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“ものづくり”から“ものこと&ひとづくり”へ

〜IT/IOTが要求する人材像を考える〜

東京理科大学大学院・イノベーション研究科 教授 田中芳夫氏

日本は「ものづくり」という素晴らしい技術によって世界で確固たる地位を確立しました。ところが、時代は流れ、ITやIOTなどの普及によって、新しい仕組みやビジネスモデルを創出することが可能になったいまでは、そのような発想をする「ことづくり」において日本は後れをとってしまったのです。今や、日本では「ものづくり人材」だけではなく、「ことづくり人材」あるいは「ものことづくり人材」の育成が急務となっています。しかし、そのために必要なのは、当然ながら「ひとづくり」です。IT/IOTが要求する人材像について、東京理科大学大学院・イノベーション研究科の田中芳夫教授が講演を行いました。

「ものづくり」から「ものことづくり」へ

まず、「ものこと」について、歴史を振り返りながら説明します。1945年に日本は太平洋戦争で敗れ復興への道を歩むのですが、1950年代にはコストが安く、大量生産を行うことができるまでになりました。そして、まだ品質的には問題があったものの、1960年代には自動車をアメリカに輸出するようにまでなりました。しかし、日本人は真面目に品質向上に取り組み、「もの」を追求することで成功を収めたのです。1970年代には鉄鋼、家電製品などの品質でアメリカを上回り、日本が「Japan as number one」と言われるようになり、アメリカの産業を潰してしまいました。この頃、アメリカはソビエトと冷戦状態にあり、ベトナム戦争にも参加しています。その影響があったことは否めません。それでも、現在の中国のGDPは6.8%と言われていますが、日本は高度経済成長期に10%の成長率が10年間続いていたのですから、世界を席巻したわけです。

しかし1990年後半ら『WINDOWS』が発売され、インターネットが普及。そして、2010年頃からはクラウドやIOTが出てきました。この頃から、どうも日本人は「ものづくり」だけを考えることはできますが、新しい仕組みやビジネスモデルを構築する「ことづくり」ができないと言われるようになりました。そこで、「ものづくり」だけではなく、「ことづくり」も同時にする「ものことづくり」という発想が生まれ、私たちは「ものこと双発という概念を作ったのです。現在の日本では工学部の学生が減少傾向にあります。工学部の機械系・電機系というのは、定員割れが多くなっていますし、大学院なども同じ状態です。そのような状況では、「ものづくり」も減少していきますから、GDPは伸びません。

では、何をすればいいのかということを、皆で考えなければいけない時期にきています。その一つの例として、ICTの変化に日本がついていくことができなかったということが挙げられます。イノベーションインデックスでは、日本は高い数値を保っていますが、ITインデックスは低い。日本のソフトウェアというのは常に後追いです。また、インターネットで世界が繋がるようになった時に、「日本的通信」や「日本的OS」、「日本的仕組み」など「日本的」というものが障害になっています。まして、クラウドコンピューティングともなると、「世界標準」がいかに大事になってくるか考えなければいけません。さらに、IOTやAIとなると、世界との協調が必要です。

新しいビジネスモデルを可能にするIOT

モノのインターネットと言われるIOTでは、今まで求められた人間の価値や技術者の可能性が変わってくると思います。例えば、最近台頭してきたUberというタクシー会社がありますが、今や世界最大のタクシー会社に成長しているのです。しかし、タクシー会社と言っても、タクシーを一台も所有していませんし、運転手も雇用していません。

さらに言うと、一般人でも自家用車を利用してタクシーの運転手となることができます。なぜ、このようなことができるのかと言えば、スマートフォンにデータを飛ばすことで、お客様の場所情報を与え、近くにいるタクシーに割り当てる仕組みとなっているからです。これにより、サンフランシスコのイエローキャブは倒産。シカゴでも同様の危機が伝えられています。日本の発想からすれば、タクシーを管理する会社は国土交通省になるのかと思いますが、Uberにおいては、実際にアメリカで運営しているのはソフトウェアの会社です。これでは、既存のタクシー会社は市場をうばわれてしまって、存続が危ぶまれるのも仕方ありません。しかし、これも一つのビジネスです。このように、Uberのような会社ができますと、自動車を3台所有している人がそれを他人に貸して運転手をさせることも可能です。そこにまた、ビジネスが生まれてきます。このように、興味深いことが起きているのが、今のIOTの世界です。

レポートはまだ続きます。気になる内容の続きはダウンロードしてお楽しみください。

提供:サムトータル・システムズ株式会社

鈴木 茂晴 氏

田中 芳夫氏
東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授

1973年東京理科大学工学部電気工学科卒業、同年、住友重機械工業(株)に入社,Online system設計などのシステム開発に従事、1980年に日本IBMの研究開発製造部門に入社。世界向けの製品・サービス・ソフトウエアの開発、マネージメント、および 副社長補佐。1998年にIBM Corporation R&D Asia Pacific Technical Operation担当。2001年研究開発部門 企画・事業開発担当理事。2005年 マイクロソフトCTO就任。2007年 (独)産業技術総合研究所参与、青山学院大学大学院ビジネス法務客員教授。  2009年東京理科大学大学院教授 、国際大学GLOCOM 上席客員研究員,日本工学アカデミー会員