健康診断の結果データ分析で従業員の健康改善を目指そう

2019.10.01 
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1980年代に米国の経営心理学者のロバート・ ローゼン氏によって
「健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる」
という”ヘルシーカンパニー”思想が 提唱された。

日本では、この概念に経営的視点を加え、企業として従業員の健康管理や生じる問題を経営的な視点で捉え、戦略的な改善に向けた行動を経営判断に取り入れる、健康経営が生まれた。

健康経営の取り組みが企業戦略の新たな柱として注目される中、 健康診断や医療機関受診時のレセプトなどの健康医療情報データ分析に基づいた保健事業・データヘルスの取り組みの重要性が増している。

従業員の健康改善はなぜ必要?

企業にとって「従業員」は大切な「資産」。
資産である従業員が健康であることこそが収益性の高い会社をつくるという考え方に基づいた健康経営により、病気や不調による生産性の低下や医療費の増加を抑えるだけでなく、その取り組み自体が企業のブランド価値を高め、収益性の向上へとつながるとされている。

国が推し進めている働き方改革や、企業のグローバルスタンダードのESG投資(環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資)においても「従業員の健康」という視点は、企業にとって非常に重要な経営課題となっている。

健康経営の背景

健康経営が注目を集め、推進されるのには「健康保険の赤字額は膨らむばかりで、企業財政を圧迫してきた」という背景も大きい。
会社が従業員の健康を管理し皆が病気にかからずに仕事ができれば、健康保険を使う回数も減り、保険の赤字が減少する。

企業が健康経営に取り組む狙いは、従業員の健康状況を可視化する「データヘルス計画」や民間業者の健康経営支援サービスを活用して健康増進を図り、生産性や企業イメージの向上、さらには医療費の抑制につなげることである。

健康経営への機運が急に高まってきたのは、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略で『国民の健康寿命の廷伸』がテーマとして取り上げられた頃からである。

また、ICT(情報通信技術)の発達も、健康経営を後押ししている。
レセプト(診療報酬明細書)や健康診断のデータに加え、バイタルデータなどを取得できるウエアラブル端末のデータを活用し、より充実した健康管理を簡単に行えるようになった。

「データヘルス計画」とは?
日本再興戦略では「データヘルス計画」の作成・公表等を掲げている。

「データヘルス計画」とは「健康保険組合などが保有するレセプトや特定健診・特定保健指導などの情報を活用し、加入者の健康づくりや疾病予防、重症化予防につなげるもの」(厚生労働省)と定義されている。

病気の状態が分かるレセプトと、健康状態が分かる特定健診・保健指導の情報を合わせることで、保険者(集団)の健康状況を"見える化"する。
そのうえで、データに基づいて課題を見つけ、対策を実施して改善するといったように、数年かけてPDCAサイクルを回していく取り組みが求められている

重要度を増しているデータヘルス

健康経営の取り組みが企業戦略の新たな柱として注目される中、 データヘルス計画に基づく保健事業の取り組みの重要性が増している。

データ分析に基づいた保健事業(データヘルス)の展開が、国家戦略のひとつとして明確に位置づけられた現在、社員の健診結果やレセプト(診療報酬明細)データをどのように分析し、どのような方法で社員の健康状態の改善という成果に結びつけていくかは、健康保険組合にとっての大きな課題である。

※「データヘルス」とは、特定検診やレセプト(診療報酬明細書)の電子化に伴い、それらの健康医療情報データを医療保険者が活用し、分析することで、加入者の健康状態に即し、より効果的で効率的に行う保健事業のこと

健康経営に着手するための第一歩

多くの企業では、「健康情報の見える化・統一化」が実現されていないことも多く、健康経営に着手するうえでの壁となっている。
健康経営をはじめる時の課題でよく耳にするのは、以下のような声である。

「健康経営に取り組みたいが、どのように始めていいのかわからない」
「健康診断結果や面談記録等の情報が一元管理されておらず、健康管理を推進する環境が整備されていない」
など、健診データや他の事務作業の煩雑さも課題となっている。

多くの健診/健康管理担当者は、法令義務である「健康診断の予約~実施、事後処理」までの膨大な事務作業を抱えている。
事務業務だけで1年のほとんどの仕事を費やし、他の健康経営施策まで手が回らない、人員不足、という状況も多い。

データヘルス事業の要として、 ICTをフルに利用した各種分析から具体的な保健事業推進を支援するシステムもある。
医療費/疾病など多角的な分析により加入者の健康状況を把握し、事業所レポートとして「見える化」する機能を持つシステムを有する業者もある。

健康経営の第一歩である健康情報の「見える化」実現のため、健診システム導入も選択肢に入れておくとよいであろう。

人事データを活用するリテラシー向上の必要性

現在、健康保険組合が所有している社員の健康データを企業側が活用しづらいというハードルがある中、企業と健保が協力・連携し合うコラボヘルスに取り組んでいる企業も増えてきている。
コラボヘルスに取り組むにあたり人事はデータを活用するリテラシーをさらに向上させる必要がある。

人事が持つ従業員の健康診断の結果は、経年的に会社全体の健康状態の傾向を見渡せるデータの宝庫だ。まずは、従業員の膨大な健康データを集計し、現在の状態を「可視化」することから始めよう。
ほとんどの場合において、測定できないものはマネジメントできない。

時間外労働時間と健康診断データ、また勤怠データや人事評価といった数値による人事データと健康診断データを合わせられれば、労務環境と健康状態の関係が一目瞭然となる。

また、「健康経営銘柄」の評価では、健康経営を意識しているとみなせるデータ分析の有無が選定の評価対象になっている。健診受診率はもちろん、メンタルヘルス対策や、生活習慣改善プログラムの実施などについても数値化し、定量評価することが求められている。

従業員の健康課題や状況を把握するためには、
・健康診断結果の確認
・ストレスチェック、健康に関するアンケート調査などの集計データの活用
が必要だ。

そして健康経営を実現するためには、従業員の健康増進をしながら、いかに個や組織のパフォーマンスを引き上げる施策を行えるか、その最適なバランスを見つけることが重要である。

その最適なバランスを見つけるためには、従業員の健康と勤怠やパフォーマンスに関するデータの中にヒントがあるのではないだろうか。

参考:
第1回「健康経営」で本当に何かが変わるのか?【後編】
健康経営は個と組織に何をもたらすのか――。第2回

まとめ

健康経営に企業が取り組むのは、従業員の健康状況を可視化する「データヘルス計画」や健康経営支援サービスを活用して健康増進を図り、生産性や企業イメージの向上、さらには医療費の抑制につなげるのが狙いである。

健康経営の第一歩は健康情報(健康診断結果、ストレスチェック結果等)の見える化から始め、数値から健康課題の把握に着手することである。

企業と健保が協力・連携し合うコラボヘルスに取り組んでいる企業も増えてきている。
健保が持つレセプト情報のデータやデータヘルス計画は、企業の健康施策への取り組みに十分活用できるはずのものである。
単一健保であれば、本社企業と同じビルに同居しているケースはよくある。まずは、人事と健保が同じテーブルで話をすることを始めることからが、コラボヘルスの第一歩となるかもしれない。

 

参考リンク

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