計算機(株)入社。人事ソリューションの営業担当としてこれまで1,000 社以上のお客様への提案、導入に関わる。その後、企画室マネージャーとして企業の人事・給与ソリューションから人財マネジメントに関するシステム企画・サービス企画に従事。常に人事部を取り巻く環境の変化に合わせた柔軟なソリューションを提供している。2017年10月より現職。

参考リンク

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