ヘルスリテラシーとは?健康経営を実現するヘルスリテラシー向上の取り組み

2019.02.07 
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ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する情報を自ら調べて理解し、次に取る行動を判断するための能力を意味する。
この言葉が注目されている背景に、健康経営という考えがある。

この記事では、健康管理能力である「ヘルスリテラシー」について、その高め方や効果について説明する。是非参考にしていただき、健康経営に向けたヘルスリテラシーの向上に取り組んでみて欲しい。

ヘルスリテラシーと健康経営

近年企業間の競争が激化する中で、各社は社内のリソースを活用した生産性の向上に、より力を入れるようになった。

中でも、貴重なリソースである『人』の健康を守り、パフォーマンスを上げようとする『健康経営』というキーワードは、どの企業でも注目されている。

しかし肝心の従業員は、そもそも自身の健康状態を充分に把握していないことが多い。そのため、心身に不調が出て業務へ支障をきたしてしまうことへのリスク管理もできていないケースがある。

この状況を改善して健康経営を実現していくために、企業の人事労務担当者にできる対策は何だろうか。

ヘルスリテラシーとは?

ヘルスリテラシーとは、自身の健康管理能力である。
例えば心身に気になる不調があった場合、現代では多くの人はスマートフォンを開き、インターネットでその症状に関連する情報について調べるだろう。
しかし今やネット上の情報量は膨大で、簡単に情報が入手できる反面、中には信頼できるのか不確かな情報も多い。

ヘルスリテラシーが高い人であれば、情報を取捨選択して本当に自分に必要な情報だけを見極め、病院の受診を意思決定し、健康状態の悪化を防ぐことができる。

正しい情報を収集・理解して知識として蓄積し、次に取る行動を適切に決めるためには、ヘルスリテラシーを向上させることが必要だ。

厚生労働省が発表した『保健医療2035提言書』では、健康なライフスタイルの実現のためヘルスリテラシーを身に着けるための取り組みを推進すると明記されている。
経済産業省が選定する、健康経営銘柄の選定要件においてもヘルスリテラシーの向上は認定要件となっている。

このように、ヘルスリテラシーの向上は国としても重要な課題として捉えられている。

日本における健康管理の問題

現在の日本の健康管理について目を向けてみると、不調の症状が明確に表れない限り、日頃から自身の健康に注意し、日常的に健康への対策をしている人ばかりではない。

多くの人が、突然意識を失った、心臓に強い痛みを感じた、といった深刻な症状に陥ってから、やっと病院を受診する。その時には残念ながら、自身の病気は取り返しのつかないことになっていることもあるだろう。

したがって、健康を管理する能力であるヘルスリテラシーという言葉の認知度も、それほど高くないのが現状である。

よって企業にも、ヘルスリテラシーが充分でない従業員が多く存在することが予想される。ヘルスリテラシーの低い従業員ばかりの組織では、企業がどんな取り組みを行っても健康経営を実現するのは難しいだろう。

ヘルスリテラシーを高める5段階の対策

健康経営のためには、まず従業員のヘルスリテラシー向上が不可欠だということが分かった。

それでは、企業は具体的にどんな対策をするべきなのだろうか。

ヘルスリテラシーはいきなり高められるものではない。ここでは企業の産業医を務めた経験があり、ヘルスリテラシー向上の啓蒙活動を行っている順天堂大学の准教授・福田洋氏の提唱する方法について紹介する。
その方法によると、ヘルスリテラシーを高めていくには、下記の5つの段階があると言う。

①従業員のリテラシーレベルを知る

まずはヘルスリテラシーを高めていくために、現状のリテラシーレベルを知る必要がある。
そのためには、「伝達的・批判的ヘルスリテラシー尺度」を利用することが有効だ。これは、帝京大学の石川ひろの教授によって開発され、以下の5つの質問に「全く思わない」から「強く思う」の5段階で回答してもらい、5項目を平均して尺度得点を算出し評価するという方法だ。

(1) インターネットやテレビ、本、新聞といった様々なメディアから情報を集められる。
(2) 膨大な情報の中から、自分に必要な情報を選ぶことができる。
(3) 情報の内容を自分で理解し、他人にも伝えることができる。
(4) 情報の信頼性を判断できる。
(5) 集めた情報を元に、健康改善のための計画や行動を決定できる。

