デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる人事領域で取り組むべき内容とは

2020.09.17 
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デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる人事領域で取り組むべき内容とは
目次

経営者が危機感を抱くDX推進の停滞

経済産業省は2018年9月、「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」※1の議論を『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』として発表した。そのなかで、企業が生き残るためのキーポイントはデジタルトランスフォーメーション(以下DX)を実践して「競争上の優位性を確立」することであるとし、DXの実現のためには2025年までに既存システムを刷新することが急務であると提唱している。
各企業・団体の既存システムについては、すでに「老朽化」「複雑化」「ブラックボックス化」が指摘されており、そうした問題を抱えたシステムが残存した場合、DXそのものが実現できないばかりか、2025年以降の経済損失は最大で年間12兆円にのぼると推定している。これがいわゆる「2025年の崖」と言われるものである。
独立行政法人情報処理推進機構(以下IPA)が、東証一部上場企業1000社を対象に、DXの取り組み実態の把握等を目的として行った調査(2019年4月発表)では、約6割の企業がビジネス変革の必要性を非常に強く感じている※2ものの、DXとしての実践・取り組みは、「業務の効率化による生産性向上」にとどまり、「新規製品・サービスの創出」は半数に満たない※3結果となった。多くの企業が、自社の優位性や競争力の低下に危機感を抱きつつ、ビジネス変革に必要なDXを推進できていない現状が見て取れる。
※1)デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会:経済産業省・商務情報政策局が、産業界において戦略的なビジネス展開を進めていくうえで必要となるDXに関する課題および対策を検討するために設置(2018年5月)。
※2)独立行政法人 情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査~ 調査結果サマリ ~
ビジネス変革や新ビジネスの創出の必要性に対する認識
※3)独立行政法人 情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査~ 調査結果サマリ ~
DXの取り組みに関する成果の状況

DXを推進する人事領域での取り組み

DX導入・推進のブレーキ要因を、「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」では以下のように挙げている。要約すると、①経営層のコミットメント(リーダーシップ、ビジョン)欠如、②既存システムのレガシー化(担当不在またはミスマッチ)、③刷新にかかる時間とコスト、④ユーザー側のベンダー企業への業務丸投げ、⑤人材不足(IT人材の育成・獲得)。
とくに、前述のIPAによる調査では、約8割の企業がDXに関わる人材不足を実感している※4ため、⑤人材不足(IT人材の育成・獲得)について詳しく述べていこう。単にDXに関わる人材と括ったが、※3表に見る通り、実は対応する職掌で7職種に細分化されている。これらを一人で網羅することはまず不可能と言ってよいので、企業の現状で不足している職掌を担う人材を確保・育成することが、DX推進のための喫緊の課題となる。
しかし、厳しい獲得競争を強いられる採用市場で、不足するDX人材を確保することは簡単なことはではない。そのため既存の人的資源を活用した人材育成が現実的な取り組みとなる。
具体的には、まず育成計画立案にあたって、既存従業員の人材データを蓄積・分析することから始めたい。DXに求められるスキルを整理し、そこに分析・抽出した従業員のパフォーマンス向上やモチベーション課題要因を加味した対策を講じることが求められる。
一方で、人材データの分析結果を基にDX人材を育成する体制構築には、人事部門のDX化も求められる。その目指す姿を次項で述べる。
※4)独立行政法人 情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査~ 調査結果サマリ ~
DX推進人材の不足感

人事部門のDX化 目指す姿とは

人事部門のDX化にあたり、DXの「デジタルによる変革」という本来の意味に立ち返って、労務、人事、採用、教育といった人事部門の仕事を見直してみたい。大半の企業ではそれぞれの業務のシステム(デジタル)化が成されていると考える。しかし、それらの蓄積されたデータを一元管理し横断的に活用できている企業は多くない。
そこでお勧めしたいのが「HR Tech」である。「Human Resources 」と「Technology」を組み合わせた造語で、クラウドやAI、ビッグデータ解析といったテクノロジーを駆使し、人事業務の効率化とパフォーマンス向上を実現するサービスの総称である。労務管理データはもちろん採用管理・従業員データの一元管理・分析で人材育成から配置を戦略的に実現するタレントマネジメントまで、人事部門すべての業務に活用できるものだ。
例えば育成担当者は、個々の従業員データ(経験、評価、スキル、キャリアビジョン、モチベーションなど)を把握した上で、DX化するカテゴリー(新規製品・サービスの創出、業務効率化・生産性向上など)に合わせた適材を選出し、育成計画を立案・実行することが可能となる。
既存従業員から人材を選出する際には、IPAの「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」(2020年5月発表)を参考にしてほしい。それによると、プロダクトマネージャー、ビジネスデザイナーといったDX業務全般のリーダー的役割を担う職務の優先度が高いと言われている※5。なおDX人材育成の施策については、職務やDX化のカテゴリーによってさまざまな施策が想定されるので、参考までに上記同調査における「成果が出ている企業における人材育成施策」※6を提示する。
こうした人事部門のDX化や人材データを総合的に活用した人材育成が、DX化を実現する上で鍵を握っている。
※5)独立行政法人 情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査~詳細編~
人材タイプ別の重要度
※6)独立行政法人 情報処理推進機構「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査~詳細編~
参考:成果が出ている企業における人材育成施策

まとめ

〇多くの企業が、自社の優位性や競争力の低下に危機感を抱きつつ、ビジネス変革に必要なDXを推進できていない。
〇人事部門のDX化、および人材データを総合的に活用した人材育成が、DX推進を促進する。
〇人事部門のDX化には、「HR Tech」サービスの活用をお勧めしたい。労務管理データはもちろん採用管理・従業員データの一元管理・分析で人材育成から配置を戦略的に実現するタレントマネジメントまで、人事部門すべての業務に活用できる。
〇既存従業員から人材を選出する際には、プロダクトマネージャー、ビジネスデザイナーといったDX業務全般のリーダー的役割を担う職務の優先度が高い。

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参考リンク

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