生産力向上に劇的な革新を起こす「RPA」の可能性〜経営のあり方を変える研究・実践の最新情報「RPA SUMMIT 2017」イベントレポート〜(後編)

 労働人口減少で深刻な人手不足が叫ばれる今、業務効率化・生産性向上に劇的な革新をもたらすとして世界的なブームを巻き起こしているのがRPA(Robotic Process Automation/ロボティック・プロセス・オートメーション)だ。デジタルレイバー(仮想知的労働者)と表現され、従来の「ロボット=コスト削減」の枠を大きく超える戦略的なツールである。RPAの普及啓蒙活動を行なう一般社団法人RPA協会によると、昨年以降、国内でも導入検討企業数の増加や先行事例の活用レベルの向上が著しいという。

 このような背景から、同協会は2017年7月27日にRPA・エンタープライズAI分野の有識者・ビジネスリーダーが集う「RPA SUMMIT 2017」を東京・虎ノ門ヒルズで開催。RPA活用の可能性や先行事例のケーススタディ等、最新情報が紹介された。

写真提供:一般社団法人RPA協会


■「RPA・HRテクノロジーの活用による働き方・経営の改革」/慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授 岩本隆氏

 岩本氏はAIやビッグデータの活用等で人事関連業務に革命をもたらす「HRテクノロジー」のエキスパート。RPAは人事領域との親和性が高く、HRテクノロジーに欠かせない技術だ。岩本氏はテクノロジーの活用による働き方のパラダイムシフトの可能性や人材採用における活用例、さらにこの先経営者に求められる能力について紹介した。

近年のHRテクノロジー市場の隆盛

 岩本氏によると、世界のHRテクノロジー市場は2010年代前半まではオラクル・IBM等の大企業がM&Aにより参入。その後はスタートアップ企業が増加し、ベンチャーキャピタル等から継続的に数百億円規模の巨額の投資が行なわれている。

 なかでもタレントマネジメントに財務会計を足し合わせたHCM(ヒューマン・キャピタル・マネジメント)のクラウドアプリケーションベンダー市場は毎年成長しており、2018年には154億ドル(約1兆7000億円)まで膨らむ予測だという。国内でもここ2年ほどの間にHRサービスに100社超が参入し勢いを見せてみるが、日本の市場はまだまだポテンシャルを秘めている。

 「人事の領域は非常に幅が広く、例えば採用活動に動画を活用する等、特定の領域・機能に特化したユニークなスタートアップ企業が登場しています。大手がカバーしきれていない領域がたくさん残っているのです」

テクノロジーが「働き方改革 第2章」にもたらすパラダイムシフト

 長時間労働等が主なテーマだった「働き方改革」は、第四次産業革命によって第2章を迎えている。取り組むべき主な課題は次の3点だ。

(1)生産性の向上:単なる効率化だけでなく、人とテクノロジーの融合が重要
(2)柔軟かつ多様な働き方の実現:テレワーク、クラウドソーシング等の活用
(3)人づくり改革:全ての人材が学び、新しい産業に対応するスキルを習得

 岩本氏はこれらのテーマに対し、HRテクノロジーの活用によるパラダイムシフトが期待できるという。具体的な道筋は以下の4つだ。

【ウェアラブルやアプリで労務管理】
自己申告・一律管理が基本 → マネージャー等がタブレットを活用し、個人に応じた労務管理
【人事管理/人材運用の最適化】
戦略なき配属・不合理な処遇 → 人事データをクラウド管理、AI等が最適な配属・運用を提示
【個々の特性に応じた能力開発】
全員一律・集合研修 → 個々の育成プログラムを自動生成、社員のノウハウ(例:効果的なセールストーク等)を撮影した動画を社内SNSで共有
【労働市場の効果的なマッチング】
縁と勘次第のマッチング → AIがスキル・能力分析の精度を高め、効果的にマッチング

テクノロジー活用が経営の肝となる

 現在、岩本氏はHRテクノロジーやRPA等を活用した新しいサービス「TAS(タレント・アクイジション・システム)」に取り組んでいる。新卒採用活動は人事部だけでは人手が足りずアウトソーシングで対応する企業も多いが、TASは採用プロセスに様々なテクノロジーを取り入れて自動化するというものだ。

【採用のプロセスの自動化】
・人物要件定義を明確化…AI
・アドテク活用で認知度アップ…ビッグデータ、アドテク(スマホユーザーの行動を解析し最適な広告)
・動機形成型採用サイト制作…CMS
・カルチャーフィット診断…AI
・進捗の可視化・効率化…RPA(人手でエクセル入力していた作業を効率化)
・確実に入社につなげる仕組み…AI(カルチャーフィットして活躍できる人材の特定)

 これらが全て自動化されると、人事担当者は学生の説得に専念できる。人材獲得競争が熾烈な今、テクノロジーの活用は企業経営にとって大きなアドバンテージとなるのだ。

 「テクノロジーを活用できる人材とは、なにもエンジニアのことだけではありません。テクノロジーを活用して新たな付加価値を作り出せる人、テクノロジーが描く未来を想像してビジネスを考えられる人材を増やしていく必要があります」

 岩本氏は次のように締め括った。

 「経営における人材マネジメントは益々重要になっており、経営と人事の距離が近づいています。経営変革のためには、いかにHRテクノロジーやRPA等を使いこなせるかが経営の肝となります。これからの時代のリーダーには<デジタルリーダーシップ>が必須の能力となるのです」

 国内のRPA普及においては、導入後のデジタルレイバーの運用の定着化やRPAエンジニアの圧倒的な不足等、様々な課題がある。しかし、労働人口減少やグローバル化による競争激化という大きな変化に直面している今、試練を乗り越えなければならない経営者にとってRPAは計り知れない可能性を秘めている。本イベントを一つの契機として、日本企業にフィットしたデジタルレイバーの活用がさらに広がっていくだろう。