連結経営視点による「健康経営」と「働き方改革」
スペシャル対談 前編

2018.05.17 
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東京急行電鉄株式会社
人材戦略室 労務厚生部 統括部長 下田 雄一郎 氏 健康経営アドバイザー

カシオヒューマンシステムズ株式会社
取締役 陣内 孝之 氏

ProFuture株式会社
ファリシリテーター 代表取締役社長 寺澤 康介

昨今、多くの企業にとって、今後の成長戦略に関わる重要なテーマになってきているのが、「健康経営」や「働き方改革」。東京急行電鉄株式会社では、CHO(最高健康責任者)の設置や「健康宣言」の明文化などの取り組みで「健康経営銘柄」にも3年連続で選定され、このテーマで一歩先を行く取り組みを推進されています。

今回は、同社の人材戦略を統括されている下田雄一郎氏にインタビュー。
人事統合システムを提供するカシオヒューマンシステムズ株式会社の陣内孝之氏とともに、経営層のコミットメントやグループでの横串展開などを特徴とする同社の取り組み内容や、生産性向上に向けた今後の取り組み課題などについてお聞きしました。

CHO(最高健康責任者)を設置し、「健康宣言」を策定

寺澤 今日は、「健康経営」や「働き方改革」における御社の先進的な取り組みについて、いろいろお聞きしたいと思います。
まず「健康経営」については、御社はCHO(最高健康責任者)を設置して「健康宣言」を出されるなど、経営陣の強いコミットの下で、会社としての取り組みを推進されているという印象です。

下田 2016年2月にCHOを設置して専務取締役が就任し、同時に「健康宣言」を全社方針として明文化しました。
このCHOを筆頭に、企業立病院である東急病院と、専門部署である人材戦略室が連携しながら、従業員とその家族の健康維持・増進を図り、「安心・安全の更なる構築」と「労働生産性の向上」に努めています。

陣内 当社でも「健康経営」を推進し、さまざまな施策を実施していますが、経営陣のコミットや健康宣言の明文化といったところは、今、取り組んでいる最中です。
御社の「健康宣言」の内容はどのようなものですか?

下田 東急グループの「美しい生活環境を創造し、調和ある社会と、一人ひとりの幸せを追求する」という存在理念を踏まえ、その実現に欠かせない「健康」を追求する経営を推進するために制定したのが健康宣言です。
健康宣言は3段構成で、まず1段目は従業員とその家族に向けたものです。
「安全」と「安心」は交通事業をはじめとする当社事業の根幹であり、お客様が当社にお寄せくださる「信頼」の源泉です。
その根幹を担う従業員とその家族の健康は「信頼」を担保する柱であると宣言しています。
次に、お客様に向けた2段目では、「健康増進」を付加価値として提供することで、東急線沿線に住まう方の生活環境を充実させていくと宣言しています。
そして、社会に向けた3段目では、人々の「健康増進」を事業として継続し、社会貢献として地域活力を維持・発展させていくことを目指すと宣言しています。

人材戦略室と企業立病院が連携し、従業員の健康管理を徹底

寺澤 まさに、「健康経営」が御社の企業価値の向上につながっていく形ですね。
具体的な取り組みのポイントを教えてください。

下田 「メンタルヘルス対策」、「がん対策」、「生活習慣・運動対策」を重点施策とし、それぞれの単年施策と中期施策を当社専属の産業医・保健師に提案してもらう形で進めています。
例えば、「生活習慣・運動対策」を個人ではなく組織で行う、職場対抗の健康増進プログラムを展開しています。
スマホ用のウォーキングアプリを利用して毎日の歩数データを計測してもらい、職場対抗ウォーキング選手権を年3回実施しているほか、5km程度のウォーキング大会も年1回実施し、職場一丸となって健康を志向する文化の醸成を図っています。

陣内 人材戦略室と企業立病院が連携されていることは御社の強みだと思いますが、どのような取り組みをされていますか。

下田 健診で健康要注意者が出たときは、保健師が職場に出向いて面談を行うなど、手厚くフォローを行っています。
必要がある人には保健師がお勧めして、すぐに東急病院の外来に行ってもらえますので、そこは会社としての強みですね。

寺澤 取り組みの成果はいかがですか?

