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中小企業のパワーハラスメント対策

2014/01/28

平成26年1月15日、男性会社員が自殺したのは社長らのパワーハラスメント(以下、パワハラ)行為が原因だとして、妻らが損害賠償を求めた訴訟の判決があり、名古屋地裁はパワハラと自殺の因果関係を認め、会社と社長に約5,400万円の支払いを命じたと報じられた。

 昨年12月には、生命保険会社に勤務していた50代の女性が、うつ病になり退職を余儀なくされたのは上司のパワハラが原因として、会社と元上司に損害賠償を求めた訴訟について、大阪地裁で和解が成立。元上司が女性に謝罪し、会社が4,000万円の解決金を払うという報道があった。

 職場のパワハラは増えているのだろうか。
厚生労働省によると、精神障害で労災認定された人のうち、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」があったとする人が1割を越えている。また、都道府県労働局に寄せられた事業主と労働者の紛争に関する相談(個別労働紛争解決制度)でも、「いじめ・嫌がらせ」に関するものは増加傾向にあり、年間約5万件と、平成24年度には初めて「解雇」を抜いて最多となった。

 パワハラの放置が企業にもたらす影響は少なくない。パワハラを受けた本人はもちろん、見聞きした周囲の従業員にとっても仕事への意欲の低下や生産性の低下などの悪影響が考えられ、会社への不信感から離職率が増加する可能性もある。
 クライアントにこういう話をすると、一番言われるのが、「業務上の正当な指導との線引きが難しい」ということである。さらに、「最近は権利主張が強すぎる者が多いのではないか」「何でもパワハラだ!と言われ、管理職が弱腰になる」という心配も聞く。確かに、弱腰になって適切な指導までできなくなってしまうのは問題である。では、どんな行為がパワハラにあたるのか。

 そもそも、職場のパワハラは、厚生労働省で「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義され、以下の6つに類型化されている。
(1)暴行・傷害(身体的な攻撃)
(2)脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
(3)隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
(4)業務上明かに不要なことや遂行上不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
(5)業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
(6)私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 業務の適正な範囲、つまり業務上必要な注意や指導であれば、本人は不服であってもパワハラには当たらないとされている。問題になるのは、「業務の適正な範囲」にあたるかどうかである。(1)と(3)は「業務の適正な範囲」であるはずがないのは明確である。線引きが難しい、管理職が弱腰になる、と懸念されているのは、(2)(4)(5)(6)の部分ではないだろうか。特に、自分は普通の口調で注意したつもりなのに「言い方がきつすぎる、パワハラだ!」と言われるのを恐れているように思える。

 実際には、どの程度の言動がパワハラとされているのか。
例えば、裁判では「存在が目障り」「給料泥棒」「お前なんかいてもいなくても同じ」「人間のクズ」など人格を傷つける言葉、「使い物にならない人はいらない」など雇用上の不安を感じさせる言葉、「ぶち殺そうか」など身体に害を加える趣旨の言葉、あるいは些細なミス等に対する執拗な非難などがあげられている。他の従業員の前で注意するという行為も、状況によっては、パワハラと判断される可能性がある。また、机や椅子などを蹴る・物を投げつける・机を強くたたく等の相手を怯えさせる行為も厳禁である。
 逆に言えば、感情的にならず、業務に関係ない人格や性格の非難はせず、脅しの言葉は封印して、相手の業務上の実際の行為に対して冷静に注意・指導をすれば、パワハラと言われる危険は少ないことになる。トップが方針を示して、就業規則等にも規定を設け、ガイドラインが作れればよりよいだろう。管理職に対する研修も、効果が大きい。臆して正しい指導ができず、かえって雰囲気が悪くなった、とならないよう、前向きに取り組みたいところである。


社会保険労務士法人日本人事 織田 純代

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