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厚生年金基金が危ない〜存続基準の改正で存亡の危機に

2014/01/06

昨年11月、約24億円の使途不明金がある厚生年金基金の元事務長が、業務上横領容疑で逮捕され、大きな話題になった。しかしながら、厚生年金基金の制度自体が継続困難となるような法改正が行われていることは、あまり話題にならないようだ。

 昨年6月、大きな法律改正が行われた。厚生年金基金に対して「新しい財務上の存続基準」を適用するという内容の法律の改正である。改正法は今年4月1日の施行を予定。施行後は5年間の猶予期間が設けられ、その後は新しい基準を満たす基金のみが存続を認められることになる。万一、基準を満たさない場合には、厚生労働大臣が解散命令を発動できることまで定められている。

 厚生年金基金は、昭和41年10月にスタートした制度。本来であれば国が支払う「老後の厚生年金」を基金が代わりに支払う仕組みである。基金は単に「国の老後の厚生年金」を代わりに支払うだけではなく、「独自の上乗せ金」を付けて支払うルールのため、基金のある会社に勤めていたほうが老後の年金収入が多くなる。

 制度開始以降、多くの企業が「福利厚生の充実」「優秀な人材を確保」を狙って厚生年金基金の設立を手掛け、ピーク時には1888の基金が存在した。しかしながら、バブル崩壊後は市場での運用環境の悪化から運営が困難となり、すでに多くの基金が「国の年金支払いを代わりに行う」という厚生年金基金制度を辞めている。そのため、現在運営されている基金は、ピーク時の約3割にあたる550基金程度である。

 厚生年金基金の新しい存続基準では、「国の厚生年金の支払い原資の『1.5倍以上』の資産を保有していること」などが要求される。現在、運営されている約550の基金のうち、現在の財務状況で新しい基準を満たすことができる基金は、1割程度しか存在しない。極めて厳しい存続基準が適用されることになるため、基金運営を断念する「解散」の道を検討する関係者も少なくないという。

 ところが、厚生年金基金が解散をするのは簡単ではない。自主的に解散をする場合には、傘下の企業および社員が一定数以上、同意をしなければ解散の認可が下りないからである。傘下の企業、社員にとっては、基金のメリットを享受できなくなる解散は承服しがたいものである。

 もしも、解散に対する同意が必要数集まらず、基金運営を継続しなければならない場合、どのようなことが懸念されるのだろうか。

 厚生年金基金の保有する資産は、想定した運用成績を得られない場合、徐々に目減りをする。資産が減り続けた結果、万一、「国の厚生年金の支払い原資」を割り込んでしまった場合には、「割り込んだ金額」について傘下の企業で穴埋めをすることが義務づけられている。つまり、「国の厚生年金の支払い原資」が残っているうちに解散の認可を受けないと、企業は多額の資金負担を要求されるということである。

 今後、市場の運用環境が好転し、劇的かつ継続的に高い運用成績を残し続けることは、極めて考えにくい。そのため、基金制度を維持した場合に、保有資産が「国の厚生年金の支払い原資」を割り込んでしまうリスクは、非常に高いと言わざるを得ない。すでに、「国の厚生年金の支払い原資」を割り込んでいる基金が相当数存在する。

 厚生年金基金に関する今後の方向性を検討する場合、多くの基金の加盟企業および社員にとっては「痛みを伴わない方法」は残念ながら存在しない。そうであるならば、「より痛みが少ない方法」を極力早く選択するのが賢明といえる。基金解散の意思決定を遅らせれば遅らせるほど、基金の保有資産が「国の厚生年金の支払い原資」を毀損するリスクが高くなるからである。

 解散を先延ばしにして国の資産を毀損してしまい、穴埋めのための資金負担を求められた場合には、企業が被る経済的負担は計り知れない。最悪の場合、企業自体が存続の危機に陥り、社員の雇用を維持できないことにもなりかねない。そのような憂き目にあった企業は、現実に存在する。残された時間はそれほど多くはない。


コンサルティングハウス プライオ 代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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