この結果があれば、ヘルスリテラシーの不十分な従業員を抽出し、適切な教育・研修を行うとことが可能になる。
また集団でのヘルスリテラシーも把握できるため、部署や職種、役職といったセグメントごとに必要な対策も検討できるようになるだろう。

②従業員のリテラシーレベルに合わせて、分かりやすい保健指導を行う

従業員のリテラシーレベルが分かったら、健康診断後の保健指導などの際には、相手が理解できるような説明を行う。例えば、より簡単な言葉で説明する、絵で説明する、内容を復唱させる、といった工夫ができる。

③集団に対しては、求めるヘルスリテラシーの基準を下げる

また集団に対して健康情報を提供する場合は、ヘルスリテラシーが高くなくても理解できるような説明を行う。
その業界特有の具体的な例え話を出すなど、どんな人でも自分ごとだと感じ、思わず興味を持って聞き入ってしまうような工夫が必要だ。

④ヘルスリテラシーを高める

ここでやっとヘルスリテラシーを高める段階になる。
まずは上記のプロセスで従業員のリテラシーレベルを知り、それに合わせた健康情報の提供を行うのだ。そうすることで、徐々に従業員のヘルスリテラシーは高まっていく。

⑤ヘルスリテラシーを広める

この段階になると、社内でも健康に興味のある従業員が増えているだろう。
そういった人は自主的にヘルスリテラシーを広めていくようになる。
また社内の健康イベントなどは、人事労務担当者が経営層や労働組合といったキーパーソンを巻き込むことでより盛り上がるだろう。また、ヘルスリテラシーの高い社員とのコミュニケーションをとることで、ヘルスリテラシーの広まるきっかけにもなる。

このようにヘルスリテラシーはまず現状のレベルを知り、それに合わせた情報提供により、徐々に高まっていく。
そしてヘルスリテラシーの高い個人が増えることで、コミュニティ全体にヘルスリテラシーが更に広まっていくのだ。

ヘルスリテラシーの向上で得られる効果

ヘルスリテラシーの向上は、従業員の健康を守りながら生産性を上げる健康経営の基礎となる。それだけでなく、従業員個人のヘルスリテラシーが高まると、社内全体にも連鎖的にヘルスリテラシーが広まっていく。

つまり、健康な企業という新たな「資産」を形成することができるのだ。

ヘルスリテラシーを向上させる取り組みの事例

ここである企業が行ったヘルスリテラシー向上のための取り組みを2つ紹介する。

1つ目は、健康に関するアンケートの実施だ。

例えば、健康的な食事の支援に関しては「食堂のメニューをヘルシーにして欲しい」という要望が多く上がった。
このように従業員が興味を持っていることから対策をしていけば、従業員は自主的に健康を意識した行動を取るようになる。
また従業員の要求を叶えようとすることで、企業の信用が高まることも期待できる。

これは全社員を対象にして行われ、産業医が健診結果の見方や、各健診項目の基準値や異常値が出た場合の対策について指導した。

産業医にとっては大変な対応とはなるが、そうすることで従業員の食事や運動といった生活習慣は改善されていった。
これらの方法で、従業員のヘルスリテラシーは徐々に高まっていったのだ。

しかしここで重要なのは、ヘルスリテラシーの向上には企業ごとに最適な方法があり、長い期間をかけて取り組まなくてはいけないということだ。

何か真新しいことをしなければいけないわけでは決してなく、自社で行っている産業保健に関する取り組みを、前述の5段階の対策に合わせて修正するだけでも効果はある。

また、リテラシーを広める段階を見据えて、経営層などのキーパーソンを巻き込む仕組みづくりも意識したい。

まとめ

健康や医療に関する情報を自ら調べて理解し、次に取る行動を判断するための能力であるヘルスリテラシー。

企業の貴重なリソースである従業員の健康を守って、更に生産性を上げていく健康経営実現のためには、ヘルスリテラシーの向上が不可欠だということが分かった。

そしてヘルスリテラシーが社内に広まることは、健康な企業という資産をも形成することにつながる。

参考リンク

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