働き方改革で派遣労働者のモチベーションが上がる! 企業に必要な規定の整備とは

2020.06.25 
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2020年度から2021年度にかけて、働き方改革の一環として、派遣労働者の待遇を改善する改正労働者派遣法が施行される。

法律施行によって、派遣労働者の働くモチベーションが上がり、労働生産性が向上すると期待されている。一方で、企業は大きく変わる法律に対応する規定の整備への準備が必要だ。

この記事では、労働者派遣に影響を及ぼす法改正の概要と、企業に必要な規定の整備について解説する。 

派遣労働者の待遇改善に向けた取り組み

2020年4月1日から、統一されたガイドラインに基づく派遣労働者の待遇規定が、大企業、中小企業問わず一律適用する改正労働者派遣法が施行された。これは、派遣労働者にとって派遣先の無期雇用フルタイム労働者(以下、通常の労働者)との「同一労働同一賃金」の実現に向けた大きな一歩である。

また、2019年4月1日施行の改正労働基準法で大企業のみに適用された時間外労働の上限規制が、2020年4月1日から中小企業にも適用された。派遣労働者が、派遣先企業の大小を問わず、安心して働ける待遇が整いつつあると言えよう。

労働者派遣に影響のある法改正の概要

同一企業・団体で就業する通常の労働者と派遣労働者との間で、「差別的取扱い」や「不合理な待遇差」が禁止される。この「待遇」には、基本給や賞与、各種手当といった賃金だけでなく、福利厚生、教育訓練など、あらゆる待遇が該当する。すべての派遣元と派遣先は、2020年4月1日までに、以下のポイントを踏まえた就労環境の整備が必要となった。

労働基準法改正のポイント

・時間外労働時間の「限度基準」を「法律」に格上げし、違反には罰則を設ける。
・労使協定に「特別条項」がある場合でも上限を設ける。

労働者派遣法改正のポイント

・派遣労働者と通常の労働者との不合理な待遇差が禁止される。
・派遣元から派遣労働者に対しての待遇に関する説明義務が強化される。
・裁判外紛争解決手続(行政ADR)の対象とする。

企業に必要な規定の整備等

 企業には、不合理な待遇差の実態の把握と解消が2020年4月1日までに求められた。雇用形態にかかわらない均等・均衡な待遇の確保に向けて、派遣元および派遣先に必要となる規定の整備等の対応は、以下のとおりである。

労使協定の締結(派遣元)

 派遣元は、通常の労働者と派遣労働者との均等・均衡な待遇を確保するために、派遣労働者の過半数で組織する労働組合又は派遣労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結する必要がある。派遣労働者の待遇決定にあたり、派遣元は「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」のいずれかを選択しなければならず、「労使協定方式」を選択した場合、待遇は労使協定に基づいて決定されるからである。

なお「労使協定方式」は、通常の労働者と同等の「職務内容」と「職務内容・配置の変更の範囲」を派遣労働者に求める場合に選択するものである。一方、「派遣先均等・均衡方式」は、派遣労働者の「職務内容(業務の内容、責任の程度)」あるいは「職務内容・配置の変更の範囲」が通常の労働者と異なる場合に選択するものである。

就業規則の改訂(派遣元)

 派遣元が待遇決定方式を選択後、労働基準法第89条に則り、「適用する待遇決定方式」「適用した待遇決定方式の対象となる派遣労働者」という事項を就業規則に明記することが望ましい。また、改訂した就業規則は、派遣先で働いている派遣労働者一人ひとりに配布するなどして、周知する必要がある。

比較対象労働者の情報提供(派遣先) 

派遣先は、自社の労働者の中から「比較対象労働者」を選定し、その待遇情報を派遣元に提供しなければならない。派遣元が派遣労働者の待遇を検討するにあたり、契約条件の根拠となる比較対象労働者の待遇情報が必要だからである。派遣先は、派遣元に比較対象労働者の待遇情報を提供しなければ、労働者派遣契約を締結できない。なお比較対象労働者の選定は、次の1から6の優先順位となっているため、派遣先はこれに基づいて自社内での選定基準を策定しておくことが望ましい。

1.「職務の内容」と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
2.「職務の内容」が同じ通常の労働者
3.「業務の内容」又は「責任の程度」が同じ通常の労働者
4.「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ通常の労働者
5.1から4に相当するパート・有期雇用労働者
6.派遣労働者と同一の職務に従事させるために新たに通常の労働者を雇い入れたと仮定した場合における当該労働者

派遣労働者への説明文書の作成(派遣元)

派遣元は、派遣労働者に「待遇」や「不合理な待遇差を解消するために講ずる措置」等を説明する際に提供する情報を整理し、文書にまとめておくなどの準備をしておくことが望ましい。改正労働者派遣法では、派遣労働者が通常の労働者との待遇差を感じ、その内容や理由などの説明を求めた場合、派遣元にはそれに応じる義務が生じるためである。

紛争時の対応方針の策定

今回の法改正により、「均衡待遇」と「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、労使間の紛争を裁判以外の方法で解決する手続き、いわゆる行政ADRの対象となる。派遣元は、今後増加が予想される個別労働紛争の速やかな解決に備えて、行政ADRの利用手続きの流れをまとめたガイドラインの作成や、ガイドラインに基づく社内運用体制の整備といった対応方針を策定しておくことが望まれる。

まとめ

 働き方改革により、派遣労働者の待遇改善に向けた取り組みが進められている。

労働基準法改正と労働者派遣法改正に伴い、同一企業・団体で就業する通常の労働者と派遣労働者との間で、「差別的取扱い」や「不合理な待遇差」が禁止され、すべての派遣元と派遣先は就労環境の整備が必要となった。

雇用形態にかかわらない均等・均衡な待遇の確保に向けて、派遣元および派遣先に必要となる規定の整備等の対応は、以下のとおりである。

・労使協定の締結(派遣元)
・就業規則の改訂(派遣元)
・比較対象労働者の情報提供(派遣先)
・派遣労働者への説明文書の作成(派遣元)
・紛争時の対応方針の策定

企業にとっても、生産年齢人口の減少に伴う人手不足を補うために、派遣労働者の活用は不可欠である。あらゆる雇用形態の労働者が安心して働けるよう、必要な規定の整備やガイドラインの作成等により、コンプライアンスを徹底していきたいところである。

参考リンク

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