下田 健康増進プログラムなどの取り組みによって、運動習慣者比率は2012年度30.9%から2015年度35.2%に上昇しています。
また、メンタルヘルス対策として、当社の産業医が独自性の高いストレスチェックテストを作成、運用していますが、メンタル不調による長期欠勤・休職者率は、2014年度0.56%、2015年度0.32%と低下しています。

生産性向上に向けて、いかにデータを活用できるか

寺澤 素晴らしいですね。
最近は、「健康経営」に限らず、人事施策の効果を上げるために実施データを分析し、効果を測定して次の施策に反映させることの重要性が注目されています。
そこはどのようにお考えですか。

下田 そうした取り組みは重要だと思います。
当社が「健康経営」に取り組んで数年になりますが、効果については自己評価など比較的定性的な測定が多くなっているのが現状です。
もっと定量的な効果測定を行える体制を作り、施策ごとの効果をデータに基づいて評価することで、より効果的な予算の投入を行っていけないかというところは、今後の課題になっています。

寺澤 「健康経営」におけるデータ活用という部分で、カシオグループさんでは非常に進んだ取り組みをされていますね。

陣内 健保が持っている健診データやレセプトデータと、会社が行っているストレスチェックのデータなどを個人を特定しない形で活用し、例えば、社内の設計や製造、販売などの各部門ごとに、医療費を含む健康情報にどのような傾向があるのか、数値をグラフ化するなどして細かく分析を行っています。
この結果を見れば、どの部門にどのような課題があり、どのような打ち手が必要なのかがわかります。
また、当社では健保の業務支援システムをご提供していますので、業界・業種ごとの標準値と比較すると自社のレベルはどうかといったことも分析が可能になっています。

寺澤 やはり、「健康経営」を生産性向上につなげていくためには、数値に基づく定量分析をベースとすることが必要になってくると思います。

陣内 おっしゃる通りです。
実は、最近、さらに一歩進めた取り組みとして、従業員の健康情報と評価情報の関連性についても分析を行っていますが、その中で、医療費が比較的かかっていない、健康な人ほど人は評価が高い傾向があるといった結果が出ています。
また、ハイパフォーマーの過去の経験をテキストマイニングを通じてカテゴライズし、そこに評価や勤怠などのデータも合わせて解析することで、ハイパフォーマーの要素を持ちながら、埋もれている人材を見つけ出すということにも実験的に取り組んでいます。
こうしたことがわかると、仕事のアサインメントやチームビルディング、評価制度の変革などにもつながってくると思います。

下田 非常に興味深いですね。
「働き方改革」の観点から言うと、今、国がこの領域でのビッグデータやAIの活用を推進していますが、データを解析すればハイパフォーマーの判別がある程度できるというのは、AIでの判別に似ている気がします。
データの活用は重要ですね。

後編へ続く
経営層のコミットを得て全社的取り組みを推進し、 今後はさらなる人事データの活用も視野に。 連結経営視点による「健康経営」と「働き方改革」後編

 

 

下田 雄一郎 氏
東京急行電鉄株式会社
人材戦略室 労務厚生部 統括部長
1993年、東京急行電鉄(株)入社。労働組合専従、人事・労務の各課長職を経て、2017年7月現職。企業立病院である東急病院と連携して「健康経営」に取り組む。

陣内 孝之 氏
カシオヒューマンシステムズ株式会社
取締役
1992年カシオ計算機(株)入社。人事ソリューションの営業担当としてこれまで1,000 社以上のお客様への提案、導入に関わる。その後、企画室マネージャーとして企業の人事・給与ソリューションから人財マネジメントに関するシステム企画・サービス企画に従事。常に人事部を取り巻く環境の変化に合わせた柔軟なソリューションを提供している。2017年10月より現職。

参考リンク

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