企画業務型裁量労働制の導入で残業代はどうなる?対象業務と注意点を徹底解説

2020.09.15 
52
企画業務型裁量労働制の導入で残業代はどうなる?対象業務と注意点を徹底解説

社会環境の変化や多様な働き方を推進する働き方改革が進む中、企業は従業員が創造性を十分に発揮できる環境を整えることで、効果的に人材を活用することが求められている。
そのような中で、新たな働き方のルールとして施行されたのが「企画業務型裁量労働制」である。

目次

企画業務型裁量労働制の現状

企画業務型裁量労働制は、1988年に改正された労働基準法の第38条に定められた「みなし労働時間制」の一種で、2002年4月に施行された制度である。

「みなし労働時間制」を導入している企業は、厚生労働省が発表した「平成31年就労条件総合調査」の結果によると、調査対象となった約6,400社のうち14.2%を占める。

種類別(複数回答有)にみると、
「事業外みなし労働時間制」は12.4%
「専門業務型裁量労働制」は2.3%
「企画業務型裁量労働制」は0.6%
であった。

参考:厚生労働省 平成31年就労条件総合調査

労働基準法は、働き方改革関連法の成立に伴い、2019年4月にも改正法が施行された。
労働時間等設定改善法と労働安全衛生法もあわせて改正されている。
この中で、企画業務型裁量労働制の導入推進を目的として、以下の3点が改正されている。

・高度プロフェッショナル制度の創設
・勤務間インターバル制度の促進
・労働時間の状況把握の義務化

各改正点の概要を以下で振り返る。

高度プロフェッショナル制度の創設

高度プロフェッショナル制度は、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日、深夜割増賃金に関する規定を以下の条件を満たす労働者に対しては適用しない、というものである。

条件とは、以下の3点である。

・高度の専門的知識等を有する
・職務の範囲が明確である
・一定の年収要件を満たす

労働基準法に定められた具体的な対象は以下となる。

【対象業務】
・金融商品の開発の業務
・金融知識等を活用した自らの投資判断に基づく資産運用の業務又は有価証券の売買その他の取引の業務
・有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する 助言の業務
・顧客の事業の運営に関する重要な事項についての調査又は分析及びこれに基づく当該事項に関する考案 又は助言の業務
・新たな技術、商品又は役務の研究開発の業務

【対象者】
対象業務に常態として従事しており以下の要件を満たす従業員が対象者となる。

・使用者との合意に基づき職務が明確に定められていること
・使用者から支払われると見込まれる賃金額が1,075万以上であること

また、労使委員会の決議と労働者本人の同意を前提として、以下の措置が講じられることも必須要件である。

・年間104日以上の休日確保措置
・健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置

勤務間インターバル制度の促進

本制度により、1日の勤務終了から翌日の出社まで、労働者に一定時間以上の休息時間を確保することが、事業主の努力義務となった。
その目的は、労働者の生活時間や睡眠時間を確保すること、ひいては心身の健康とワーク・ライフ・バランスへ配慮することである。

2019年4月の法改正に伴い適用された「労働時間等見直しガイドライン」では、労働者の生活時間、睡眠時間、通勤時間、勤務形態や勤務実態等を考慮し、仕事と生活の両立に配慮して一定時間以上の休息時間を設定するよう、事業主に求めている。

労働時間の状況把握の義務化

使用者が、労働者の労働時間を適正に把握することが義務化された。
「労働時間」とは、使用者が労働者を指揮命令下に置いている時間である。
使用者は、その把握のために、労働者の始業および終業時刻を労働日ごとに確認し、適正に記録しなければならない。
またその記録は、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等、客観的な記録を基礎とすることが求められている。

企画業務型裁量労働制の目的と対象者

企画業務型裁量労働制の目的は、事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮できる環境を作ることにある。

企画業務型裁量労働制の対象者は、企業の本社などで企画、立案、調査および分析を行う労働者である。
そうした労働者からのアウトプットは、事業活動の中で下される重要な決定に関わる。
そのため企業は、企画業務型裁量労働制の対象者が知識・技術・創造性を存分に発揮することを強く求める。
このような理由で、労働時間の配分について、専門業務型裁量労働制と同様、対象となる労働者に委ねることができるのである。

裁量労働制の下では、上司が部下に出退勤時間の指定や個別の業務に関する具体的な指示をしてはいけない。
このような自律的で自由度の高いフレキシブルな働き方が、彼らの知識、技術、創造性を最大限に引き出すと考えられているからである。

