日本におけるHRテックの今後の可能性について徹底解説

2019.06.26 
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昨今、日本でも大きな注目を集めているHRテック(HR Tech)。
以前より、人事分野で活用されているシステムは、給与や労務管理などがあったが、テクノロジーの進化に伴い、大きく活用の幅を広げている。
今回は、HRテックの活用が日本企業でも普及している背景や、現場でどのような変化やメリットをもたらしているのかを、今後の動向も交えて紹介する。

HRテックが生まれた理由

「HRテック(HR Tech)」とはテクノロジーの活用によって人材育成や採用活動、人事評価などの人事領域の業務の改善を行うソリューション群を指す言葉で、HR(Human Resources)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語である。

同様に、最近は、金融とテクノロジーを掛け合わせたFinTech(フィンテック)、教育とテクノロジーを組み合わせたEdTech(エドテック)などに代表されるように「○○テック」と称したサービスの開発が盛んにおこなわれており、急速な勢いで発展を遂げている。
従来からの業務とテクノロジーの掛け合わせによって、新たな価値をもたらそうとしているのだ。

その中で人事領域での「HRテック」では、AIやクラウドの活用や、ビッグデータの解析などによって、採用・育成・評価・労務などの領域での効果的な利用や、質の向上を目指すサービスが開発された。

タレントマネジメント領域におけるサービス開発はその一例だ。企業の抱える「有望人材」がどのようなスキルや能力を持っているのかを把握し、そのパフォーマンスを最大化するための人材配置や教育までも、IT技術で検討できるサービスが生まれてきている。

HRテックの背景、普及している理由

日本企業においても社会的な背景も伴い、HRテックの導入が急速に進んでいるが、その主な理由は、以下の3つだ。

①労働力人口の減少
まずは、日本における労働力人口の減少だ。2017年度の「将来推計人口」から将来の労働力を推計すると、今後は年々減り続け、2065年には6割程度にまで減少をすると言われている。将来を見越してその労働力を補うしくみが必要となってくるのだ。

②生産性の向上
今後の企業経営の重要なキーワードの1つが「生産性の向上」だ。企業の発展のためには、今の業務をより少ない人数で行える工夫をしていかねばならない。そのために労働環境の再構築、つまり『生産性の高い働き方』への転換が必須課題となる。日増しにIT技術を進化させているHRテックが、それを解決するために欠かせない存在となってきているのだ。

③働き方改革やダイバーシティ、優秀な人材確保
また、企業が競争優位に立つために、いかにして優秀な人材を獲得し続け、活躍してもらうかが、経営者にとって最重要課題となっている。
働き方改革による企業ブランド向上を実現し、国内だけではなく、世界中から優秀な人材を獲得していくことは欠かせない動きだ。
多様な雇用形態を支えるために新しい管理システムは必要で、優秀な人材を見極め、適切な配置をおこなっていくためにもデータの力はますます重要となる。
「人」の面からイノベーションを起こすための原動力としても、HRテックの活用が期待されている。

HRテックを利用するメリット

従来、年功序列の考えに基づいた「職能給制度」を採用してきた日本企業において人事業務は「人による感覚」や「慣行」で行われていた領域であった。正確な能力の把握や人材分析を行わなくても、昇進時期などがおおよそ決まっていたため、HRテックのように新たな技術の導入には遅れがちとなり、計画性に欠けていた部分もある。

しかし、企業の海外進出やM&A、労働力の多様化により、人材の正確な把握を行い、より最適な人材投資を行うことが必然となった。

急速な変化を遂げているHRテックだが、どのようなメリットがあるのだろうか。
特に大きなポイントは以下の通りだ。

①定型業務の時間削減・効率化
これまで紙で行っていた人事業務をデータ化できることで、その業務にかかっていた人件費コストが削減される。
また、テクノロジーの活用によって、従業員の離職予兆を見つけフォローしたり、定着率を高めたりすることで、結果的に採用費のコスト削減にもつなげることができる。

②従業員エンゲージメントへの活用
HRテック関連のサービスは多種多様だが、特に注目されているのが、人事データの一元管理・可視化・分析、定型業務の削減・オペレーションの効率化、従業員とのコミュニケーション円滑化による従業員満足度向上だ。
特に最近注目されているのが「エンゲージメント」と呼ばれる分野で、社員の会社に対する愛着心や、やる気を数値化し、それを改善することで離職防止や適切な人材配置につなげている。

③マネジメント力の向上
HRテックは、日々のマネジメント業務にも有効だ。タレントマネジメントに代表されるように人材の見極めにも活用できることはもちろん、組織内で意欲が落ちている社員をいちはやく特定し声をかけるしくみをつくるなど、従業員一人ひとりに対応したマネジメントとしても効果を発揮することができる。

HRテックの課題点

急速に導入が進むHRテックではあるが、一番の課題といえば参入企業が多く、多種多様な提供サービスが存在しているということではないだろうか。
これからもHRテックのサービスは拡大することが予測される。

最適なサービスを選ぶには、自社のビジネスモデルや事業環境、組織を俯瞰したうえで、競争優位を維持するための人材戦略を考え続けることが必須となる。

また、せっかくの導入後、HRテックを活用しきれないことも、多くの企業で抱えている悩みだ。人事戦略の中で、HRテックをどう位置づけるか、誰が運用するかなどをしっかりと考えてから導入を行う必要がある。

「事業成長のために、どのような企業文化を作るのか?」 「人事業務の中でアウトソーシングや自動化すべき部分はどこか?」 「逆に内部でやり続けるべき事は何か?」
各企業の人事担当は、自社における課題と未来の姿をしっかと検討した上で、必要なサービスを見極める「眼」が必要となるのだ。

今後の動向

今後、HRテックの進化は、企業の組織や採用におけるあり方を大きく変えていくと考えられる。

HRテックの広がりは、人事部門だけのツールではなく、従業員一人ひとりが活用するツールとなり、企業経営にも欠かせない取り組みとなっていくだろう。

テクノロジーによる業務の効率化の先には、企業が求める人材の戦略的な採用活動に加えて、人にしかできない役割(たとえば、従業員との対話や共感、関係性の改善など)や、イノベーションを創造するために必要なことに注力する時代になると予測されている。

これからは、人事担当は戦略的に経営視点を持ち、より効果的に効率的に企業経営を推進していくことがさらに重要な役割となるはずだ。

HRテックをうまく取り入れながら、経営に寄与できる人事へと変革が求められているのだ。

参考リンク

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