企画業務型裁量労働制を導入する狙いは、労働者に自身の裁量で労働時間を決定させることで、より効率的に成果を生み出すことにある。
導入を検討する企業は、こうした狙いを理解し、みなし労働時間による残業代の抑制を目的としないよう、注意しなければならない。

企画業務型裁量労働制を導入する際の課題

企業は、労働者との同意なく一方的に裁量労働制を導入できない。
必ず、労働基準法が定める労使協定の締結しなければならない。また制度導入後は、対象労働者の勤怠管理や時間外労働への手当支給などにも留意する必要がある。

労使協定の締結

労働基準法は、企画業務型裁量労働制の導入にあたり、労働者と企業との間で労使協定の締結を必要とする旨を定めている。
労使協定の締結までに必要なプロセスは、次のとおりである。

・労使委員会の設置
・労使委員会での決議(5分の4以上の委員による必要的決議事項に関する多数決)
・労働基準監督署への決議事項の届け出
・対象労働者の同意取得

労使委員会での必要的決議事項として定められているのは、以下の点である。
(1)対象業務
事業の企画・立案・調査・分析の業務であって、使用者が仕事の進め方・時間配分に具体的指示をしないこととする業務
(2)対象労働者の範囲
対象業務を適切に遂行するために必要となる知識・経験等を有する者
(3)みなし労働時間の1日あたりの時間数
(4)対象労働者の健康・福祉確保、苦情処理の具体的措置とその措置を実施する旨
(5)労働者の同意を得なければならない旨およびその手続き、不同意労働者に不利益な取扱いをしてはならない旨

対象労働者の勤怠管理

裁量労働制のみなし労働時間は、その1日あたり時間数を制度導入前に労使間で合意している。
しかし裁量労働制の対象労働者は、労働時間の概念が希薄になりがちである。その結果、実労働時間がみなし労働時間よりも長くなる傾向にある。

裁量労働制の下でも、労働基準法で定める法定労働時間は存在する。
労働時間が1日8時間、週40時間を超える場合は36協定の締結が必要である。

企業は、対象外の労働者と同様に実労働時間を把握できるよう、勤怠管理を行う体制と環境づくりも求められる。
対象労働者の出退勤時間は指定しないが勤怠管理は行うことが、法に則った制度の運用である。

時間外労働への手当支給

裁量労働制の下でみなし労働時間を1日あたり8時間と取り決めた場合、対象労働者の実稼働が何時間であっても、組織側は8時間勤務とみなす。
ただし午後10時以降の深夜労働には、割増賃金を支払わなければならない。
また対象労働者が休日に出勤した場合、休日出勤手当が発生する。

先に述べた勤怠管理は、組織側が対象労働者の深夜労働や休日出勤の必要性を把握するためにも必須である。
対象労働者の健康・福祉の確保のため、状況によっては長時間労働を是正しなければならない。

まとめ

新たな働き方のルールとして施行された企画業務型裁量労働制だが、厚生労働省が発表した「平成31年就労条件総合調査」の結果によると、調査対象となった約6,400社のうち実施しているのは0.6% であった。

働き方改革関連法の成立に伴い、企画業務型裁量労働制の導入推進を目的として以下の3点が改正されている。
・高度プロフェッショナル制度の創設
・勤務間インターバル制度の促進
・労働時間の状況把握の義務化

企画業務型裁量労働制を導入する狙いは、労働者に自身の裁量で労働時間を決定させることで、より効率的に成果を生み出すことにある。
導入を検討する企業は、こうした狙いを理解し、みなし労働時間による残業代の抑制を目的としないよう、注意しなければならない。

裁量労働制の導入の際には、労働基準法が定める労使協定の締結しなければならない。
制度導入後は、対象労働者の勤怠管理や時間外労働への手当支給などにも留意する必要がある。

企画業務型裁量労働制の導入目的を理解し、労使委員会で必要的決議事項について議論を重ね、労使双方が適正に制度を運用できる下地を作るべきである。

「健康×経営ラボ」は健康経営と生産性向上について考える、
カシオヒューマンシステムズ株式会社が運営するメディアです。
経営や人事に携わる方はもちろん、マネジメントに携わる方にも役立つ情報を更新しています。

参考リンク

関連記事

close